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五度圏(ごどけん、英語: circle of fifths)は、12の長調あるいは短調の主音を完全五度上昇あるいは下降する様に並べて閉じた環にしたものである (注1)。
五度圏は F♯ / G♭ や D♯ / E♭ といった異名同音関係を利用することで環を形成しており、これは一般に十二平均律を前提としている (注1)。純正な完全五度に基づくピタゴラス音律では、異名同音は異なるピッチを持つ音として区別されるため閉じた環を形成できない (注1)。例えば、E♭ を起点として完全五度を12回上方向に堆積すると異名同音関係にある D♯ が得られるが (E♭ - B♭ - F - C - G - D - A - E - B - F♯ - C♯ - G♯ - D♯)、この2音は十二平均律において同一のピッチを持つ。しかし、純正な完全五度(周波数比 3:2)に基づくピタゴラス音律による場合、この D♯ と E♭ は正確なユニゾンやオクターヴ関係にならない。すなわち、12の純正な完全五度の周波数比
と7つのオクターヴの周波数比
の間には
の差が生じ、この差の大きさをセント値で表すと約23.46セントである。また、この差をピタゴラスコンマと呼ぶ (注2)。一方、十二平均律の完全五度は純正音程よりも 1/12 ピタゴラスコンマだけ狭められているため、異名同音同士のピッチは一致し、一様な完全五度によって閉じた五度圏を形成することができる (注3)。
五度圏はある調から他の調への「遠隔度」を視覚化するのに用いられる (注1)。例えばト長調に対し五度圏上で隣接する5つの調(ホ短調、ニ長調、ロ短調、ハ長調、イ短調)は和声的に近い関係にある近親調である (注4)。一方、五度圏上で最も離れた嬰ハ長調とは和声的に遠い関係にあり、その音階上の三和音に共通するものが1つもない (注5)。
注1:William Drabkin, “Circle of fifths,” in The New Grove Dictionary of Music and Musicians, 2nd ed., ed. by Stanley Sadie (London: Macmillan, 2001), vol. 5, pp. 866-867. 注2:Margo Schulter, Pythagorean Tuning and Medieval Polyphony,(http://www.medieval.org/emfaq/harmony/pyth.html ), 1998. 注3:Mark Lindley, “Temperaments,” in The New Grove Dictionary of Music and Musicians, 2nd ed., ed. by Stanley Sadie (London: Macmillan, 2001), vol. 25, pp. 248-269. 注4:Ryan J. Thomson, A Folk Musicians Working Guide to Chords, Keys, Scales, and More, Captain Fiddle Publications, 1991, p. 52. 注5:“Circle of fifths,” in The New Oxford Companion to Music, ed. by Denis Arnold, Oxford University Press, 1983, vol. 1, p. 399.
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