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利用者:たまごかけおれんじ/sandbox

ツインスター・サイクロン・ランナウェイ
ジャンル 百合サイエンス・フィクション
小説
著者 小川一水
イラスト 望月けい
出版社 早川書房
レーベル ハヤカワ文庫JA
刊行期間 2020年3月25日 -
巻数 既刊3巻(2023年7月現在)
漫画
原作・原案など 小川一水
作画 たなかあひる
出版社 ブシロードクリエイティブ
掲載サイト コミックブシロードWEB
発表期間 2023年7月21日 -
テンプレート - ノート
ポータル 文学漫画

ツインスター・サイクロン・ランナウェイ(Twinstar Cyclone Runaway) は、小川一水による日本SF小説早川書房よりハヤカワ文庫JAで既刊3巻。キャッチコピーは『大宇宙ロケット漁業百合SF』。2019年に刊行されたアンソロジー『アステリズムに花束を』収録の同名小説を長編化したものである。

女性同士の関係性を題材とした、いわゆる百合小説であり、同性愛をテーマの一つとしている。また、小川が得意とするハードSF的描写や設定も多く盛り込まれている。

あらすじ

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人類が宇宙進出を始めてからおよそ6000年後の遠未来、人類の大半が住む領域「汎銀河往来圏」から隔絶された辺境星系の巨大ガス惑星ファット・ビーチ・ボール(FBB)」への入植を試みた移民団は、過酷な環境に苦戦させられるが、惑星の大気圏上層部を生息域とする浮遊生物・昏魚(ベッシュ)を発見し、ありあわせの機材を活用しながら、この生物を捕獲する漁法を開発したことで、FBB惑星圏への定住に成功。「周回者(サークス)」を自称するようになる。

それからおよそ300年後、ファット・ビーチ・ボールにおける漁業は、形状記憶素材「AMC粘土」の塊を船体とする宇宙船「礎柱船(ピラーボート)」によって行われるようになっていた。礎柱船の操船は、船を操縦し魚群を追うツイスタと、思念により船体の形状を変化させ網を作るデコンパという二種類の乗組員が二人一組のペアになって行う。礎柱船は夫婦で所有し、合理的判断を要求されるツイスタを夫が、想像力を要求されるデコンパを妻が務めるのが、周回者社会での習わしであった。

周回者の16の氏族の一つ、エンデヴァ氏に属するデコンパのテラは、事故死した両親の礎柱船を受け継いだものの、ペアを組む結婚相手のツイスタが見つからず困っていたが、ひょんなことからダイオードという少女と出会う。ダイオードは珍しい女性ツイスタで、「テラと一緒に飛びたい」とテラに頼み込み、了承を得る。二人は、女性同士のペアという類を見ないペアでありながら、テラの奇抜な発想とそれを実現するダイオードの操縦技術で、周回者社会の中でも際立った釣果を上げていく。

登場人物・組織

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主な登場人物

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テラ・インターコンチネンタル・エンデヴァ
本作の主人公。第一巻の時点で24歳。ダイオードからは「テラさん」と呼ばれる。デコンパの適正を測定する「一般妄想具現化試験」で百点満点を取ったこともあるほど優秀なデコンパだが、常識外の発想で船を変形させるため、ツイスタの操縦が追いつかず、結果的に度々お見合い(この場合、ペアで出漁してお互いの相性を測ることを意味する)に失敗してきた。ダイオードと出会ったことで、上手く二人で連携して操船できるようになり、記録的な漁獲を上げるようになる。
ダイオード
本作のもう一人の主人公。第一巻の時点で17歳。「ダイオード (Die-over-dose)」は通名で、本名はカンナ・イシドーロー・ゲンドー。テラからは「ダイさん」と呼ばれる。元々はゲンドー氏に所属するツイスタだったが、女性であることを理由にデコンパへの強制転属を迫られたのをきっかけに、大会合の際に脱走し、テラとペアを組んで出漁するようになる。
エダ
本編の時点より300年前、開拓初期の人物。フルネームはドライエダ・デ・ラ・ルーシッド。マギリのパートナーで研究者だったが、大気測定中の事故で深層へ落下し行方不明となる。実は落下した際にAMC粘土の塊「アイアンボール」と接触し、以後その中に意識が転移した状態で300年間生き続けている。
マギリ・ゲンドー(弦道間切)
本編の時点より300年前、開拓初期の人物。周回者のリーダーとして昏魚漁法の開発などに多大な貢献をしたことで知られる。

