利用者:無足百足/sandbox
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比例配分とは、有限の資源を複数の集団に対してその規模に応じて配分すること。
問題設定
[編集]個の分割できない「資源」を集団の構成員に分配することを考える。各構成員には と番号がついていて、構成員 に配分される「資源」の個数を とする。
各構成員 に という数値が対応しているとき、 が の値にできるだけ比例するように を決定する問題を比例配分問題という。
数値の組 から配分を決める方法はさまざまに考えられるが、その一つ一つを配分方式という。代表的な配分方式として最大剰余方式や最高平均方式(除数方式)などがある。
以下では「資源」を議会の議席、「集団の構成員」を都道府県、「数値 」を各県の人口とする。
取り分制約
[編集]と が厳密に比例するとき、 が成り立つが右辺は整数になるとは限らない。そこで、右辺の値を「県 の本来の取り分」と捉え、その端数を切り上げるか切り下げるかしたしたものを と定めることが自然であると考えられる。この条件は次のように述べられる。
取り分制約:常に の値は の小数点以下切り上げまたは切り下げのいずれかになる。
最大剰余方式は取り分制約を満たす。一方、最高平均方式はこれを満たさない。
この制約は次のように2つに分解できる。
上限取り分制約:常に (は の小数点以下切り上げ)が成り立つ。
下限取り分制約:常に (は の小数点以下切り下げ)が成り立つ。
上限取り分制約は「本来の取り分より多すぎる配分になることはない」、下限取り分制約は「本来の取り分より少なすぎる配分になることはない」ということをそれぞれ表す。一般に取り分制約を満たさない最高平均方式(除数方式)の中でも、アダムス方式は上限取り分制約を満たし、ドント方式は下限取り分制約を満たす。
アラバマのパラドックス
[編集]議席数が から に増えたとし、県 への配分が から に変化したとする。議席の総数が増えているので は 以上であることが期待される。この条件は の場合について次のように述べられる。
総数単調性:議席数が のときの配分は、議席数が 個のときの配分 のうちのどれか一つに を加算したものになり、他は一切変化しない。
最高平均方式はこれを満たす。一方、最大剰余方式はこれを満たさない。
この条件が満たされないような配分が起きることをアメリカでの実例に由来してアラバマのパラドックスという。
人口パラドックス
[編集]人口 | 取り分 | 配分議席 | 人口 | 取り分 | 配分議席 | 配分の増減 | 人口変化率 | ||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
A県 | 7800 | 15.6 | 16 | ⇒ | 8432 | 15.330909... | 15 | - 1 | +8.1% |
B県 | 1700 | 3.4 | 3 | 1836 | 3.338181... | 4 | +1 | +8.0% | |
C県 | 500 | 1.0 | 1 | 732 | 1.330909... | 1 | ±0 | +46.4% | |
合計 | 10000 | 20 | 11000 | 20 |
各県の人口 が に変化したとし、 議席の分配を再計算した結果、配分が から に変化したとする。議席の総数は一定であるため、ある県の配分が増えれば別の県の配分が減ることになるが、配分が増加するのは人口がより大きく増加した県であることが自然である。つまり、ある県への配分が増えたならば、その県の人口増加率は配分が減った県よりも大きいことが期待される。この条件は次のように述べられる。
人口単調性: を同時に満たす の組は存在しない。
最高平均方式はこれを満たす。一方、最大剰余方式はこれを満たさない。
この条件が満たされないような配分が起きることを人口パラドックスという。
各条件の関係
[編集]取り分制約、総数単調性、人口単調性には以下のような関係がある。
- 人口単調性を満たす配分方式は総数単調性も満たす。すなわち、人口パラドックスが起きないならアラバマのパラドックスも起きない。
- 取り分制約と人口単調性を同時に満たす配分方式は存在しない。
2つ目の関係は常識的に要求される条件をすべて満たす理想的な配分は実現できないことを意味する。
前述のように、最大剰余方式は取り分制約を満たすが、総数単調性を満たさない。一方、最高平均方式は人口単調性を満たすが、取り分制約を満たさない。これらの中間的な性質をもつ配分方式として、人口単調性のみを諦め、取り分制約と総数単調性を満たすような配分方式も存在する[1]が、実用例はない。
参考文献
[編集]本稿の記述は主に以下による。
- M.Balinski, H.P.Young. Fair Representation: Meeting the Ideal of One Man, One Vote. Yale University Press. (1982)
- ^ M.Balinski, H.P.Young. A new method for congressional apportionment. Proceedings of the National academy of sciences, 71, (1974) pp.4602-4606.