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定量記譜法(ていりょうきふほう、英: Mensural notation)は、13世紀後半から17世紀初頭までにヨーロッパのポリフォニーな声楽で用いられた記譜法である。計量記譜法とも呼ばれる。「定量」とは、正確なリズムの長さを音価間の比率で定めるこの記譜法の機能を指している。定量記譜法は、リズムが明確ではないグレゴリオ聖歌に対して、リズム的に定義された当時のポリフォニックな音楽を指していた、ムジカ・メンストラータ(定量音楽)やカントゥス・メンスラビリス(測定可能な聖歌)といった、中世の理論家たちが使っていた用語に由来している。主に声楽のポリフォニーの伝統を受け継ぐ作曲に用いられたが、単旋律聖歌(プレインチャント)では、独自の古い記譜法であるネウマ譜が、この時代を通して用いられた。これらに加えて、純粋な器楽曲の中には、楽器に固有の様々な形式のタブラチュア記譜法で書かれたものもある。
定量記譜法は、1200年頃にフランスで開発された、一定の反復パターンでリズムを記譜する、いわゆるリズミック・モードから発展したものである。初期の記譜法は、フランコ・デ・コローニアによる論文アルス・カントゥス・メンスラビリス(1280)に初めて記述され、体系化された。より複雑なリズムを可能にするこのシステムは、14世紀のアルス・ノーヴァの様式運動とともにフランスに導入され、14世紀のイタリア音楽であるトレチェント音楽は、やや異なる独自のシステムを発展させた。1400年頃、フランス式記譜法はヨーロッパ全土で採用され、15~16世紀のルネサンス音楽の標準的な記譜法となった。17世紀にかけて、定量記譜法は徐々に近代的な小節記譜法へと進化していった。
音価
[編集]名称 | 世紀 | ||||
---|---|---|---|---|---|
13th | 14th | 15th | 17th | ||
マキシマ (Maxima) |
Mx | ||||
ロンガ (Longa) |
L | ||||
ブレーヴィス (Brevis) |
B | ||||
セミブレーヴィス (Semibrevis) |
Sb | ||||
ミニマ (Minima) |
Mn | ||||
セミミニマ (Semiminima) |
Sm | ||||
フーサ (Fusa) |
F | ||||
セミフーサ (Semifusa) |
Sf |
定量記譜法で使用される音符の種類は、現代の記譜法と対応している。定量音符のブレーヴィスは、名目上、現代の倍全音符の祖先である。同様に、セミブレーヴィスは全音符、ミニマは二分音符、セミミニマは四分音符、フーサは分音符に対応する。ごくまれに、定量記譜法では、セミフーサ(十六分音符に相当)などのさらに小さな単位が使用されることもある。一方で、ロンガとマキシマという2つの大きな音符もあったが、現在は使用されていない。
休符
[編集]音価 | 定量記譜法 | 現代 |
---|---|---|
Mx | or | |
L | or | |
B | ||
Sb | ||
Mn | ||
Sm | ||
F | ||
Sf |
リガトゥーラ
[編集]音価 | proprietas perfectio |
下行 | 上行 |
---|---|---|---|
B–L | cum propr. cum perf. |
||
L–L | sine propr. cum perf. |
||
B–B | cum propr. sine perf. |
||
L–B | sine propr. sine perf. |
||
Sb–Sb | cum opposita p. |
final L | |||
---|---|---|---|
final B | |||
initial L | |||
initial B | |||
non-final L | |||
Maxima |
リガトゥーラは一緒に書かれた音符のグループであり、通常は複数の音符にわたって同じ音節をメリスマ的に歌うことを示す。リガトゥーラはセミブレーヴィス以降の大きな音価に対してのみ存在する。定量記譜法におけるそれらの使用は、初期のリズミック・モードからの名残であり、そのリズミカルな意味の一部を継承している。
音高記譜
[編集]定量記譜法におけるリズムの記譜規則は多くの点で現代の記譜法とは異なっていたが、ピッチの記譜法はすでにほぼ同じ原則に従っていた。音符は五線譜あるいは、六線譜に書かれ、先頭に音部記号が付けられ、臨時記号によって変更することができた。
音部記号
