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利用者‐会話:東 遥/原稿/NEC Vシリーズ

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NEC Vシリーズは、日本電気が製造したCPUのシリーズである。Intel製のi8086,i8088互換のCPUのシリーズ、独自開発の32ビットCPUのシリーズ、そして、RISC-CPUのシリーズからなる。名称のVはVictoryを表す、と言われる。

概要

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IntelCPU製品展開を追いかけるように日本電気は主にIntel系(ZilogZ-80も含む)のCPUの互換製品や類似製品を開発・展開してきた。1980年年代中頃よりIntel製8086,8088の互換製品を開発・販売していたが、これをC-MOS化すると共に内部バスの本数を増やして能力を向上させたV20,V30を開発した。また、これらのCPUをコアとして周辺回路を集積したV40,V50や、より高性能化を図ったV33等へと展開した。しかし、V30は提訴により、充分な商機を得る事が出来なかった。

その一方で、より高性能を目指して、独自アーキテクチャの32ビットCPU、V60,V70,V80を開発した。

後に、RISCアーキテクチャのV800シリーズへ移行した。

尚、VRシリーズと呼ばれる製品群もあるが、これらはMIPSアーキテクチャであり、Vシリーズとは異なる。

16ビットCPU

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Intel8086の上位互換CPUであるV20,V30を開発し、爾後、このV20,V30を中心として高集積化を図ったデバイスを派生させていく。また、命令セット自体は後のV60,V70のエミュレーション機能に引き継がれた。

V30

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V30 は、日本電気が製造した、Intel8086の上位互換CPUである。外部バス8ビットのV20がある。また、V30,V20のセカンドソース製品がSONY,シャープ,Zilogからも出ていた。

ピン配置は8086と互換であり、バスにも或程度の互換性がある。厳密にはタイミングが異なるが、8086と差し替えて利用することが可能で、実際にPC-9801のi8086をV30に差し替えることも良く行われた。

ソフトウェアはバイナリレベルで80186の上位互換であり、更にビットストリング操作命令等を拡張している。 8086に不足していたいくつかの命令が補完されており、V30で拡張された命令を使用することで、8086より制限が少なく、より直交性の高い命令を利用可能であった。V30専用のアセンブリニーモニックは、8080からの流れを汲んだ8086のニーモニックに比べ、洗練された構文でプログラムを記述する事が可能なものであったが、実際はV30のニーモニックに対応したアセンブラはほとんど存在せず、またこれらV30で拡張された命令は後の80286以降の環境では実行することができないため、市場では単に「高速な8086」として利用されていた。

8086に対してCPU内部のバスを増強してデータ転送効率を上げるとともに、消費クロック数の多い乗算、除算命令をハードワイヤード化し、クロックのデューティ比を変更したため、多くの命令を8086の約2/3のクロック数で実行可能となり、単純にCPUを差し替えただけで、同一の動作クロックで数%から数10%高速で演算処理を行うことが出来た。

また8080エミュレーション機能を実装していたのも特徴の一つである。1980年代後半においては、一部工業高校などでは、V30搭載型PC-98シリーズにCP/Mエミュレータを搭載し8ビットCPUによるアセンブラ実習に使用されていた。(CP/MのBDOSに相当する部分をMS-DOSのデバイスドライバとして実装していた。)

80186とはバイナリ上位互換が保たれていたが、Intel社の方針転換によってセカンドソースが許可されなくなったため、80286以降のCPUではV30で拡張された命令との互換性が保てなくなった。これに関連して、マイクロコードの著作権がセカンドソース契約で問題となり、NECは先手を打って1984年、Vシリーズがインテルの著作権を侵害していないことを確認する訴訟を起こした。これに対してインテルが反訴したため裁判は長引いたが、1989年に著作権侵害なしとの判決を得た。ただし、その直接の理由はi8086に著作権表示が無く、当該製品に対して著作権が認められないからであった。一方でマイクロコードにも著作権があることが判示され、互換プロセッサの製造が困難となった。

86系のマイクロコードの著作権への抵触を回避するためにハードワイヤード化されたV33系へ移行した。

V30HLはV30を改良して16MHz動作可能な、高速・省電力版。省電力機能に優れ、周辺チップの消費コントロール機能を持つ。その特長を生かし、コンパクト型デスクトップのPC-9801UFPC-9801UR、ノート型のPC-9801NVPC-9801NLに搭載された。

V30MZ組み込み用のIPコア。携帯ゲーム機ワンダースワンにも、カスタムされたものが搭載された。オリジナルのV30より命令を幾つか削除している。また、メモリアクセスの挙動がオリジナルと異なる。

V33,V33A,V53,V53A

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V30がマイクロコード著作権で訴えられたことを受けて、内部論理のハードワイヤードロジック化を行い、マイクロコードの違法使用をしていないことを明確にすると共に、マイクロコード実行にかかるオーバーヘッドを削減して実行処理速度の向上、16M迄のメモリを扱えるようアドレス空間の拡張を図ったものである。8086互換プロセッサとしては、当時の80286とほぼ同等の処理速度を持つ。8086のソフトウェアをそのまま動作させる為の機能が豊富に実装されているが、V30とはピン互換では無い。PLCCによる製品のみが提供され、40pin-DIPパッケージのIntel 8086と差し替えて高速化を図ることは出来なかった。

