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利用者:あるふぁるふぁ/サンドボックス4

国際協同組合同盟(こくさいきょうどうくみあいどうめい、International Co-operative Alliance、ICA)は、1895年に設立された協同組合国際組織である。ジュネーブに本部を置く。世界の協同組合運動の推進、協同組合の価値と原則の推進と擁護、協同組合間の協力関係の促進、世界平和と安全保障への貢献などを目的とし、情報発信、国際会議やセミナーの開催、国際連合への提言などの活動を行っている。

世界90ヶ国から、農業消費者信用保険保健漁業林業労働者旅行住宅エネルギーなどさまざまな協同組合の全国組織239組織が加盟しており、傘下協同組合の組合員総数は8億人を超える。また、国際連合のグレードAのオブザーバーとなっており、経済社会理事会をはじめ、FAOILOUNIDOUNCTADユニセフユネスコで議案提案権のある一般カテゴリーの諮問機関である。

組織[編集]

2年に1度開催される総会が最高議決機関であり、特に必要な場合には大会が開催される。総会では、各会員組織から1名ずつ(ただし1国の代議員数は全体の15%を超えてはならないとされている)の代議員が参加し、前回総会からの活動報告の承認、次回総会までの方針や事業計画の決定、理事の選出などを行う。日常的な業務は会長以下16名の理事会が担い、専務理事が責任者として本部事務所に常駐する体制を採っている。また、分野別の9つの専門機関と課題別の4つの専門委員会を設置している。

さらに、専務理事の下、世界を4つの地域に分けてそれぞれ地域事務局を置き、総会が開催されない年には地域総会が開催されている。地域事務局には、それぞれ事務局長が配置され、地域協議会が支援・助言している。

地域事務局
専門機関
  • 国際農業協同組合機構(ICAO)
  • 国際漁業協同組合連合(ICFO)
  • 国際協同組合保険連合(ICMIF)
  • 国際保健協同組合機構(IHCO)
  • 国際協同組合銀行連盟(ICBA)
  • 国際協同組合住宅機構(ICA Housing)
  • 国際労働者生産協同組合連合(CICOPA)
  • グローバル生活協同組合委員会(CCW)
  • 国際旅行協同組合(TICA)
専門委員会
  • 男女共同参画委員会
  • 人的資源開発委員会
  • 調査委員会
  • コミュニケーション委員会

活動[編集]

原則の制定と改訂[編集]

設立以来、国際協同組合同盟の主たる活動は、「協同組合とは何か(ある組織を協同組合と呼べるかどうかの判断基準は何か)」を明確にする協同組合原則を制定し、時代に即して改訂することであった。1921年の第10回バーゼル大会でロッチデール原則が定式化され、それを現代的に見直す形で1937年の第15回パリ大会で協同組合7原則が採択された。その後、1966年の第23回ウィーン大会、1995年の第31回マンチェスター大会で改訂されている。

現在適用されている1995年の第31回マンチェスター大会で採択された原則は次の通りである。

定義
協同組合は、人びとの自治的な組織であり、自発的に手を結んだ人びとが、共同で所有し民主的に管理する事業体をつうじて、共通の経済的、社会的、文化的なニーズと願いをかなえることを目的とする。
価値
協同組合は、自助、自己責任、民主主義、平等、公正、連帯という価値を基礎とする。協同組合の創設者たちの伝統を受け継ぎ、協同組合の組合員は、正直、公開、社会的責任、他者への配慮という倫理的価値を信条とする。
原則
協同組合原則は、協同組合がその価値を実践するための指針である。
  • 第1原則「自発的で開かれた組合員制」
  • 第2原則「組合員による民主的管理」
  • 第3原則「組合員の経済的参加」
  • 第4原則「自治と自立」
  • 第5原則「教育、研修および広報」
  • 第6原則「協同組合間の協同」
  • 第7原則「地域社会(コミュニティ)への関与」

情報の発信と国際機関への働きかけ[編集]

1895年の設立時に掲げた協同組合間での情報の交換を実現するという目標に従って、翌1896年から各種統計の収集が始まり、1908年には『国際協同組合情報』(後の『協同組合レビュー』)が創刊された。2006年からは、各国政府や国際機関に協同組合等の重要性を広めることと、協同組合間での成功モデルや革新的アプローチの共有を目的に、世界の主要な協同組合等の売上高上位300のランキング「グローバル300リスト」の公表をはじめた。

