特定アジア
特定アジア | |
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特定アジア(とくていアジア、英語: Tokutei Asia〈specific-Asia〉[1])とは、21世紀初頭以降の日本国内において、政府による外交や旧植民地政策への対立姿勢が強い中華人民共和国(中国)[注 1]、大韓民国(韓国)、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の3か国[注 2]について用いるようになった慣用語。特亜または特アとも略される。
「アジア」という語は、本来は東アジアからトルコにまで至る広大な地域を指しているが、その中でも日本との関係性が問題となりやすい近隣の特定地域をマスコミやインターネットが取り上げる際にも「アジア」という語を使うことがあり、こうした狭義の「アジア」を本来の「アジア」と区別するために使われるのが「特定アジア」という用語である[3]。
もともとは、インターネット上での掲示板などで使用されるインターネットスラングの一つであったが、その後2010年代にかけ、下記のような学者、政治家、ジャーナリスト、書籍における保守・右派論者の間で広まった[要検証 ][4][5][6][7][8][9][10][11]経緯から、概ね批判・侮蔑的文脈で用いられる。
語源
[編集]調査対象国 | 肯定 | 否定 | どちらでもない | 肯定-否定 |
---|---|---|---|---|
中国 | 22% |
75% |
3 | -53 |
スペイン | 39% |
36% |
25 | 3 |
トルコ | 50% |
32% |
18 | 18 |
パキスタン | 38% |
20% |
42 | 18 |
インド | 45% |
17% |
38 | 28 |
ロシア | 45% |
16% |
39 | 29 |
ペルー | 56% |
25% |
19 | 31 |
ナイジェリア | 57% |
24% |
19 | 33 |
イギリス | 65% |
30% |
5 | 35 |
メキシコ | 59% |
23% |
18 | 36 |
ケニア | 58% |
22% |
20 | 36 |
ドイツ | 50% |
13% |
37 | 37 |
インドネシア | 57% |
17% |
26 | 40 |
アメリカ | 65% |
23% |
12 | 42 |
ギリシャ | 52% |
9% |
39 | 43 |
フランス | 74% |
21% |
5 | 53 |
ブラジル | 70% |
15% |
15 | 55 |
オーストラリア | 78% |
17% |
5 | 61 |
カナダ | 77% |
12% |
11 | 65 |
調査対象国 | 肯定 | 否定 | どちらでもない | 肯定-否定 |
---|---|---|---|---|
中国 | 4% |
90% |
6 | -86 |
韓国 | 22% |
77% |
1 | -55 |
パキスタン | 51% |
7% |
42 | 44 |
フィリピン | 78% |
18% |
4 | 60 |
オーストラリア | 78% |
16% |
6 | 62 |
インドネシア | 79% |
12% |
9 | 67 |
マレーシア | 80% |
6% |
14 | 74 |
調査対象国 | 肯定 | 否定 | どちらでもない | 肯定-否定 |
---|---|---|---|---|
中国 | 18% |
71% |
11 | -53 |
メキシコ | 24% |
34% |
42 | -10 |
パキスタン | 34% |
15% |
51 | 19 |
南アフリカ | 41% |
17% |
42 | 24 |
インド | 39% |
13% |
48 | 26 |
フランス | 55% |
29% |
16 | 26 |
ポルトガル | 43% |
13% |
44 | 30 |
イギリス | 58% |
26% |
16 | 32 |
ドイツ | 58% |
25% |
17 | 33 |
ガーナ | 55% |
11% |
34 | 34 |
オーストラリア | 60% |
26% |
14 | 34 |
スペイン | 57% |
19% |
24 | 38 |
エジプト | 52% |
14% |
34 | 38 |
ケニア | 61% |
20% |
19 | 41 |
トルコ | 64% |
21% |
15 | 43 |
韓国 | 68% |
20% |
12 | 48 |
イタリア | 66% |
18% |
16 | 48 |
ブラジル | 66% |
16% |
18 | 50 |
ナイジェリア | 65% |
14% |
21 | 51 |
カナダ | 67% |
16% |
17 | 51 |
アメリカ | 69% |
18% |
13 | 51 |
チリ | 66% |
