コンテンツにスキップ

英文维基 | 中文维基 | 日文维基 | 草榴社区

利用者:しっぽなし/sandbox

盗神伝

[編集]

盗神伝(とうしんでん)は、メーガン・ウェイレン・ターナーによるファンタジー小説のシリーズ作品。1996年に第1巻「ハミアテスの約束(原題:The Thief)」が刊行された。「ハミアテスの約束」、「アトリアの女王(原題:The Queen of Attolia)」、「新しき王(原題:The King of Attolia)」の三部からなり、第二部・三部はそれぞれ前後篇に分かれており全5巻。和訳は金原瑞人宮坂宏美

概要

[編集]

作者が、ある年の夏に家族でギリシアを訪れたときに「ギリシアを舞台にした作品を書こう」と決心したことから、「ハミアテスの約束」が生まれる。本作は1997年のニューベリー賞オナーブック、全米図書館協会優秀図書賞、全米図書館協会ヤングアダルト部門ベストブックなど、数々の賞に輝いた。

あらすじ

[編集]

ハミアテスの約束(The Thief)

[編集]
酒場で「なんだって盗める」と吹聴し、王の紋章指輪を盗み出したために捕らえられた盗人のジェン。しかしその盗みの技術を買われ、ある物を盗み出すようソウニス王の助言者から命令を受ける。そのある物とは…。国同士の水面下での争い、登場人物間の嫉妬や欺瞞、そして神話によって壮大なストーリーが織り成されていく。終盤では秘かにジェンが画策していた衝撃の策略と、彼の正体が明らかになる。

アトリアの女王(The Queen of Attolia)

[編集]
ジェンはアトリア国への潜入に失敗、捕らえられてしまう。あわや死刑になるかと思われたが、下されたのは彼にとって死より恐ろしい刑罰だった…。中立国エディスはとうとう立場を翻し、三国は戦争へと突入していく。快復し再び暗躍するジェンだが、彼の作戦は完璧に見えて何故か失敗する。いったい誰が、どうして邪魔しているのか。思いもよらない裏切りと、ジェンが払わなければならなかった代償が明かされる。

新しき王(The King of Attolia)

[編集]
アトリア国近衛兵のコスティスは、宮廷中から蔑まれているエディス出身の王の副官に任命されてしまう。嘲られ侮られながら、秘かに暗躍するジェン。迫るメデア帝国の影を前に、ジェンは国王としてしっかり国をまとめあげることができるのか。コスティスはジェンの隠している実力を周知させるためにある作戦を仕掛け、その影では別の陰謀も渦巻く。最後まで目が離せない、三部作堂々の完結編。

登場人物

[編集]
エディス(イーディス)人
[編集]

エウジェニデス(通称:ジェン 即位後:アトリス)

口癖は「おれに盗めないものはない」[1]と(作中では一度しか発言されないが)「おれはなんだって好きにやれる」[2]。盗人として優れた演技力や諜報能力を持つ。普段は道化者のように演技していることが多いが、頭の回転が非常に早く、知恵と諜報能力などを活かして暗躍することが多い。
母方の祖父は先代の女王の盗人[3]で、父方の祖父は先々代のエディス国王[4]。父は現エディス国防衛大臣[5]であり、母は優れた盗みの技術から“盗人の女王”と呼ばれた人物らしい[6]が作中では転落死により故人。兄姉は少なくとも4人以上と考えられる発言[7]があり、一人の兄は兵士、もう一人の兄は時計職人、姉たちは結婚していて少なくとも普段は真面目に主婦をしているとのこと。名前が確認できているのは兵士の兄テメノス[8]と、時計職人の兄ステニデス[9]のみ。ちなみにジェンは末息子[10]
集中力と忍耐力が優れており、そのため先代エウジェニデスの祖父も父親の防衛大臣もその素質を見込んでそれぞれの職業につかせたがっていた[11]。またその素質と訓練のおかげで盗人としての能力や器用さの他に、剣術及び体術も際立っている。ただし本人は「人を殺したくなかったから(盗人になった)」[12]、「王になったら、自分の手で人を殺さなくてすむと思ってた」[13]など人殺しを嫌う発言がある。一方で素質がないのか、乗馬は全く上手くない[14]
作中最も神々と交信し、主にエウジェニデスより加護を、モイラから神々の伝言を受けている。一方で、神々から一時的に加護を絶たれたこともある。

