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略歴
[編集]若い頃
[編集]ギルレイはロンドンのチェルシーで生まれた。彼の父親は軍人で、1745年におこったフォントノワの戦いの影響で片腕を失い、最初は囚人として、その後は年金受給者としてロイヤル・ホスピタル・チェルシーに入院した。ギルレイは練習として文字を彫ることから始め、彫刻の腕を磨いた。しかしこの仕事にうんざりした彼は、放浪芸人の一団となり、しばらくの間イギリスの各地を放浪した。
波乱に満ちた生活の後、彼はロンドンに戻り、1778年からロイヤル・アカデミー・オブ・アーツで学び、今日まで伝わる最初の作品『Paddy on Horseback』(1779年)は版画家で刷版の彫り師ウィリアム・ハンフリー(William Humphrey)が製作した[1]。
活躍・没
[編集]彼の初期の風刺画は、ほとんどがエッチングで、稀にアクアチントを使ったものや、点描法を使ったものも見られた。また、同世代のウィリアム・ホガースの風刺画をよく楽しみ、あるときは彼の研究対象になった。1782年に発表された、ジョージ・ロドニー卿のセインツの海戦での海軍の勝利を描いた2枚の風刺画は、彼の特筆すべきスケッチの初期の作品の1つである。
作品はスミ色1色刷りの銅版画に手彩色してあり、欄外の解説文は英語、フランス語、オランダ語[2]でも記して、イギリスだけではなくヨーロッパ各地で流通した。
ハンフリーの妹は名前をハナー・ハンフリー(Hannah Humphrey)といい、ギルレイの版画の版元として販売を手がけた。ギルレイにはその店の様子を描いた作品もある(挿絵『とても滑りやすい天気』参照)。この2階に間借りし、臨終も迎えた[4]。
ギルレイはハナーを通じて、親戚のミス(あるいはミセス)と暮らしていた。ギルレイは何度か彼女との結婚を考えたとされ、ある時、二人で教会へ向かう途中で、ギルレイはこんなことを口に出したという。
「これは愚かな関係だと思うよ、ミス・ハンフリー。私たちは一緒にとても快適に暮らしているんだから、そっとしておいた方がいい」
ギルレイの版画の一つ『Twopenny Whist』は、トランプをしている4人の人物を描いたもので、左から2番目に描かれた、眼鏡をかけた老婆は、ミスを描写していると広く信じられている。ギルレイの版画はハンフリーの店のウィンドウに良く展示され、熱心な群衆がそれを鑑賞した。
1782年頃から、その時々の政治の話題を主題に製作しはじめ、同時代のトマス・ローランドソン(1756年-1827年)や、先行するホガース(1697年-1764年)を含め、風刺画の黄金時代を作ったとされる[5]。
43歳になろうとする1806年、急激に視力が衰えはじめ、それまでのような作品を描けなくなる。眼鏡をかけたりしても、満足のいく成果は得られなかった。以前よりも作画の効率が悪くなると、ギルレイは沈みがちになり、深酒が続いた。それが原因で長時間の痛風を引き起こした。1809年9月の作品を最後に筆をおき、精神症状がつのると1811年7月にハンフリーの店の屋根裏の窓から飛び降りて自殺を試みるが未遂に終わる。ギルレイは精神錯乱が高じ、自立した生活ができなくなると、ハナー・ハンフリーの介護を受けて暮らし、1815年に57歳で没した。ピカデリーのセント・ジェームズ教区の墓地に埋葬された。その後は自立した生活ができなくなると、ハナー・ハンフリーの介護を受けて暮らし、1815年に57歳で没した。
彼の最後の作品は、1811年のヘンリー・バンバリー(Henry Bunbury)との共作で、『巡回裁判所での理髪店の内部』と題された。この作品を制作している間に発狂しては正気を取り戻す、これを幾度も繰り返し、その精神の変化を最期の作品に活かした。それがかえって精神の悪化を早めたのかもしれない。
- ^ National Portrait Gallery. “'Paddy on horse-back' -” (英語). www.npg.org.uk. 2021年1月9日閲覧。
- ^ Hess 1795.
- ^ House of Lords 2017, p. 3-4.
- ^ "1.4 Relationship with the Publisher Hannah Humphrey"[3]
- ^ “(19) カリカチュア(諷刺画)を中心とする18~19世紀イギリスの挿絵入り本コレクション | (2)ジェイムズ・ギルレイ(Gillray,James) (1756-1815)”. 中央大学. 図書館 > 特別コレクション・古文書一覧 特別コレクション > コレクション解説. 中央大学. 2021年1月15日閲覧。