14% |
20 | 52 |
ペルー | 64% |
10% |
26 | 54 |
ロシア | 65% |
7% |
28 | 58 |
フィリピン | 84% |
12% |
4 | 72 |
インドネシア | 85% |
7% |
8 | 78 |
匿名掲示板「2ちゃんねる」は、以前から中国・韓国・北朝鮮に関する話題はユーザーのイデオロギーの相違によって紛糾する傾向にあった。とくにニュース系の掲示板で顕著であったため、この3か国関連のニュースのみ「ニュース極東板」として分離されることとなった。「ニュース極東板」ではこれら3か国に批判的な意見を持つ者たちを中心に比較的自由な議論が行われ、その中で自然に「特定アジア」の用語が使われるようになっていった[要出典]。
なお、「特定アジア諸国」という語はそれ以前よりさまざまな場面で用いられているが、いずれも本項の「特定アジア」とは無関係である[注 3]。朝南政昭(南川政昭)はアメリカ合衆国の戦略国際問題研究所 (CSIS) が2002年8月1日に発表した報告書『統一コリアに対する米政策の青写真』に、“a selected Asian nation(s)”(アジアの特定の国(々))との記述があることをもって、「特定アジア」の語源としている[15]。また、『朝鮮日報』はこの報告書に関する2002年9月19日の報道で「特定アジア諸国」という日本語訳を与えている[16]。しかしこの語句は「朝鮮半島が統一した場合に統一コリアがとり得る外交戦略としては、(中略)アジアのどこかの国(々)と同盟関係を結ぶことが考えられる」という文脈で用いられており、本項で述べている「特定アジア」のことではない[17]。
「特定アジア」諸国の対日感情
[編集]強力な反日教育を国家が積極的に実行している上に、言論の自由がない中国[18]と、言論の自由が事実上規制されていた韓国両国においては、国民の反日感情が(諸外国と比べて)高い傾向にある。北朝鮮においても、日本の植民地統治の不当性を強く印象付ける教育が全国民に実行されている。
BBCワールドサービスやピュー・リサーチ・センターが定期的に実施している世界各国を対象とした対他国感情に関する調査によれば、調査対象国における対日・対日本人感情は好意的な回答を示しており、日本は、世界に対して良好な影響を与えていると評価されている。一方、「特定アジア」と称される中国と韓国は日本を肯定的にとらえる回答より否定的にとらえる回答が多い傾向にある(北朝鮮は調査データがない)。
2015年4月6日から5月27日にかけてピュー・リサーチ・センターが実施したアジア太平洋10カ国の国民とアメリカ人の15,313人を対象にした日本、中国、インド、韓国の4カ国の好感度調査では、日本に好感を持つと答えた人の割合が、中国、インド、韓国に好感を持つと答えた割合を大きく上回った[19][20]。日本、中国、インド、韓国の4カ国のなかでも日本は最も好意的に評価され、アジア太平洋10カ国の国民とアメリカ人の平均71%が日本に対して好意的な見解を表明した[19]。2位はアジア太平洋10カ国の国民とアメリカ人の平均57%が好意的な見解を表明した中国だった[19]。3位はアジア太平洋10カ国の国民とアメリカ人の平均51%が好意的な見解を表明したインドだった[19]。最下位は、アジア太平洋10カ国の国民とアメリカ人の平均47%という国民の半分以下が好意的な見解を表明した韓国だった[19]。日本は中国と韓国を除いて、ポジティブなイメージを持たれており、マレーシア人の84%、ベトナム人の82%、フィリピン人の81%、オーストラリア人の80%、アメリカ人の74%、インドネシア人の71%が日本に対して肯定的な感情を表明している[19]。この調査結果について韓国では、ベトナムやタイなどの東南アジア諸国では日本好きの国家が多いのに対して、日本に悪感情を抱いている国家は韓国、中国、オランダ程度しかなく、その理由を「かつて第二次世界大戦時に日本から被害を受けた台湾でさえ親日」「欧州の国が東南アジアを植民地支配した時は無差別に略奪したのに対し、日本は略奪するにしても人間扱いをしたから」「日本は大東亜共栄圏を進めていて、欧州の国々からの支配を解放してくれる解放軍という意味合いが強かった」「ODAや電子製品、漫画が大きな役割を担った」「日本は寄付もたくさんしてる」「高い民度、経済大国のイメージ、革新的かつ信頼できる製品、良質な自動車、太平洋戦争時にアメリカとサシで戦ったという強国のイメージ」と指摘している[20]。