エディス女王(本名:ヘレン)

エディス国を治める女王。父と兄が作中では故人[15]。女王ながら王位を継承して5年間の内に国民の忠誠心と愛情を勝ち取っている[16]。鼻のこぶを気にしており、国民が女王の不美人にがっかりしないかを気にしているが、魅力的である[17]<さ/sub>。

エディス国防衛大臣(エウジェニデスの父、本名不詳)

先々代エディス国王の息子引用エラー: <ref> タグに対応する </ref> タグが不足しています。ジェンをその剣技の冴えから兵士にさせたがっていた[18]。また、何代も続くうちに意味が薄れてしまった盗人の肩書など永遠に消えてしまった方がいい、と本気で考えていた引用エラー: <ref> タグに対応する </ref> タグが不足しています。2巻時点においても未だジェンが兵士になろうとしなかったことを悔やんでいる[19]

オルノン

アトリア国駐在のエディス大使。

先代エウジェニデス(エウジェニデスの祖父)

先代エウジェニデスとして活動し、ジェンに盗人としての訓練を施した人物。現役中に、当時王女であったイレーネに対して『盗人の最大の武器は、女王と同じで、頭だ』と発言している[20]。老後は自分で食事もできないほどに両手の麻痺が進行し、階段のいちばん上で手すりを乗り越え、転落により自殺[21]

テメノス

ジェンの兄で官位は不明だが兵士[22]。11歳のとき、剣の訓練中に当時王女であったヘレンの鼻を折ってしまった[23]。女王と同年齢。ステニデスとどちらが上かは不明。

アガペ

フォロス卿とヘレンの母の妹との間に生まれた娘[24]で、アガペの祖父はジェンの祖父(どちらかは不明だが、女王と関係が近いと言っているため、おそらく先々代エディス王)の異母兄弟[25]でもあるため、ジェンとも血のつながりがある。四人姉妹の末っ子で、名前が判明している姉はヘジテのみ[26]。三人の姉たちは怒りっぽく美しい顔が台無しにしてしまうところがあるが、アガペは優しくユーモアがあり、宮廷での人気も高い[27]。ヘレンはこのアガペをジェンにあてがおうと考えていた[28]
ソウニス人
[編集]

ソウニス王(本名不詳)

メイガス(助言者 本名不詳)

ソウニス王に仕え、王の判断を助ける助言者(メイガス)。メイガスとしか呼ばれていないが、メイガスとは肩書きであり、本名は作中で最後まで明かされなかった。博識で、力も強く兵士としても有名[29]。頑固ではあるものの損得の判断などは瞬時に行い、ジェンのことも当初から卑しい者と思いつつも職人として最高の敬意を払っていた[30]。実は情に厚く、ユーモラスな一面もある。2巻頃から、メイガスの影響力の強さを恐れたソウニス王によりやや遠ざけられている[31]

アンビアデス

エウメンの反逆を起こしたの公爵の孫で、没落した家の出身であることを非常に嫌っていた。そのためか金や権力、名誉に取りつかれており[32]、アトリアからの買収に応じメイガス達を裏切った[33]。ソフォスと対照的に植物学などには疎く、サバイバル技術などには優れている。

ソフォス

ソウニス国王の甥。

ポル

ソフォスの父(ソウニス国王の王弟)の護衛隊長。優秀な兵士であり、他国兵の動きの特徴なども見分けられるのか、ジェンがエディスで剣術の訓練を受けた者であることを見破った[34]
アトリア人
[編集]

アトリア女王(イレーネ)

コスティス

テレウス

レリウス

アリストギトン

エロンディティス卿

ディーテ(本名:エロンディティス)