[編集]定量記譜法では通常、さまざまな譜表でハ音記号とヘ音記号が使用される。ト音記号は、この時代を通じて使用頻度は低く、完全に日常的に使用されるようになったのは16世紀後半になってからである。音部記号は通常、加線の必要性を避けるために、特定の声の音域に一致するように選択される。ほとんどの声部では中央のCがその範囲内にあるため、ハ音記号が最も頻繁に使用される。混声合唱の場合、典型的な音部記号の組み合わせは、最低声部にバス記号、残りの声部にテノール記号、アルト記号、ソプラノ記号を配置します。キアヴェッテとして知られる別の配置では、各声部の音域が3分の1上にシフトされ、F3、C3、C2、G2音部記号が組み合わせられた。
ハ音記号 | ||
---|---|---|
ヘ音記号 | ||
ト音記号 |
臨時記号
[編集]その他の記号
[編集]歴史
[編集]現代での使用
[編集]文字コード
[編集]記号 | Unicode | JIS X 0213 | 文字参照 | 名称 |
---|---|---|---|---|
𝆶 | U+1D1B6 |
- |
𝆶 𝆶 |
Musical symbol maxima |
𝆷 | U+1D1B7 |
- |
𝆷 𝆷 |
Musical symbol longa |
𝆸 | U+1D1B8 |
- |
𝆸 𝆸 |
Musical symbol brevis |
𝆹 | U+1D1B9 |
- |
𝆹 𝆹 |
Musical symbol semibrevis white |
𝆺 | U+1D1BA |
- |
𝆺 𝆺 |
Musical symbol semibrevis black |
𝆹𝅥 | U+1D1BB |
- |
𝆹𝅥 𝆹𝅥 |
Musical symbol minima |
𝆺𝅥 | U+1D1BC |
- |
𝆺𝅥 𝆺𝅥 |
Musical symbol minima black |
𝆹𝅥𝅮 | U+1D1BD |
- |
𝆹𝅥𝅮 𝆹𝅥𝅮 |
Musical symbol semiminima white |
𝆺𝅥𝅮 | U+1D1BE |
- |
𝆺𝅥𝅮 𝆺𝅥𝅮 |
Musical symbol semiminima black |
𝆹𝅥𝅯 | U+1D1BF |
- |
𝆹𝅥𝅯 𝆹𝅥𝅯 |
Musical symbol fusa white |
𝆺𝅥𝅯 | U+1D1C0 |
- |
𝆺𝅥𝅯 𝆺𝅥𝅯 |
Musical symbol fusa black |
𝇁 | U+1D1C1 |
- |
𝇁 𝇁 |
Musical symbol longa perfecta rest |
𝇂 | U+1D1C2 |
- |
𝇂 𝇂 |
Musical symbol longa imperfecta rest |
𝇃 | U+1D1C3 |
- |
𝇃 𝇃 |
Musical symbol brevis rest |
𝇄 | U+1D1C4 |
- |
𝇄 𝇄 |
Musical symbol semibrevis rest |
𝇅 | U+1D1C5 |
- |
𝇅 𝇅 |
Musical symbol minima rest |
𝇆 | U+1D1C6 |
- |
𝇆 𝇆 |
Musical symbol semiminima rest |
𝇇 | U+1D1C7 |
- |
𝇇 𝇇 |
Musical symbol tempus perfectum cum prolatione perfecta |
𝇈 | U+1D1C8 |
- |
𝇈 𝇈 |
Musical symbol tempus perfectum cum prolatione imperfecta |
𝇉 | U+1D1C9 |
- |
𝇉 𝇉 |
Musical symbol tempus perfectum cum prolatione perfecta [sic] diminution-1 |
𝇊 | U+1D1CA |
- |
𝇊 𝇊 |
Musical symbol tempus imperfectum cum prolatione perfecta |
𝇋 | U+1D1CB |
- |
𝇋 𝇋 |
Musical symbol tempus imperfectum cum prolatione imperfecta |
𝇌 | U+1D1CC |
- |
𝇌 𝇌 |
Musical symbol tempus imperfectum cum prolatione imperfecta diminution-1 |
𝇍 | U+1D1CD |
- |
𝇍 𝇍 |
Musical symbol tempus imperfectum cum prolatione imperfecta diminution-2 |
𝇎 | U+1D1CE |
- |
𝇎 𝇎 |
Musical symbol tempus imperfectum cum prolatione imperfecta diminution-3 |
脚注
[編集]