V33Aは、最初のV33未定義命令割り込みベクタ等が80286と異なっていた部分を修正し、互換部分を修正したもの。PC-98DO+に搭載された。

後に、V50のCPUコアを、このコアに置き換えたV53,V53Aも開発されている。

プログラマブルなI/Oウェイト追加機能等、

V40,V50

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V20,V30をコアに、8086用周辺チップを集積したもの。既存のIntel 8086応用機器にて、複数のチップをまとめて置き換える用途向け。

V25,V25+,V35,V35+

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V20をコアに、独自周辺回路を集積したもの。また、レジスタセットが複数バンクあり、コンテキストスイッチを高速に切り替える事が出来る。組み込み機器向けを意図して設計されている。V25+,V35+は、集積されているDMAの性能を向上させた他、不都合な部分を修正したもの。

V55SC

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V25に対して、シリアル・コミュニケーション・コントローラの数と性能を増強したもの。

V55PI

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V25に対して、PWM機能と、画像圧縮・展開命令を追加した物。メカトロニクスにおけるモーター制御機能と、画像圧縮・展開の性能を高めてFAX向けに最適化した物。

32ビットCPU

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独自のアーキテクチャを持つ32ビットCPUとして開発された。32ビットレジスタを32本持ち、全く独自の命令セットであり、非常に豊富なアドレッシングモードを持った直交性の高いアーキテクチャが特徴である。また、V60,V70にはi8086エミュレーションモードがあり、旧来のソフトウェア資産も活用できる様になっている。開発当時には丁度TRONCHIPのプロジェクトもあり、相互に影響し合っている。

また、監視モードを持ち、2基のV60を組み合わせてエラー検出システムを、3基以上を組み合わせて多数決によるフォールトトレラントシステムを構成することが可能であり、高信頼性システムへの応用も目指した。

内部32ビット構成、外部16ビットバスのV60と、内部構成・外部バス共に32ビット構成のV70、高性能版のV80がある。

V60

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V30をエミュレートするモードも持ち、ソフトウェア資産の継承も考慮している。

高信頼性システムを構成できる利点を活かしてNTTの交換機に使用されたほか、日本電気からは、PC-9801専用の拡張ボードとセットでUNIXが販売されていた。セガの業務用基板System32やModel1で使用された。他のメーカーでも海賊版ゲーム基板対策に用いられた。TRONCHIPの原型にもなった。


V70

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V70(uPD70632GD-20)  ジャレコ メガシステム32実装例

V60を完全32bit化したCPU。TRONCHIPの開発の影響を受けており、ITRON等のRTOSに対応している。NTTの交換機に組み込まれたほか、業務用ゲーム基板に搭載されたり、パーソナルコンピュータX68000用の拡張CPUボードに搭載されると言った応用例がある。

V80

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CISC系としては最後のVシリーズ。V30エミュレーションを削除。一般にはほとんど出回らなかった。これ以降のNECの32bit以上のCPUはRISCの、MIPSアーキテクチャのVRシリーズと、後述のV800シリーズに移行。

RISC CPU

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RISCCPUが注目されるのに併せて、V800シリーズが開発された。Hennesy-Patterson本に見られる様な典型的な5段パイプライン構成を取る。主に組み込み用途に使用される。また、日本電気製の家庭用ゲーム機PC-FXにも用いられている。アセンブラレベルではV60~V80のプログラムを流用できるように配慮した。

V800

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最初のシリーズ。開発のきっかけは、ハードディスクの制御回路用途に適したマイクロコントローラとされる。実際の製品は、32ビットバスのV810と、16ビットバスのV805となった。また、PC-FXに採用されたCPUでもある。

V820

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V810,V805に対して周辺回路を集積した物。

V830

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V800に対して積和演算機能を追加し、演算性能を向上させたもの。マルチメディア対応。

V850

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現行の32ビットRISC系マイクロコントローラのコア。

V850E

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V850に対して、高級言語サポート命令を追加したもの。C言語のswitch文を効率良く処理する命令、スタックフレームをハンドリングする命令などが追加されている。尚、当初はV850Eと呼ばれていたが、後に性能向上版のV850E2が発表されてからは、V850E1と呼ばれる。

V850ES

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V850Eソフトウェアコンパチで設計をコンパクトにまとめ、コストを下げた物。

V850E2

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V850Eソフトウェアコンパチで、スーパースカラ化(2並列)、パイプライン段数を7段へ細分化、ロード・ストア機能の強化、など、パフォーマンス向上を目指したもの。

その他

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数値演算コプロセッサ

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V30用の数値演算コプロセッサも計画されていたが、製品としては実現されなかった。そのためV30を搭載したPC-9800シリーズにおいては、クロック比等を調整した上で8087を接続する手法が取られていた。

8ビットCPU

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μCOM82(μPD780、Z80相当品)のC-MOS版、μPD70008は、その型番や、証言から、非公式ながらV10ではないかとの説がある。

ファミリCPU

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