中国共産党の機関紙『人民日報』傘下の『環球時報』が東南アジア諸国の日本に対する好感度はかなり高いと報じたことがあり、これについて中国人ジャーナリストの程万軍は「日本はどうやって東南アジア諸国から好感を得ているのか」として考察している[21]。それによると、中国ではテレビをつけると抗日ドラマが放映されているが、東南アジア諸国で抗日を題材にした作品は極めて少なく、東南アジア諸国も中国と同様に日本の侵略を受けたことがあるため、中国人には理解できないことであるが、東南アジア諸国の日本に対する印象は過去の影響を受けておらず、中国人のように日本を嫌うこともない[21]。その理由を『環球時報』は、日本が東南アジア諸国に投資・援助しているからだと説明したが、中国も東南アジア諸国に投資・援助しており、それだけで説明することはできず、日本は経済的に東南アジア諸国を感服させるハードパワーを備えているが、やはり日本の「ソフト・パワー」を抜きにしては語ることはできず、「東南アジア諸国の多くでは、過去のツケを今の日本人に払わせてはならないと考えられている。進んだ歴史観であり、中国人は過去と現在の日本を完全に分けてしまうこの考え方に賛同できない」として、東南アジア諸国が日本に対して寛大なのは、日本が第二次世界大戦中、東南アジアで東洋文明の体現者として振る舞い、日本式「モンロー主義」によって白人の植民者を追い出したことを東南アジアの指導者が利用し、アウンサンは、日本と手を組んでイギリスを追い出し、タイ、ベトナム、インドネシアもこれと類似した経験をしており、東洋の覇王である日本がこれらの国々に希望をもたらしたとしている[21]。
「特定アジア」の使用例
[編集]- 『産経新聞』記者の阿比留瑠比は、SANKEI EXPRESS(2007年3月22日)の記事中に、「4月下旬に訪米する安倍氏としては、中国、韓国、北朝鮮の「特定アジア」を喜ばせるだけの日米離間は望ましくない。」という一節でこの語を用いた[5]。
- 米国の弁護士にして長年日本に在住するタレントであるケント・ギルバートは自著において「特亜三国」と記した[22][23]。
- 日本が中国と韓国から国益を侵害されていること(東シナ海ガス田問題や竹島の領土問題など)について、古田博司が、『産経新聞』のオピニオン欄『正論』で「もういいかげんに覚悟を決めたらどうだろうか。特定アジアからそろって偽史まで強要されている。そのような恥ずかしい国に住んでいくという覚悟を、もう決めた方がよいのではないか」と論じた[6]。古田はまた、「特定アジア」を「反日の弧」と表現している[24]。
- 宝島社は、『自衛隊VS“特定アジア”〜中国・北朝鮮』というタイトルの書籍を出版している[7]。
- 石破茂は、清谷信一との対談において、清谷が「反日なアジアは韓国や中国などの特定アジアだけ」と言及したことに対して、「過去の日本軍の行動の負の部分をみつめないとアジアの反日が再燃する可能性があり、特定アジアだけが反日と決めかかるべきではない」と述べている[25]。
- 韓国の『ソウル新聞』に日本で研究を行う韓国人研究者が、日本で流行する「嫌韓流」や「特定アジア(特亜)」という単語を紹介する中で、市場経済や民主主義など日本とは体制が一致しているとされる韓国が、中国や北朝鮮のような、言論の自由が制限されている一党独裁の社会主義国家とともにカテゴライズされていることの理由を考察する必要があると訴えている[8]。
- 『毎日新聞』専門編集委員の布施広は同紙コラム「発信箱」で「ご存じだろうか…反日感情の強い3国を冷ややかに隔離するように、ネットなどで時々見る言葉」と紹介、「隣人は大切にしたい。右でも左でもいいが、特アなんて悲しい言葉」と批判した[26]。
- 東京大学社会科学研究所の田辺俊介は日本における「アジア観」を分析する中で、インターネット掲示板上でこれらの国々が“Tokutei Asia(specific-Asia)”と呼ばれていることに言及した[注 4]。
脚注
[編集]注釈
[編集]- ^ 中華人民共和国政府が領有権を主張している台湾は通常含まれない。
- ^ 丸山ゴンザレスは「特に反日感情の強い中国と韓国」とし、「北朝鮮が含まれることもある」と述べている[2]。
- ^ 例として「特定アジア諸国における国境貿易及び越境取引」『日本エスカップ協会調査資料』、24-1号、1998年7月、1-51頁など。
- ^ " Anti-Japan movement in China and South Korea, and abduction and nuclear related issues of North Korea are examples of continual problems existing among the East Asian countries. Against these issues, these three countries are named “Tokutei Asia (specific-Asia)” on the Internet bulletin board systems. "[1]
出典
[編集]- ^ a b 田辺俊介 (2009-03). “日本人の「アジア観」-JGSS-2006 国別好感度データの分析から-” (英語). 日本版 General Social Surveys 研究論文集[8] JGSS で見た日本人の意識と行動 (大阪商業大学JGSS研究センター): 14 .
