兵科元帥
兵科元帥 (1943年 - 1974年) | |||||
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軍隊 | ソビエト連邦軍 | ||||
創設 | 1943年 | ||||
階級 | 将官 | ||||
海軍 | - | ||||
NATO階級 | OF-9 |
兵科元帥 (ロシア語: Ма́ршал ро́да во́йск) は1943年から1974年にソビエト連邦軍に存在していた、別個に分かれている将校階級である。
しかし当時の兵科元帥は、赤軍と後のソ連軍では最低の元帥階級だった。NATOの階級では、OF-9(主に大将)相当でしかなかった[注 1]。
しかし、将校たちは簡単には兵科元帥にはなれなかった。それぞれの兵科で優秀で権威ある者のみが任命され、有能な者だけが巨大な編成権を持つ最高司令官の地位に着いていた。
概要と階級と序列
[編集]"兵科元帥"という言葉は当時のドイツ国防軍に存在していた兵科大将(General der Waffengattung) を翻訳借用したものである。 1943年1月16日に最初に創設された時は、航空、砲兵、戦車軍の元帥だけだった[注 2]:
- 航空元帥(маршал авиаций)
- 砲兵元帥(маршал артиллерии)
- 戦車軍元帥(маршал танковых войск)
1943年10月には、新たな階級として通信兵と工兵の兵科が追加された:
- 通信軍元帥(маршал войска связи)
- 工兵軍元帥(маршал иншенерых войск)
さらにこれらの最高階級として総元帥が創設された[注 3]:
- 航空総元帥(главный маршал авиаций)
- 砲兵総元帥(главный маршал артиллерии)
- 戦車軍総元帥(главный маршал танковых войск)
- 通信軍総元帥(главный маршал войска связи)
- 工兵軍総元帥(главный маршал иншенерых войск)
五つの兵科元帥と兵科総元帥はOF-9相当で創設された。
階級 | ||
下階級: 大将 (Генерал-полковник) |
上級大将 (Генерал армии) | |
兵科元帥 (Ма́ршал ро́да во́йск) |
上階級: 兵科総元帥 (Главный ма́ршал ро́да во́йск) |
階級章
[編集]兵科元帥の肩章には大きめの(幅50mm)五芒星が付いている(同じ時期のソビエト連邦元帥の肩章にもまったく同じ星が使用されていた)。同じく兵科元帥は小型の元帥星章を身につけていた。
兵科総元帥の創設時には肩章にある元帥星の大きさを、ソビエト連邦元帥の優位性を示す為に10mm小さくした。大型の元帥星章は兵科総元帥とソビエト連邦元帥の制服にのみ存在していた。
兵科元帥は階級的に上級大将よりも上位に位置していたが、兵科元帥と上級大将の扱いは明らかに同列だった(ただし上級大将が付けていた肩章は、元帥星ではなく四つの小さな星が付いていた)。兵科元帥、兵科総元帥および上級大将の位は西側の基準でいうOF-9相当であり、上級大将は元帥星を肩章や軍服に付けていなかった。しかし1974年に、上級大将にも40mmの元帥星付きの肩章と小型の元帥星章が与えられるようになった。
普通は兵科元帥が昇進する時は兵科総元帥になるが、どちらもソビエト連邦元帥に昇進することは可能だった。しかし1984年以後の兵科元帥は、航空元帥と砲兵元帥だけになり、後にこれらの元帥階級も贈与されることはなくなった。1993年にロシア連邦軍の改革が行われた時に、兵科元帥とその機能はすべて大将に統一された。残っていた砲兵元帥と航空元帥も上級大将に置き換えられ、兵科元帥の階級は完全に廃止された。
肩章
[編集]名称 | 兵科元帥 | ||||
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軍装 | 肩章 1943 – 1955 | ||||
礼装 | 肩章 1955 – 1974 | ||||
階級 | 砲兵元帥 | 航空元帥 | 戦車軍元帥 | 通信軍元帥 | 工兵軍元帥 |
エンブレム | |||||
NATO階級 | OF-9 |
兵科元帥の一覧
[編集]砲兵元帥
[編集]- ニコライ・ヴォロノフ; 1943年1月18日に任命 (1944年に総元帥就任)
- ニコライ・ドミートリエヴィチ・ヤーコヴレフ; 1944年2月21日就任、1952年-1953年中は剥奪
