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利用者:ほんとうに私は浅はかでした

ほんとうに私は浅はかでした

あらすじ

千葉県千倉で泳ごうと二人乗りのバイクで出かけた主人公の青年とニヒリストを自称する友人は、夕暮れ時にに迷ってしまう。途中で知り合った山梨行商人の紹介で、一緒に一人暮らしの老婆農家に泊まる。一行は老婆の勧めでウイスキーを飲み、酔いつぶれた老婆が寝入った後に行商人から涙ながらの告白を聞かされる。

5年前のこと、行商人が定宿にしていた鴨川の宿屋の夫婦とは、家族同様の付き合いであった。ところが彼らは子宝に恵まれないという悩みがあった。ある夜、晩酌をしている主人から「母親としての喜びを味わわせてやりたい。ついては、妻を抱いてほしい」と頭を下げられる。行商人は一度に酔いの醒める思いがしたものの、夜中にフトン部屋を覗くと灯りがともり、奥さんが一人本を読み横たわっていた。その夜は何事もなかったものの、翌日目を真っ赤にした奥さんから「恥をかかせないで、長いこと考え抜いた事なんです」と告げられ、動揺する。その夜、行商人はふしだらな気持ちもあってついに奥さんと行為に及んでしまい、そのことで深い罪悪感に苛まれるようになる。

ほんとうに私は浅はかでした

主人公と友人の2人は、男の「罪深い話」を聞き、思わず興奮するが、寝ていたと思った老婆までひょっこり起きだし、聞き耳を澄ませていたことが知れる。

さらに話はそれだけでは終わらない。3年後に行商人がそれとなく様子をうかがいに行くと夫婦には子供ができていた。「自分の愚劣な心も知らずに生まれてしまった子が不憫でならない」と涙ながらに訴える行商人に、青年らは「愚劣であろうと神聖な営みであろうと 人間の生まれるのは偶然じゃないですか」などと慰めるが、郷里に妻や子がいる行商人には通じない。

翌日、二人は好奇心から行商人に聞かされた鴨川の宿屋を訪れる。そこで、宿のお手伝いのおばさんから、子供はもらい子であることを聞かされる。話に聞いた奥さんも現れるが、大変無愛想であり、床の間には主人が書いたという「一日一善」などという掛け軸が掛かっていたりする。晩酌も水で薄めたように薄い。高揚していた二人の気分は次第に落ち込んでいく。

翌日、房総半島の海岸線を北上する二人の乗るバイクの後姿・・・・・・。