セジャヌス

プレシネ

メデア人
[編集]

ナフセレシュ

メデア皇帝の甥[35]。ティティス病におかされたメデア皇帝[36]は、ナフセレシュの兄を跡継ぎに指名[37]しているので、ナフセレシュは次代メデア皇弟にあたる。アトリア国にメデア大使として駐在し、アトリアを乗っ取ろうと画策していた。

カメト

ナフセレシュの奴隷。
神々
[編集]

エウジェニデス

元は不妊に悩むきこりと大地の女神との間に生まれついた半人半神で、後天的に不死の力を手に入れた神。名付け親はきこりの妻。空の神や姉のヘフェスティアから稲妻を盗んだことから、盗人の神とされ知恵と勇気に優れる。空の神から「お前の人生を苦いものにしてやろう」と宣言され、それはエウジェニデスの弟リオピドスとの関係によって実現することとなる。その結果、神々の中で唯一褐色の肌と黒髪を持つ[38]。おだてられると調子に乗る一面や、家族思いの一面も見られる。作中では主人公のエウジェニデスの前に3度に渡って顕現し、助言や助けを与えている。

ヘフェスティア

空の神と大地の神との間の最初の子どもであり、空と大地の二神に次ぐ力を持ち、他の神々を治める立場にある。元々は山の神だが、空から稲妻の力を大地から自身の力を譲り受けている。
のような姿をしている。

モイラ :作中最も顕現する神。のような姿をしており、人間に神々からの伝言や忠告を与える。

アラクトス

川の神。「ハミアテスの約束」を巡る命令を受けていた。

空の神


大地の神

作中用語

[編集]
国名・地名
[編集]

エディス(イーディス)

ヘフェスティア山脈の頂上近くの谷にある国で、国土は山脈の頂に沿ってソウニス国の北部から北東部へと細長く伸びている。ヘフェスティア山脈はふもとからそびえ立つ急斜面がほぼ泥岩に覆われ、足首やひざの骨のように固い石灰岩や大理石が突出し、険しい坂には石がごろごろしているなど天険の地である。
女王(または王)を頂点として、総理大臣を含む11人の大臣からなる議会により政治が行われており、主な輸出品は木材と銀。穀物・オリーブ・ブドウ酒に関しては輸入に頼っている。またエディスはソウニスとアトリアをつなぐ山道を支配しているので、関税による収入も大きい。このように他国の貿易に依存しているため、中立の立場をとってソウニスとアトリア間の平和を保とうとしてきた。
三国内で過去唯一侵略者に征服されなかったためか、何世紀もの間言葉に変化がない。一例として、エディス国では自国をイーディスという古い呼び名で読んでいるが、他国はエディスと呼んでいる。また、「恩に着る」という独特の礼の言い方がある[39]。同様に他国では侵略者の神々を祀っているが、エディスは現在でも古い神々を信奉している。

ソウニス

アトリア

東から吹く風がヘフェスティア山脈にぶつかるときに大量の雨を降らせるため、年間降雨量はソウニスの二倍近い。そのため輸出品としてブドウ酒、イチジク、オリーブ、ブドウ、それに穀物を輸出している。牧草地もあるため牛も飼っており、エディスから羊を輸入することはない。
女王(または王)を頂点として貴族たちによる政治が行われており、宮殿に仕える者の身分は領地持ちのパトロノイと領地なしのオクロイに大別される。
作中で明らかになっている限りでは、三国内で唯一メデアからの大使が宮殿に入り込んでいる。

メデア

ディストピア

肩書
[編集]

エディスの盗人(エウジェニデス)

