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『狼と狐』(Der Wolf und der Fuchs KMH73)は『グリム童話』の中の話の1つである。1819年の第2版で『人ごろし城』に代わって追加。グリムの注にヘッセンの話とある。また、この童話は典型的な三反復の物語である。
あらすじ
[編集]狐より強かった狼は狐を家来にしていた。しかし、狐は狼と手を切りたくて仕方がなかった。
ある日、狼は「赤狐、なにか食べるものを持ってこい。さもないとお前を食べるぞ。」と言った。
狐は「近くの農家に子羊が2匹いるから、それを1匹頂きましょう。」と言った。
狐は子羊を1匹盗みだして狼に渡した。狼はその子羊を食べましたが、それだけでは足りず、もう1匹の子羊を食べようとしましたが失敗して、お百姓に容赦なく殴られた。
狼は失敗して殴られたことを狐に文句言った。それに対して狐は、「どうしてあんたは、そう意地が汚いのです」と答えた。
あくる日、狼はまた「赤狐、なにか食べるものを持ってこい。さもないとお前を食べるぞ」と言った。
狐は「私が知っている農家のおかみさんがパンケーキを今晩焼きます。それを頂きましょう」と言った。
狐は家に忍び込んでパンケーキを6枚持ってきて狼にあげた。しかし、狼はそれだけでは足りずに残りのパンケーキを食べるために忍び込みましたが失敗して、狼は力の限り殴られた。
狼は失敗して殴られたことを狐に文句言った。それに対して狐は、「どうしてあんたは、そう意地が汚いのです」と言った。
三日目に狼は「狐、なにか食べるものを持ってこい。さもないとお前を食べるぞ」と言った。
狐は「私の知っている男が家畜を殺して、塩漬けにした肉が入った樽を地下室においています」と言った。
狼と狐は地下室に入り、塩漬けの肉を食べた。その間、狐は食べながらあたりを見渡し、入ってきた穴を通れるか試していました。狐がそんなことをしている間も狼は食べ続けた。
そうこうするうちに、お百姓が狐の飛び跳ねる音に気づき、地下室にやって来た。狐は一目散に穴から逃げ、狼もその穴から出ようとした。しかし、狼は食い過ぎで腹が膨らみ、穴を通り抜けることが出来ず、狼はお百姓に打ち殺された。
狐は狼が死んだことで意地汚い古なじみと手が切れたことを喜んだ。
典拠
[編集]グリムの注によると、この物語はヘッセンで収集された話であるとされている。同じような話がシュヴァイヒとバイエルンにも伝わっており、それらは、ミルクをたらふく飲んだ狼の腹が膨れすぎて穴を通れずにいるところを殴り殺される、あるいは殴られている姿を狐から笑いものにされるという結末になっている。ハクストハウゼン家が伝えたパーダーボルン地方の伝承の中には、狐が狼のために梨の木を揺さぶって実を取ろうとしたところ、その音を聞きつけた人々がやってきて狼を殴る、また、狼が尻尾を使って魚を釣ろうとしていたところ、水面が凍って尻尾が抜けなくなる、そして、山の上からパンケーキを見つけた狼が池に転がり落ちるというエピソードがある。グリム兄弟はヨーゼフ・ハルトリヒの昔話集(1856)に第3話にあるトランシルバニア・ザクセン地方の類似の話も取り込んでいる。また、ホラティウスの書簡集第一巻にもこの寓話と同型の話がある。
ヤーコブ・グリムは狼と狐によるこの話を自身の『ラインハルト狐』(1834)でも扱っている。ハンス-ヨルグ・ウーターによれば中世の物語では狐と狼が一緒に獲物を探すことが多い。(イソップの場合はイタチと狐の組み合わせとなる。)グリム童話の場合、愚かな狼をだますずる賢い狐の姿が共感を込めて描かれており、その点では反モラル的な物語となっている。他にも、『犬と雀』、『三人のしあわせもの』、『狐と猫』、『狐とがちょう』、『蛇の話』、『狐と馬』、『ふくろう』、『月』などが、『狼と狐』と同様の、寓話あるいは笑話である。
TVアニメ
[編集]新グリム名作劇場(1988~1989年放送)の8番目の作品である。