こうした情報の収集と発信だけでなく、大会・総会をはじめとした各種会議の開催を通じても各国の協同組合の相互理解は促進され、さらに各国政府や国際機関に対しても協同組合セクターの存在を認識させる役割を果たしている。また、日常的なロビー活動によって、国際連合や国際労働機関などで、協同組合の果たす役割を積極的に評価する決議が度々なされている。

世界平和への取り組み[編集]

国際協同組合同盟は、すでに第1回協同組合大会で国際平和を希求していた。第一次世界大戦の足音が近づいてきた1913年の第9回グラスゴー大会では「平和が協同組合の発展に不可欠であり、協同組合の発展が世界平和の保証でもある」旨の平和決議が満場一致で採択されている。その後、時に対象国の加盟組織から激しい反発を受けながらも、時々に戦争反対と世界平和を求める決議を採択してきた。

日本産業組合中央会日中戦争に対する非難に晒されて脱退したが、戦後復帰した全国指導農業協同組合連合会日本生活協同組合連合会は、1954年の第19回パリ大会で唯一の被爆国として原水爆実験禁止を訴え、平和決議として採択されている。

歴史[編集]

沿革[編集]

設立の背景[編集]

ロッチデール公正先駆者組合の最初の店舗

18世紀末にイギリスで生まれた近代協同組合は、産業革命の伝播とともにヨーロッパに広まっていった。イギリスでは1844年に設立されたロッチデール公正先駆者組合の成功によって生活協同組合が広がり、フランスでは1840年代(特に1848年二月革命後にルイ・ブランの支援を受けて以降)に数多くの労働者協同組合が生まれている。ドイツでは1840年代から1850年代にかけて政府による奨励策をうけて信用協同組合が広がっていった。また、同じ時期に農業協同組合や、保険や住宅などのサービスを供給する協同組合も広がっていった。

こうした状況下で、各国の協同組合の連合会を作る動きとともに、他国の協同組合を調査し交流しようとする動きが現れてきた。イギリスでは1869年に全国の協同組合が集う第1回協同組合大会が開催されたが、ここにはフランス・ドイツ・イタリアデンマークスウェーデンスイスの協同組合関係者も招待されている。また、1885年にはフランスで第1回協同組合大会が開催され、イギリスの協同組合大会で任命された代表が参加した。

一方で各種協同組合間での路線対立も存在した。特に労働者生産協同組合と、卸売協同組合・消費生活協同組合との間の利潤分配をめぐる論争は、イギリスの協同組合運動を二分する論争となった。1884年に設立された「労働アソシエイション」を中心とする労働者協同組合側は、ロバート・オウエンの思想を基にコ・パートナーシップ(労働者の経営参加)とそれに基づくプロフィットシェアリング(利潤分配)を全ての協同組合に適用させようとした。一方、1873年に設立された卸売り協同組合連合会(CWS)を中心とした卸売協同組合・生活協同組合側は、生産過程も消費者によって消費者のために組織するべきだと主張して利潤分配は購買高配当を原則としていた。イギリス国内では卸売協同組合・生活協同組合が成功してイギリスの協同組合連合会の中で大勢を占め労働者協同組合側が少数派となっていく中で、特にフランスで労働者協同組合が発展していたことに目をつけた労働者協同組合側は、国際組織を組んでコ・パートナーシップの思想を広めようと考えた。

こうして、主としてイギリスの労働者協同組合関係者によって労働者協同組合の国際組織を設立しようとする機運が高まっていった。

設立[編集]