エンデヴァ氏

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周回者の16の氏族の一つ。氏族船「アイダホ」に居住する。

ゲンドー氏

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隕沙門

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往来圏防軍に与しない、自由な生き方を選んだ人々により運営される互助組織とされる。参加者は異志(イーシー)と呼ばれる。国営レストランチェーンを拠点とし、往来圏全域にまたがるネットワークを構築している。

往来圏防軍

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汎銀河往来圏の国軍。読みは「ワンライウェイバオジュン」。首都である絡陽に拠点を置き、

用語

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礎柱船(ピラーボート)
昏魚捕獲のために開発された宇宙船。二基の球状の乗員区画を除いて、船体全体がAMC粘土で構成されている。船体を構成するAMC粘土は、デコンパの思考制御により自由自在に変形させることができるが、それにより空力特性や重量バランスが大きく変化するため、操縦担当のツイスタと形状変化担当のデコンパの連携が最重要である。周回者社会の経済を文字通り支える存在だが、一氏族ごとに10隻程度しか保有していないため、非常に貴重。
ツイスタ
礎柱船に搭乗する乗組員のうち、実際の操縦を担当する側のこと。デコンパと連携し、船体形状や漁法に合わせて船を操縦する。
デコンパ
礎柱船に搭乗する乗組員のうち、船体形状の制御と漁法の構築を担当する側のこと。船体形状を変容させる際は、「精神脱圧(デコンプレッション)」と呼ばれる動作を行うことで、意識下のイメージをAMC粘土に伝達する。
AMC粘土
正式名称は全質量可換(All-Mass Conversionable)粘土。昏魚の素材である焦粉から精製される形状記憶素材。礎柱船の船体素材であるほか、周回者の主要な輸出品目でもある。
氏族船
周回者社会を構成する16の氏族がそれぞれ1隻ずつ保有する都市型宇宙船。各船のデザインにはそれぞれ氏族の特徴が反映されている。各々の氏族船は資源保護と漁獲量のバランス確保のために別々の軌道面を周回しているため、氏族間での通信によらない直接の交流はほぼ皆無である。
大会合(バウ・アウア)
二年ごとに行われる氏族間の交流会。上述のように通常時は別々の軌道を周回している氏族船が、軌道を合わせてランデブーし、ドッキングを行う。この際に氏族間でのお見合いが行われる他、恒星間宇宙船「大巡鳥」も寄港し、AMC粘土を汎銀河往来圏へ輸出するのと引き換えに、周回者では生産できない品物を輸入する。
汎銀河往来圏
人類や、人類に好意的な異星種(人在)が居住する星間国家。読みは「ギャラクティブ・インタラクティブ」「ファンイェンフーワンライウェイ」の二種類があり、「GI」「往来圏」と略されることもある。首都は絡陽(ルオヤン)。最高意思決定機関として全星代表会議(全星代)、国家元首として大司空(インダストリアル・セクレタリー)を置く。現在の大司空は黮(タン)。
人在
人類と人類に好意的な異星知的生命を総括する言葉。対義語は人非。
フラジャイリャン
異星生命体。惑星の核で繁殖し、一定程度に育つと地表を大規模に破壊してその際に放出されるエネルギーで惑星間移動を試みる性質を持ち、そのため人類を含めた知的生命体とは敵対関係にある。本編より4900年前、建設中のダイソン球を破壊した事件をきっかけに、人類との間で「対片戦争」を起こし、汎銀河往来圏設立の原因ともなった。