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「犀」(さい、仏:Rhinocéros)は、1959年に執筆されたイヨネスコの不条理演劇。3幕。舞台はフランスのとある田舎町。その市民で酔っ払いのベランジェが劇の中心人物である。ある日、ベランジェが友人のジャンとカフェで話し合っていると、突然地響きを立てながら犀が町中を走り抜けてゆき、周囲は大混乱に陥る。その翌日、ベランジェの勤務先で犀のことが話題になるが、居合わせなかった人々は信じようとしない。しかしどうやら市民がひとりひとり犀に姿を変え始めていることがわかり、町はしだいに犀たちに乗っ取られていく。やがて友人ジャンも犀に変身し、ベランジェとともに部屋に立てこもっていた恋人ディジィも犀たちのもとに向かう。最後に残されたベランジェが、それでも人間のままでいる決意を口にするところで幕となる。
この戯曲は第一次大戦期のファシズムの勃興を寓意的に描いた作品である。犀はファシストであり、はじめは犀に見てみぬふりをしていた市民たちは次々と自分自身が犀になり変わってしまう。イヨネスコはルーマニアにいた当時、友人たちがひとりまたひとりと全体主義に走りはじめるのを目の当たりにしたことがあり、その経験をもとにこの戯曲が執筆された
日本では1960年、文学座アトリエにて初演が行われている。
参考文献
[編集]- ウージェーヌ・イヨネスコ 『授業・犀 ベスト・オブ・イヨネスコ』 諏訪正他訳、白水社、1993年
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