労働アソシエイションのエドワード・ニールエドワード・グリーニングは、1892年のイギリス協同組合大会に「プロフィットシェアリングを基礎とする」協同組合の国際同盟設立とそのための準備会議の開催を提案し、決議された。その年の内に開催されたフランス代表も交えた会議で、1893年にイギリスで第1回国際大会を開催することが確認された。しかし、1892年にニールが死ぬと、後継を依頼されたヘンリー・ウォルフは生活協同組合や信用協同組合も含めたあらゆる協同組合の国際組織とするよう提案し、この提案を検討するため第1回大会の開催は延期された。代わりに1893年8月にフランス、アイルランドベルギー、イタリア、ドイツ、オランダの代表を招集して再度会議が開催され、同盟にあらゆる種類の協同組合が参加することを認める提案が承認され、あわせて正式名称を「国際協同組合同盟」とするジョージ・ヤコブ・ホリョークの提案を決議して、翌1894年に第1回大会を開催することが決定された。しかし今度は会長人事にイギリスの協同組合連合会が難色を示したことなどからさらに1年延期され、初代会長を同連合会から選出することで、ようやく1895年8月19日から24日に第1回国際協同組合大会の開催にこぎつけた。

第1回国際協同組合大会には、イギリス、フランス、イタリア、ベルギー、オランダ、デンマーク、セルビア、ハンガリー、ロシア、アメリカ、オーストラリア、インド、アルゼンチンから代表者が参加し、参加者は200名を越えた。一方で、当初からコ・パートナーシップを承認する協同組合の国際組織を志向していたことから、ドイツの協同組合は代表を派遣しなかったし、CWSも事実上参加しなかった。大会では国際協同組合同盟を設立することと3年毎に大会を開催することを決めたが、コ・パートナーシップとプロフィットシェアリングをめぐっては主流派と一部のCWSの反発をおそれるグループとの間で激しい議論が交わされた。最終的に規約に「プロフィットシェアリング」の文言が盛り込まれたものの、当面は加盟するにあたってこれらの承認を義務付けないこととし、国際協同組合同盟の定款の決定は翌1896年に第2回大会を開催して議論することとして分裂の危機を回避した。

原則の制定[編集]

年表[編集]

1925年から1995年まで用いられた「虹の旗」

世界大会・総会[編集]

開催地 開催国 備考
第1回 1895年 ロンドン イギリスの旗 イギリス
第2回 1896年 パリ フランスの旗 フランス
第3回 1897年 デルフト オランダの旗 オランダ
第4回 1900年 パリ フランスの旗 フランス
第5回 1902年 マンチェスター イギリスの旗 イギリス
第6回 1904年 ブダペスト オーストリア=ハンガリー帝国の旗 オーストリア=ハンガリー帝国
第7回 1907年 クレモナ イタリア王国の旗 イタリア王国
第8回 1910年 ハンブルグ ドイツの旗 ドイツ帝国
第9回 1913年 グラスゴー イギリスの旗 イギリス
第10回 1921年 バーゼル スイスの旗 スイス
第11回 1924年 ヘント ベルギーの旗 ベルギー
第12回 1927年 ストックホルム  スウェーデン
第13回 1930年 ウィーン  オーストリア
第14回 1934年 ロンドン イギリスの旗 イギリス
第15回 1937年 パリ フランスの旗 フランス
第16回 1946年 チューリッヒ スイスの旗 スイス
第17回 1948年 プラハ チェコスロバキアの旗 チェコスロバキア
第18回 1951年 コペンハーゲン  デンマーク
第19回 1954年 パリ フランスの旗 フランス
第20回 1957年 ストックホルム  スウェーデン
第21回 1960年 ローザンヌ スイスの旗 スイス 『ボノー報告』
第22回 1963年 ボーンマス イギリスの旗 イギリス
第23回 1966年 ウィーン  オーストリア
第24回 1969年 ハンブルク 西ドイツの旗 西ドイツ
第25回 1972年 ワルシャワ ポーランドの旗 ポーランド
第26回 1976年 パリ フランスの旗 フランス
第27回 1980年 モスクワ ソビエト連邦の旗 ソビエト連邦 『レイドロー報告』
第28回 1984年 ハンブルク 西ドイツの旗 西ドイツ
第29回 1988年 ストックホルム  スウェーデン
第30回 1992年 東京 日本の旗 日本 『ベーク報告』
総会 1993年 ジュネーブ スイスの旗 スイス
第31回 1995年 マンチェスター イギリスの旗 イギリス
総会 1997年 ジュネーブ スイスの旗 スイス
第32回 1999年 ケベック カナダの旗 カナダ
総会 2001年 ソウル 大韓民国の旗 韓国
総会 2003年 オスロ  ノルウェー
総会 2005年 カルタヘナ  コロンビア
総会 2007年 シンガポール シンガポールの旗 シンガポール
総会 2009年 ジュネーブ スイスの旗 スイス

