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メモリスタ (memristor [ˈmɛmrɪstər]) とは、仮説上の非線形な受動二端子素子で、電荷と鎖交磁束を関係づけるものである。memory(メモリ)と resistor(抵抗)の混成語。基本的な受動回路素子としては古くから電気抵抗、キャパシタ、インダクタの3種が知られてきたが、メモリスタは第4の基本素子に位置づけられる。回路理論の研究者レオン・チュアによって1971年に案出され、同時に命名された[1]。その特性を表す数学的関係式によると、仮説上のメモリスタは抵抗が一定ではなく、それまでに流れた電流の履歴による。すなわち、過去にどれだけの電荷がどちら向きに流れたかによって現在の抵抗が決まるのである。これにより履歴を記憶する性質、いわゆる不揮発性を持つことになる[2]。電力の供給が切られると、メモリスタの抵抗は電力供給が再開されるまでそのままの値を保ちつづける[3][4]。
2008年、HP研究所の研究チームが二酸化チタン薄膜の分析を通じてチュアが提唱したメモリスタが実現したと発表した。これにより、抵抗変化型メモリ素子 (ReRAM) とメモリスタが結びつけられた。この研究は科学雑誌『ネイチャー』に掲載された[3][5]。レオン・チュアはこの主張を受けて、抵抗スイッチ効果に基く不揮発性の二端子メモリ素子すべてを含むようにメモリスタの定義を拡張できると論じた[2]。さらに、メモリスタは知られている限り最古の回路素子であり、メモリスタ効果は抵抗・キャパシタ・インダクタより先に存在していたと主張した[6]。しかしながら、真正のメモリスタが物理的に存在できるかについては深刻な疑義が寄せられている[7][8][9][10][11]。また、抵抗スイッチ型メモリには受動性とはいえないナノバッテリー効果が伴うという、チュアの一般化に対する実験的な反証も存在する[12]。パーシンとディヴェントラは、そのような理想的ないし一般的なメモリスタが本当に存在するのか、あるいは純粋に数学的な概念に過ぎないのかを判断する単純なテストを提案した[13]。現在まで実際の抵抗スイッチ型素子でこのテストをパスしたものはない[13]。
メモリスタ素子はナノエレクトロニクスにおけるメモリとして、あるいは計算機の論理回路に、またニューロモルフィックないしニューロメモリスティブなコンピュータ・アーキテクチャへの応用が期待されている[14][15][16]。2013年、ヒューレット・パッカードの最高技術責任者マーティン・フィンクは2018年にはメモリスタの商業実用化が行われるだろうと述べた[17]。2012年3月には、HRL研究所とミシガン大学の研究者によるチームはCMOSチップ上にメモリスタ・アレイを作製し、動作させることに成功したと発表した[18]。
背景
[編集]チュアは1971年の論文において、よく知られた抵抗・キャパシタ・インダクタと並ぶ第4の基本素子が存在すると予測した。非線形抵抗は電圧と電流を関係づける素子であり、同様に非線形キャパシタは電圧と電荷を、非線形インダクタは鎖交磁束と電流を関係づける。これらの間に概念上の対称性が成り立つとすると、電荷と鎖交磁束を関係づける素子が欠けていた。そこでチュアは未知の素子をメモリスタと呼んだ。線形の(あるいは非線形の)抵抗と異なり、メモリスタでは電流と電圧の関係は動的であり、過去の電圧や電流を記憶するなどの性質を持つ。そのほかにもバーナード・ウィドロウのメミスタなど動的メモリ特性を有する抵抗を提案した科学者もいたが、数学的な一般性を確立しようとしたのがチュアだった。
メモリスタの抵抗は端子に加えられた入力の積分に依存する(入力の瞬時値に依存するバリスタとは異なる)[3]。それまでに流れた電流の量を「記憶」する性質からチュアによって「メモリスタ」と名付けられた。別の表現によれば、メモリスタとは受動二端子素子で電流の時間積分(すなわち電荷)と電圧の時間積分(磁束と関係づけられる量)との間に関数関係が存在するものをいう。その係数はメモリスタンス(memristance、メムリスタンスとも)M と呼ばれる。これは条件によって変化する場合の抵抗と似た量である。
このメモリスタの定義は、基本的な回路変数である電流と電圧、およびそれらの時間積分のみによる。その点では抵抗、コンデンサ、インダクタと変わらない。しかし、これらの素子が線形時不変な理論(LTIシステム理論)で扱えるのとは異なり、メモリスタで重要なものは記憶効果をともなう動的な機能を持ち、正味の電荷の関数として表すことができる。標準的なメモリスタというものは存在しない、その代わり、個々のデバイスは一つの関数を備えており、電圧の積分値と電流の積分値との関係を規定する。線形の時間不変なメモリスタ、すなわちMの値が一定のものは単なる普通の抵抗である.[1]。現実に製造されたメモリスタは純粋なメモリスタではなく、必ず同時に電気容量や抵抗を持つ。
Memristor definition and criticism
[編集]1971年に提唱された最初の定義によれば、メモリスタは電荷と鎖交磁束の間の関係を与える第4の基本回路素子であった。2011年にチュアはより一般的な定義として、抵抗スイッチ効果に基づく二端子の不揮発性メモリ素子すべてをメモリスタに含めると主張した[2]。HPのスタン・ウィリアムズはMRAM、相変化メモリ、ReRAMがいずれもメモリスタの応用だと主張した[21]。研究者の中には、血液[22]や皮膚[23][24]のような生体組織もメモリスタの定義に当てはまると主張する者もいる。Others argued that the memory device under development by HP Labs and other forms of ReRAM were not memristors, but rather part of a broader class of variable-resistance systems,[25] and that a broader definition of memristor is a scientifically unjustifiable land grab that favored HP's memristor patents.[26] [[Category:アメリカ合衆国の発明]] [[Category:新技術]] [[Category:電子部品]]
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