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井穴刺絡・井穴刺絡療法とは、横浜の内科開業医であった医学博士、故浅見 鉄男(あさみ てつお 1914年5月5日~2010年5月21日)により確立された治療法であり、井穴(手足の爪脇に存在する経穴・ツボ)から点状出血させることによって、神経反射を誘発して疾病を治療する鍼治療の一種である。
成り立ち
[編集]中国で軍医をし、その後横浜で開業していた浅見鉄男は、患者を治せない事に思い悩み、良導絡や鍼灸治療を学んだ。更に自分の肩こりが治らない為に手当たり次第読み漁った中国の鍼灸書に、「人差し指と薬指の爪の角に針を刺して少量の血を出すと肩こりが治る」という記述を見つけてやってみたところあっさりと治った。患者にも施術してみると「先生、効きますね。」と言われた。ある日、肩こりの患者の薬指に井穴刺絡をしたところ、朝から出ていた蕁麻疹がすっと治った。蕁麻疹は副交感神経の異常亢進で引き起こされることにヒントを得て、花粉症の患者にも同じ施術を行ったところ、鼻詰まりやクシャミが治った。これをきっかけとして自律神経の異常亢進を押さえる井穴刺絡の臨床研究が始まった[1]。
以後約40年の臨床研究から、多様な疾患やその諸症状に対する治療方法として確立された。
基礎理論
[編集]井穴刺絡療法では、次のような基本理論のもとに診断・治療を行っている。
・大半の疾患は脳や神経の異常により発生するものである。
・自律神経の異常には、交感神経の異常亢進と副交感神経の異常亢進があり、どちらの場合も特有の症状が現れる。治療は、異常亢進した神経を抑制することによって行われる。
治療方法
[編集]治療の手技はいたってシンプルであり、両手足に各6か所ずつ(合計24か所)存在する井穴に、三稜針やランセットで刺針し、そこから約30回点状出血させるのみである。パイオネックス、円皮鍼、お灸などの刺激を用いることもある。
自律神経の治療
[編集]自律神経のバランスが崩れた状態、すなわち交感神経または副交感神経の異常亢進では、各神経特有の様々な症状が現れる。これに応じてその神経を抑制する井穴に刺絡をすることにより、自律神経のバランスを整え症状を緩和させることが出来る。
交感神経の異常亢進には H6・F4の井穴、
副交感神経の異常亢進には H5・F5の井穴が用いられる。(図1参照)
体性神経の治療
[編集]運動器の痛みの治療として主に用いられる。痛みの原因となる経絡を、動診(可動域テスト)や触診で見極め、その経絡の井穴に刺絡することで鎮痛を期待する。
内臓の治療
[編集]各臓器の器質的または機能的障害は臓器の交感神経の異常亢進と考えられる。それらを腹診で見極め、各臓器に対応した井穴に刺絡をする(図2参照)
参考文献
[編集]・浅見鉄男『21世紀の医学 井穴刺絡・頭部刺絡学論文集』近代文芸社、2007年
・松田博公『鍼灸の挑戦 自然治癒力を生かす』岩波新書、2005年
外部リンク
[編集]・動画資料
脚注
[編集]- ^ 『鍼灸の挑戦 自然治癒力を生かす』岩波新書、2007年、125-126頁。