日本の加盟団体[編集]

日本の協同組合として最初に加盟したは、1909年明治42年)頃に加盟した東京購買組合共同会である。その後1923年大正12年)に産業組合中央会が加盟して千石興太郎が中央委員に選出されるなど活動していたが、日中戦争の拡大によってイギリスの消費組合で日本商品の不買運動が広がり、国内的にも産業組合が次第に戦時体制に組み込まれていく中で、1940年昭和15年)に脱退している。

1945年(昭和20年)に太平洋戦争が終わると、同年の内に賀川豊彦を会長として日本協同組合同盟(後の日本生活協同組合連合会の母体)が発足し、1946年(昭和21年)チューリヒ大会でICA会長が日本の加盟希望を表明したこと受けて1947年(昭和22年)の中央委員会で国際協同組合同盟への加盟を決議。1949年(昭和24年)には国際協同組合同盟事務局長から賀川宛てに復帰を勧める書簡が送られたが、GHQが許可しなかったため実現しなかった。

サンフランシスコ講和条約調印後の1952年(昭和27年)になって、GHQの許可が得られないまま日本生活協同組合連合会の副会長が渡英してICA執行委員会に全国指導農業協同組合連合会(全指連、後の全国農業協同組合中央会)と日本生活協同組合連合会の加盟を申請し、承認された。その後、他の協同組合も加盟して、2010年現在、日本からは下記の12団体が国際協同組合同盟に加盟している。

これら12団体に加盟申請中の全国労働金庫協会を加えた13団体によって「日本協同組合連絡協議会」(Japan Joint Committee of Co-operatives、略称JJC)が組織されており、日本国内での協同組合間の連携・協力と海外の協同組合運動との連携強化を図っている。

日本の加盟団体からは、1958年に日本生活協同組合連合会の賀川豊彦会長と全国農業協同組合中央会の荷見安副会長が中央委員に就任して以降、中央委員・執行委員を送り続けている。また、国別では最大の会費納入国である。

参考文献[編集]

  • 天野晴元 「『世界的危機・協同組合の好機』を討議したICAジュネーブ総会」『生活協同組合研究』第408号 生協総合研究所、2010年、61-64頁。
  • 今井義夫 『国際協同組合運動と基本的価値』 日本経済評論社、1990年。
  • 大谷正夫 『協同組合の持続可能な発展を願って』 コープ出版、1998年。
  • 協同組合経営研究所 『新 協同組合とは<改訂版>-そのあゆみとしくみ』 協同組合経営研究所、2007年。
  • 協同組合辞典編集委員会編 『新版 協同組合事典』 家の光協会、1986年。
  • 白井厚監修・農林中金研究センター編 『協同組合の基本的価値』 家の光協会、1990年。
  • 白石正彦監修・農林中金総合研究所編 『協同組合の国際化と地域化-21世紀の協同組合像を展望する』 筑波書房、1992年。
  • 白石正彦監修・農林中金総合研究所編 『新原則時代の協同組合-持続的改革に向けて』 家の光協会、1996年。
  • 鈴木俊彦 『協同組合再生の時代』 農林統計出版、2008年。
  • 富沢賢治 『非営利・協同入門』 同時代社、1999年。
  • 日本協同組合学会編訳 『ILO・国連の協同組合政策と日本』 日本経済評論社、2003年。
  • 日本協同組合連絡協議会編 『第88回国際協同組合デー記念資料』 日本協同組合連絡協議会、2010年。
  • ジョンストン・バーチャル 『国際協同組合運動-モラル・エコノミーをめざして』 都築忠七監訳、家の光協会、1999年。
  • 花盛繁 「今、求められる協同組合での一致した取り組み-ICAシンガポール総会報告」『生活協同組合研究』第385号 生協総合研究所、2008年、60-62頁。
  • イアン・マクファーソン 『21世紀の協同組合原則-ICAアイデンティティ声明と宣言』 日本協同組合学会訳・編、日本経済評論社、2000年。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]

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