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利用者:Codfish2005/作業場5

ラバウルの自給対策

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1943年9月に絶対国防圏の設定により、ラバウルはその構想から外れ、後方に持久態勢が整うまで可能な限りその拠点を確保することが主任務となったまた、絶対国防圏完成の暁にはその外郭地は取り残され、本土からの補給も途絶えるものと現地でも思われていた。そのため、ラバウルに対する空襲の激化した1943年12月ごろから自給自足体制の確立に向け各種の作業が進められた。当時ラバウルにはガ島奪回作戦以来、集積された物資が大量に存在し、これを活用し今後の自給態勢に生かすこととした。

このころラバウルに集積されていた主な物資は以下の通りだった。

  • 食糧 各部隊6か月分保有
  • 軍需品 約2か月分
  • 石油 12,000キロ立方
  • 重油 1,450噸
  • その他、通信、交通、施設、被服、医療等関係品多数

地下施設の構築

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1943年11月ごろより開始された防空壕構築作業は翌年春には概成し、3月31日には南東方面艦隊司令部の地下移行完了、ほぼ陸海軍全ての居住施設の地下以降が完了した。居住施設の中には600人収容可能な炊事可能な大型防空壕もあり、温泉が湧出したため、内部に浴場も設置された。1944年11月には海軍はのべ70キロ、陸軍はのべ80キロの防空壕が完成し、終戦時にはこの倍の長さに延長されていた。また、居住施設と並行して地下陣地の構築も進め、これらは居住施設と地下道によってつながれた。また、地下道設置が困難な居住施設より遠方の陣地には地下にさらに居住施設を構築し、二層、三層構造の地下陣地を構築した[1]

医療対策

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ラバウル基地は比較的衛生状態も良く、医薬品もある程度確保されていたため1942年~1943年にかけてのマラリヤの罹患率は3%~6%程度であったが、1944年に入り、洞窟陣地構築のため過労になるものも多く1944年4月には罹患率が13%になった。また、その頃より補給状態の悪化によりマラリヤ剤の保有量が減少、患者が急増したため、現地で代用薬の研究が進められ、9月中旬から従来のマラリヤ剤の服用をやめ、シマソケイ乾燥樹皮の煎汁の服用が実施された。しかしそれだけでは完全に防ぐことはできず、1945年2月には平均36パーセントまで罹患率が上昇してしまっていたという[2]。1944年4月頃からは病院施設の地下移行作業も開始され、7月以降順次患者を地下施設に移し、1945年5月までに全長180メートル(病室は幅3メートル、高さ3メートル)、約400人収容可能な地下施設が2か所構築され、内部には手術室、レントゲン室も完備されていた[3]

兵器の製造

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ラバウルには様々な火砲があり、対空機銃や高角砲は1年間は使用できるほど弾薬も保有していたが、それでも防御には十分とは言えなかったので、様々な兵器が自作された。貯蔵量の多い航空燃料を転用し、海岸近くの防空壕に燃料の入ったドラム缶を貯蔵、そこから海中へ向けて鉄管を通し、海面上へ口を向けておき、そこからガソリンを流し込むものや内地から持ち込まれた火炎放射器を改良して配備された。駆逐艦や潜水艦の魚雷を転用し、海峡に面した岬や港の入口に洞窟式の砲台を設置しここに発射管を置いた。また、陸軍に七糎半の砲弾が大量にあったので、水道管や天幕を支える鉄の支柱がちょうど砲弾のサイズに合致したため、これを加工し簡易的な火砲[注 1]を作成した。また、1944年の半ば頃から、火薬が劣化し使用に耐えられないものが出てきたので、火山地帯から硫黄を採取、木炭を集めてこれを精製、硝石は弾薬に利用されている安瓦薬を精製し抽出、これにより火薬の製造に成功し、森林地帯に大規模な工場を建設、大量生産に着手していた 。

食糧の自給

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陸海軍合同で自活委員会が設置され、そこで計画が立てられ、1944年6月ころから作業に入った。主に主食(甘藷)、生鮮食料(野菜、豆類など)栽培を主とする農作業から、養鶏や養豚、製塩、漁労の諸作業まで発展、一人あたりの平均摂取カロリーは一日2200カロリーを維持することができ、不足していたのはタンパク質だけであった。孤立した状況の中でのこれらの自活努力と、重要戦機における単独偵察活動は中央でも高く評価されており、1945年7月31日には天皇からその労を讃えた聖旨が送られている。

脚注

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  1. ^ これは砲弾先込め式の一種の迫撃砲の様なものだった。

出典

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  1. ^ 艦隊司令部の移設された居住施設は長さ200メートルほどあり、およそ1000人の司令部要員が収容できた。『ラバウル戦線異状なし』草鹿任一, p104~p113
  2. ^ 『ラバウル戦線異状なし』草鹿任一, p204~p207
  3. ^ 『ラバウル戦線異状なし』草鹿任一, p109~p111