利用者:I.hidekazu/半順序集合
半順序集合(はんじゅんじょしゅうごう、英: partially ordered set : poset)とは、順序関係を持つ集合を言う。
定義
[編集]半順序集合(partially ordered set : poset)
[編集]集合 P 上の関係を ≦ とする。a, b, c ∈ P に対して ≦ が以下
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を満たすとき ≦ を半順序関係(partially ordered relation)と呼ぶ。さらに、半順序関係 ≦ を持つ集合 <P ; ≦> を半順序集合と呼ぶ。
半順序集合は任意の2元について比較可能(comparable)であるとは限らない。任意の2元について比較可能な半順序集合は鎖(chain)と呼ばれる。
鎖(chain)
[編集]半順序集合 <C ; ≦> が
- 線型律(linearity)
- 全ての a, b ∈ C に対して a ≦ b または b ≦ a
を満たすとき鎖(chain)または全順序集合(totally ordered set)、線型順序集合(linear ordered set)と呼ぶ。
ω鎖(ω-chain)
[編集]非負整数 0 ≦ 1 ≦ 2 ≦ ... は鎖を成す。この鎖を ω = <{ 0, 1 ,2, ... } ; ≦> で表しω鎖(ω-chain)と呼ぶ。
単調写像(monotone mapping)
[編集]半順序集合を <P ; ≦>、<Q ; ≦> とする。写像 f : P → Q が順序を保存するとき、すなわち a, b ∈ P について
- a ≦ b のとき、f(a) ≦ f(b)
を満たすとき、f を単調写像(monotone mapping)、同調写像(isotone mapping)または順序保存写像(order preserving map)と呼ぶ。
半順序集合に付与する性質
[編集]有界性(bounded)
[編集]半順序集合を <P ; ≦> とする。1 ∈ P が P の最大元(さいだいげん、greatest element)であるとは、全ての a ∈ P について、a ≦ 1 を満たすものを言う。同様に、0 ∈ P が P の最小元(さいしょうげん、least element)であるとは、全ての a ∈ P について、0 ≦ a を満たすものを言う[1]。
最大元 1 と最小元 0 を持つ半順序集合 <P ; ≦, 1, 0> を有界半順序集合(bounded poset)と呼ぶ。
上界(upper bound)と下界(lower bound)
[編集]P の部分集合を X とする。このとき、元 a ∈ P が X ⊆ P の上界(じょうかい、upper bound)であるとは、全ての x ∈ X について、x ≦ a を満たすものを言う。 同様に、元 b ∈ P が X ⊆ P の下界(かかい、lower bound)であるとは、全ての x ∈ X について、b ≦ x を満たすものを言う。
- 最小上界(least upper bound:l.u.b.)と最大下界(greatest lower bound:g.l.b.)
X の全ての上界 a ∈ P 及び全ての x ∈ X に対して、x ≦ l.u.b.(X) ≦ a を満たす X の上界 l.u.b.(X) ∈ P を X の最小上界(least upper bound : l.u.b.)と呼ぶ。同様に、X の全ての下界 b ∈ P 及び全ての x ∈ X に対して、b ≦ g.l.b.(X) ≦ x を満たす X の下界 g.l.b.(X) ∈ P を X の最大下界(greatest lower bound : g.l.b.)と呼ぶ。
文字通り、P の部分集合 X の最小上界は X の上界の中で最小のもので、順序関係を一意的に分解する。最大下界も同様である。
極大元(maximal element)と極小元(minimal element)
[編集]P の部分集合を X とする。このとき、元 s ∈ X が X ⊆ P の極大元(maximal element)であるとは、s ≦ p を満たす p ∈ P が存在しないものを言う。同様に、元 t ∈ X が X ⊆ P の極小元(minimal element)であるとは、p ≦ t を満たす p ∈ P が存在しないものを言う。
s が最大元であるならば s は極大元であり、同様に t が最小元であるならば t は極小元であるが、一般に逆は成り立たない。
完備性(complete)
[編集]有向完備半順序集合(directly complete poset : dcpo)
[編集]ω完備半順序集合(ω-complete poset : ω-cpo)
[編集]脚注
[編集]- ^ 最大元 1 、最小元 0 の代わりに頂(top)⊤、底(bottom)⊥ で表しても良い。さらに、束(ブール束)を成すならば、真(true)T、偽(false)F を用いても良い。