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ボリス・シリュルニク(仏:Boris Cyrulnik、1937年7月26日―)は、フランスの精神科医、精神分析学者、神経学者、動物行動学者、作家。ボルドー出身のユダヤ系フランス人であり、ユダヤ人一斉検挙のサバイバー。児童精神医学ならびに外傷後ストレス障害の専門家として活躍する傍ら、フランス国内のみならずアフリカ諸国や東欧などで、恵まれない子供たちの支援活動にも取り組んできた。
[[ファイル:ボリス・シリュルニク|サムネイル|右|2011年11月1日、イタリアのジェノヴァにて]]
出生から現在までの歩み
[編集]1930年代にフランスに移民したユダヤ系の両親のもとに生まれる。ヴィシー政権が1942年から実施したユダヤ人一斉検挙の際に逮捕された両親は、アウシュビッツ強制収容所に送られて命を絶った。ちなみに、フランスでは、7万6千人のユダヤ系フランス人(そのうち、子供は1万1千400人)が犠牲になった。 1942年7月、逮捕される危険を察知した母親は、その前日に5歳のボリス・シリュルニクを孤児院に預ける。その後、孤児院や匿ってくれた人々の家を転々するが、1944年1月、6歳半のとき、ボルドーで実施されたユダヤ人一斉検挙の際に逮捕される。しかし、一時的に収容されたボルドーのシナゴーグから脱出し、強制収容所送りを免れる。 終戦までは、ユダヤ系であることを隠すために偽名を使い、ボルドーから70キロメートルほど内陸にあるポンドラという小さな村の農場で、住み込みで働く。 戦後、孤児院を転々とした末、パリで暮らす母親の妹ドラに引き取られ、高校の途中まで一緒に暮らす。11歳のとき、戦中の強烈な体験から「人間の心を理解したい」と思い立ち、精神科医になると決意し、苦学の末、パリ大学医学部に進学する 。
フランスでは、心理学で用いるレジリエンス(へこたれない精神)という概念を一般に紹介したことでも有名である。 2007年、サルコジ大統領の要請によって発足された、ジャック・アタリを委員長とする通称「アタリ政策委員会」のメンバーに選出され、政策提言に関与する 。 2014年、フランス政府からレジオンドヌール勲章のオフィシエを受勲する。 2015年1月に発生したフランス紙襲撃テロ事件後、フランスのテレビTV7に出演し、この事件の犯人の心理や社会的背景を説明し、フランス国内で大きな反響を呼ぶ 。 現在、執筆の傍ら、世界中を巡り、人道支援、講演、啓発活動などを行なっている。
おもな著書
[編集]- Mémoire de singe et paroles d'homme, éd. Hachette, 1983.
- Sous le signe du lien, éd. Hachette, 1989.
- La Naissance du sens, éd. Hachette, 1991.
- Les Nourritures affectives, éd. Odile Jacob, 1993.
- De la parole comme d'une molécule, avec Émile Noël, éd. Seuil, 1995.
- L'Ensorcellement du monde, éd. Odile Jacob, 1997.
- La Naissance du sens, Hachette Littérature (1998) (ISBN 978-2012788916) 英訳:The Dawn of Meaning
- Un merveilleux malheur, éd. Odile Jacob, 1999 ; réédition 2002 (ISBN 2-7381-1125-4).
- Dialogue sur la nature humaine, avec Edgar Morin, Éditions de l'Aube, 2000.
- Les Vilains Petits Canards, éd. Odile Jacob, 2001 (ISBN 2-7381-0944-6)
- L'Homme, la Science et la Société, Éditions de l'Aube, 2003.
- Le Murmure des fantômes, éd. Odile Jacob, 2003 ; éd. Odile Jacob poches, 2005 (ISBN 2-7381-1674-4) 英訳:The Whispering of Ghosts: Trauma and Resilience (2005)
- Parler d'amour au bord du gouffre, éd. Odile Jacob, 2004. 英訳:Talking of Love on the Edge of a Precipice (2007)
- La Petite Sirène de Copenhague, Éditions de l'Aube, 2005.
- De chair et d'âme, éd. Odile Jacob, 2006.
- Autobiographie d'un épouvantail, éd. Odile Jacob, 2008, prix Renaudot de l'essai, 200833 (ISBN 978-2-7381-2398-5).
- Je me souviens…, éd. L'Esprit du temps, coll. « Textes essentiels », 2009 ( éd. Odile Jacob poches, 2010) (ISBN 978-2-7381-2471-5).
- Mourir de dire : La honte, éd. Odile Jacob, 2010, (ISBN 978-2-7381-2505-7).
- Quand un enfant se donne « la mort », éd. Odile Jacob, 2011, (ISBN 978-2-7381-2688-7).
- Sauve-toi, la vie t'appelle, éd. Odile Jacob, 2012, (ISBN 978-2-7381-2862-1).
- Les âmes blessées, éd. Odile Jacob, 2014, (ISBN 978-2-7381-3146-1).
邦訳
[編集](1)『壊れない子どもの心の育て方』、ボリス・シリュルニック著、 柴田都志子訳、 ベストセラーズ、2002.10、 Les vilains petits canards ISBN978-4-5841-8698-5
(2)『妖精のささやき : 子どもの心と「打たれ強さ」』、ボリス・シリュルニク著、 塚原史, 後藤美和子訳、彩流社、2007.8、Le murmure des fantômes ISBN978-4-7791-1260-7
(3)『憎むのでもなく、許すのでもなく ~ ユダヤ人一斉検挙の夜』、 ボリス・シリュルニク 著、 林昌宏 訳、吉田書店、2014.3、« Sauve toi, la vie t’appelle »ISBN978-4-905497-19-6
(4)『心のレジリエンス~: 物語としての告白 』、 ボリス・シリュルニク 著、林昌宏訳、吉田書店、 2014.12、Je me souviens…… ISBN978-4-905497-26-4
関連事項
[編集] 精神医学 精神分析 動物行動学 心理学 外傷後ストレス障害 レジリエンス ユダヤ人一斉検挙