利用者:中村明裕/民間語源
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民間語源(みんかんごげん、英語: folk etymology、ドイツ語: Volksetymologie)とは、語源がわからなくなった語の「語源」を、本当の語源とは無関係に人々が考え、その「語源」に基いて語形や意味を変えてしまうことを言う。たとえば、「コレラ」の語源を「コロリコロリと死ぬため」と考え、「コロリ」と呼ぶようなものである。民間語源説、民衆語源とも言う。
名称と概念について
[編集]本記事で解説する民間語源は、言語学的な根拠のない語源説という点では広義の語源俗解の一種であると言える。また、両者を区別せず「民間語源」と呼ばれることも多い。
しかし通常の語源俗解は民衆に広く共有されるわけではなく、言語体系に影響を与えない。言わば伝説の一種であり、言語学というよりは民俗学の研究対象である。それに対して民間語源は、その「語源」に合わせて語形や意味を変えてしまうという現象を惹き起こす。したがって言語学の研究対象である。
実例
[編集]馬瀬(1992)は先述の「コロリ」の他、次の例を挙げている。
- 煙突を「エンタツ」と言う。「煙突」の「トツ」を「立つ」と解釈したため。
- 長野県奈川村では、毛虫の一種を元々は「シラガダユー」「シラガダイ」と呼んでいたが、「シラガダイオー」「シラガダイジン」という語形が生まれた。「白髪太夫」が本来の語源である。その「ダイ」の部分を、「太夫」という語を知らない子供たちが「大王」「大臣」と解釈したため。
- 中国地方の一部では、麦粒腫を元々は「メボイト」と呼んでいたが、「メイボ」という語形が産まれた。物をもらってくると治るという俗信によって、乞食僧を意味する「陪堂」(ほいとう)から「メボイト」と言うようになったのが本来の語源である。語源がわからなくなるにつれて「ボイト」を「イボ」と解釈したため「メイボ」と言うようになった。
参考文献
[編集]- 亀井孝、河野六郎、千野栄一 編(1996)「民間語源」『言語学大辞典 第6巻 術語編』三省堂(ISBN 4385152187)
- フェルディナン・ド・ソシュール著、小林英夫訳(1972)「第III編 通時言語学 第6章 民間語源説」『一般言語学講義』岩波書店
- 馬瀬良雄(1992)「言語地理学――歴史・学説・調査法――」『言語地理学研究』桜楓社pp.13-53(初出: (1969)「方言研究のすべて」『解釈と鑑賞』34巻8号)