- ^ 丸山ゴンザレス『アジア親日の履歴書』辰巳出版、2014年6月20日、16頁。ISBN 978-4777812967。
- ^ 現代用語編集部『現代用語の基礎知識2007』自由国民社、2006年11月2日、1271頁。ISBN 4-426-10125-5。
- ^ “【断層】大月隆寛 大学最前線の現実”. MSN産経ニュース. 産経デジタル. 2009年6月28日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年12月26日閲覧。
- ^ a b 阿比留瑠比 (2007年3月22日). “【安倍政権考】「戦後レジーム」の厚い壁 阿比留瑠比”. SANKEI EXPRESS. 2007年3月28日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年4月16日閲覧。
- ^ a b 古田博司 (2009年5月8日). “【正論】古田博司 恥ずかしい国に住んでないか”. iza. オリジナルの2009年6月4日時点におけるアーカイブ。
- ^ a b 『自衛隊VS“特定アジア”―中国・北朝鮮・韓国』宝島社〈別冊宝島1329〉、2006年7月1日。ISBN 978-4796653794。
- ^ a b “열린세상 ‘특정 아시아’국가로 취급받는 한국/윤민호 일본 국제경제연구소 상임연구원”. ソウル新聞. (2005年12月20日). オリジナルの2006年2月7日時点におけるアーカイブ。
- ^ 篠田芳明. “一挙多得の対日戦略を目論む特定アジア 誇り高き日本を守るために国民が果たすべき義務とは”. JBpress. 日本ビジネスプレス. 2020年6月19日閲覧。
- ^ 加藤清隆. “わが友、木村伊量社長への「訣別状」” (jp). オピニオンサイト「iRONNA(いろんな)」. 2020年6月19日閲覧。
- ^ 『現代の理論』14号、明石書店、2008年、85頁。
- ^ “2017 BBC World Service poll” (PDF) (英語). BBCワールドサービス. p. 20 (2017年7月4日). 2017年7月30日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年6月21日閲覧。
- ^ “Japanese Public's Mood Rebounding, Abe Highly Popular” (英語). ピュー・リサーチ・センター (2013年7月11日). 2021年5月12日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年6月21日閲覧。
- ^ “Positive Views of Brazil on the Rise in 2011 BBC Country Rating Poll” (PDF) (英語). BBCワールドサービス. p. 10 (2011年3月7日). 2021年6月25日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年6月25日閲覧。
- ^ 朝南政昭『朝日新聞のトンデモ読者投稿』晋遊舎〈晋遊舎ムック〉、2007年4月1日。ISBN 978-4883806164。
- ^ 朱庸中 (2002年9月19日). “米国が発表した「統一韓国の青写真」”. 朝鮮日報. オリジナルの2003年2月16日時点におけるアーカイブ。
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- ^ a b “日本はどうして国際社会でのイメージが良いの?=韓国ネットユーザーが挙げた理由とは”. Record China. (2015年9月7日). オリジナルの2020年2月13日時点におけるアーカイブ。
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- ^ ケント・ギルバート『まだGHQの洗脳に縛られている日本人』PHP研究所、2015年5月25日、25頁。ISBN 978-4569825243。
- ^ ケント・ギルバート『儒教に支配された中国人と韓国人の悲劇』講談社〈講談社+α新書〉、2017年2月21日、4頁。ISBN 978-4062729642。
- ^ 産経新聞2006年7月18日朝刊
- ^ 石破・清谷 2006 [要ページ番号]
- ^ 布施広 (2013年10月30日). “発信箱:特ア?=布施広(専門編集委員)”. 毎日新聞. オリジナルの2013年10月29日時点におけるアーカイブ。
参考文献
[編集]- 石破茂、清谷信一『軍事を知らずして平和を語るな issues on Japanese defense』ベストセラーズ、2006年10月。ISBN 4-584-18967-6。
関連文献
[編集]- 西村幸祐『「反日」の構造 中国、韓国、北朝鮮を煽っているのは誰か』PHP研究所、2004年12月。ISBN 4-569-63996-8。
- 西村幸祐『「反日」の超克 中国、韓国、北朝鮮とどう対峙するか』PHP研究所、2006年3月。ISBN 4-569-64366-3。
- 古田博司『東アジア「反日」トライアングル』文藝春秋〈文春新書〉、2005年10月。ISBN 4-16-660467-8。