エディス国に伝わる一子相伝の職で、単なる泥棒ではなく諜報活動を主とする工作員のようなものと考えられ、王の盗人・女王の盗人という呼び方もされる。役職の肩書、及び継承者の名前はエウジェニデス。作中で盗人、と言われると主にエディスの盗人(その中でも当代である主人公のエウジェニデス)を指す。ソウニス城やアトリア城の一部を設計した技術者(というよりは、おそらく技術者を装った盗人)を祖先に持つため城の作りを熟知し、それぞれの城への出入りや設計時に隠し作った部分を利用して諜報活動を容易に行うことができる。
他国で同じように王や女王に情報をもたらす役割を果たす『助言者』や『書記官』とは異なり、国に忠誠を誓っているが、統治者には忠誠を誓っていない(ただし主人公のエウジェニデスは、ヘレンに対してハミアテスの贈り物を渡したことからも一定の忠誠心があるのか、「わが女王様」と呼称する)。また、独立性を保つためか王と盗人は結婚することができない。ハミアテスの贈り物からも明らかであるように、いざとなれば自分と意見の異なる統治者を廃し、新しい統治者を擁立することを盗人の権利や責任と考えうる、統治者にとって油断のならない味方とされる。また自分の責任において何でも好きにできる自由が保証されている。多大な裁量を与えられる一方で盗人の力を抑えるためにその職は1人しか置けない、自分の財産を持つことを禁じるなどの制約により、統治者への反抗勢力を築きにくくされている。また盗みの訓練はそもそも孤独なものであるため、孤立しがちであると言われる。
ジェンが引退した後、空席と考えられるが不明。

助言者

書記官

その他
[編集]

オッシル

鎮痛効果のある木の実[40]。一度に服用できるのは2粒まで[41]

レチウム

怪我人に対して用いられる睡眠薬[42]
  1. ^ [1] 「ハミアテスの約束」p18
  2. ^ [2] 「新しき王 後篇―栄光―」p77
  3. ^ [3] 「ハミアテスの約束」p369
  4. ^ [4] 「新しき王 後篇―栄光―」 p260
  5. ^ [5] 「ハミアテスの約束」p355
  6. ^ [6] 「ハミアテスの約束」p370
  7. ^ [7] 「ハミアテスの約束」p127
  8. ^ [8] 「ハミアテスの約束」p363
  9. ^ [9] 「ハミアテスの約束」 p127 ただし、身分を隠していた時期に話そうとしていたので実在は疑わしい
  10. ^ [10] 「アトリアの女王 前篇―復讐―」p258
  11. ^ [11] 「アトリアの女王 前篇―復讐―」 p258
  12. ^ [12] 「ハミアテスの約束」 p298
  13. ^ [13] 「新しき王 前篇―孤立―」 p255
  14. ^ [14] 「ハミアテスの約束」 p31
  15. ^ [15] 「」 p
  16. ^ [16] 「ハミアテスの約束」 p364
  17. ^ [17] 「ハミアテスの約束」 p363,364
  18. ^ [20] 「ハミアテスの約束」 p126
  19. ^ [23] 「アトリアの女王 前篇―復讐―」 p259
  20. ^ [24] 「」 p
  21. ^ [25] 「」 p
  22. ^ [26] 「」 p
  23. ^ [27] 「」 p
  24. ^ [28] 「」 p
  25. ^ [29] 「」 p
  26. ^ [30] 「」 p
  27. ^ [31] 「」 p
  28. ^ [32] 「」 p
  29. ^ [14] 「アトリアの女王 前篇―復讐―」p213
  30. ^ [15] 「ハミアテスの約束」 p233
  31. ^ [16] 「アトリアの女王 前篇―復讐―」 p179
  32. ^ [] 「ハミアテスの約束」 p362
  33. ^ [] 「ハミアテスの約束」 p300
  34. ^ [] 「ハミアテスの約束」 p360
  35. ^ [] 「アトリアの女王 後篇―告白―」 p200
  36. ^ [] 「アトリアの女王 後篇―告白―」 p199
  37. ^ [] 「アトリアの女王 後篇―告白―」 p200
  38. ^ [] 「ハミアテスの約束」 p250
  39. ^ [] 「ハミアテスの約束」 p186
  40. ^ [] 「ハミアテスの約束」 p
  41. ^ [] 「ハミアテスの約束」 p
  42. ^ [] 「ハミアテスの約束」 p