(en:Lagrange inversion theorem oldid=718587970)
解析学においてラグランジュの反転定理(ラグランジュのはんてんていり、英: Lagrange inversion theorem)またはラグランジュ=ビュールマンの公式(ラグランジュ=ビュールマンのこうしき、英: Lagrange–Bürmann formula)とは、解析関数に対してその逆関数のテイラー展開を与えるものである。
z が w の関数
として定義されているとし、f は点 a で解析的かつ f'(a) ≠ 0 であるとする。このときこの式は、g が解析的となる点 f(a) の近傍において逆にするまたは w について解く
ことができ、これを級数の反転などと呼ぶ。
g の級数展開は次のように与えられる。[1]
この公式は形式的冪級数においても成り立ち、一般化には幾つかの方法が存在する。
この定理の証明はラグランジュに、一般化はハンス・ハインリヒ・ビュールマン(英語版)によっていずれも18世紀後半に与えられた。複素解析と経路積分を用いて簡単に導く方法が存在する。反転定理の複素冪級数版は明らかに多項式に関する知識の結果であるから、解析関数の理論を適用することができる。ただしこの証明においては、解析関数の理論はあくまで形式的にのみ登場する。この証明において要求されるのは形式的剰余の幾つかの性質のみである。また、より直接的な形式的証明も可能である。
x に関する p 次代数方程式
は関数 f(x) = x − xp に対するラグランジュの反転定理によって解くことができ、次の形式的冪級数解が従う。
収束判定により、この級数は |z| ≤ (p − 1) p−p / (p − 1) のとき収束する。またこの収束円は、f の局所的な逆が定義可能な領域内における最大の円板となっている。
組合せ数学において用いられるラグランジュの反転定理として、f(w) = w/φ(w) に対するものがある。ただし φ は解析関数であり、φ(0) ≠ 0 を満たす(これにより f(0) = 0 となる)。ラグランジュの反転定理より次式を得る。
これは、次のように書き換えられる。
ここで [wr] は、w を変数とする関数のテイラー展開における wr の係数を取り出す作用素である。
この式には次のラグランジュ=ビュールマンの公式として知られる有用な一般化が存在する。
ここで H は任意の解析関数(H(w) = wk など)である。
しかし導関数 H′(w) が常に単純であるとは限らない。その場合は次のように H′(w) を 1 − φ′(w)/φ(w)H(w) へと置き換えると良い。
この式では H′(w) の代わりに φ′(w) が登場している。
ランベルトのW関数とは、次の方程式によって陰的に定義される関数 W(z) である。
ラグランジュの反転定理を用いて、この W(z) の z = 0 におけるテイラー展開を求めることができる。f(w) = wew および a = b = 0 とおくと、
より、次のようになる。
この級数の収束半径は e−1 である。(W0 は W の主枝)
大きな z (任意の z ではない)に対して収束する級数は、級数の反転によって導くことができる。関数を f(z) = W(ez) − 1 とおくと、これは次の式を満たす。
ここで z + ln(1 + z) が冪級数展開することができ反転できることを用いると、f(z+1) = W(ez+1) − 1 に対する次の級数が得られる。
この式の z を ln x − 1 で置き換えることで W(x) を求めることができる。例として、z を −1 で置き換えるとW(1) = 0.567143 が得られる。
ラベル無し二分木の集合 を考える。 の元は、大きさゼロの葉ノードか、二つの部分木からなる根ノードのいずれかである。n 個のノードからなる二分木の総数を Bn と表す。
ここで、根ノードを取り除くと二分木はより小さな二つの木へと分解されることに注意すると、母関数 B(z) = ∞∑n=0Bn zn についての関数方程式が得られる。
この式に C(z) = B(z) − 1 を代入すると
となる。ここで φ(w) = (w + 1)2 とおいてラグランジュの反転定理を適用すると次式を得る。
以上から Bn はカタラン数であることが分かる。
ラプラス型積分の漸近近似を与えるラプラス=エルデリの定理において、関数の反転が重要なステップとして用いられる。
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