- ミハイル・チスチャコーフ; 1944年9月25日就任
- ミトロファン・ニェジェーリン; 1953年8月4日就任 (1955年に総元帥に就任)
- セルゲイ・ヴァレンツォーフ; 1955年3月11日就任(1961年に総元帥に就任)、1963年に少将に降格
- ヴァシーリー・カザコフ; 1955年3月11日就任
- コンスタンチン・カザコフ; 1962年4月28日就任
- ユーリー・バジャーノフ; 1965年6月18日就任
- パーヴェル・クレショーフ; 1967年10月28日就任
- ゲオルギー・オジンツォーフ; 1968年2月22日就任
- ゲオルギー・ペレジェーリスキー; 1973年11月5日就任
- エフィーム・ボイチューク; 1980年11月4日就任
- ウラジーミル・ミハールキン; 1989年2月15日就任
航空元帥
[編集]- アレクサンドル・ノヴィコフ; 1943年3月17日就任(1944年に総元帥に就任)
- アレクサンドル・ゴロヴァーノフ; 1943年8月3日就任(1944年に総元帥に就任)
- フョードル・アスターホフ; 1944年8月19日就任
- グリゴーリー・ヴォロジェーイキン; 1944年8月19日就任
- ニコライ・スクリプコー; 1944年8月19日就任
- フョードル・ファラレーエフ; 1944年8月19日就任
- セルゲイ・フジャコーフ; 1944年8月19日就任
- セミョーン・ジャーヴォロンコフ; 1944年9月25日就任
- コンスタンチン・ヴェルシーニン; 1946年6月3日就任(1959年に総元帥に就任)
- パーヴェル・ジーガレフ; 1953年8月3日就任(1955年に総元帥に就任)
- セルゲイ・ルジェーンコ; 1955年3月11日就任
- ウラジーミル・スジェーツ; 1955年3月11日就任
- スチェパン・クラソフスキー; 1959年5月8日就任
- エフゲニー・サヴィーツキー; 1961年5月6日就任
- フィリップ・アガリツォーフ; 1962年4月28日就任
- エフゲニー・ローギノフ; 1967年10月28日就任
- パーヴェル・クターホフ; 1969年就任(1972年に総元帥に就任)
- イヴァン・ボルゾーフ; 1967年10月28日就任
- アレクサンドル・ポクルィシュキン; 1972年12月16日就任
- ボリス・ブガーエフ; 1973年11月5日就任(1977年に総元帥に就任)
- ゲオルギー・ジミーン; 1973年11月5日就任
- アレクサンドル・エフィーモフ; 1975年4月29日就任
- イヴァン・プストィーゴ; 1975年4月29日就任
- アレクサンドル・シラーンチェフ; 1976年2月19日就任
- アレクサンドル・コルドゥノーフ; 1973年10月18日就任(1984年に総元帥に就任)
- グリゴーリー・スコーリコフ; 1980年11月4日就任
- ニコライ・スコモローホフ; 1981年11月2日就任
- ピョートル・キルサーノフ; 1982年12月16日就任
- アナトーリー・コンスタンチーノフ; 1985年4月30日就任
- イヴァーン・コジェドゥーブ; 1985年5月6日就任
- アレクサンドル・ヴォールコフ; 1989年2月15日就任
- エフゲニー・シャポシニコフ; 1991年8月26日就任
戦車軍元帥
[編集]- パーヴェル・ロトミストロフ; 1944年2月21日就任(1962に総元帥に就任)
- ヤーコフ・フェドレンコ; 1944年2月21日就任
- セミョーン・ボグダーノフ; 1944年1月1日就任
- パーヴェル・ルイバルコ; 1944年6月1日就任
- ミハイル・カトゥコフ; 1959年10月26日就任
- パーヴェル・ポルボヤーロフ; 1962年4月28日就任
- アマザスプ・ババジャニャン; 1967年10月28日就任 (1975年に総元帥に就任)
- オレグ・ローシク; 1975年4月29日就任
通信軍元帥
[編集]- イヴァン・ペレスィープキン; 1944年2月21日就任
- アレクセイ・イヴァーノヴィチ・レオーノフ; 1961年5月6日就任
- アンドレイ・ベローフ; 1973年11月5日就任
- ニコライ・アレクセーエフ; 1979年10月25日就任
工兵軍元帥
[編集]- ミハイル・ヴォロビョーフ; 1944年2月21日就任
- アレクセイ・プロシリャコフ; 1961年5月6日就任
- ヴィークトル・ハールチェンコ; 1972年12月16日就任
- アルチーリ・ゲロヴァーニ; 1977年10月28日就任
- セルゲイ・アガーノフ; 1980年5月5日就任
- ニコライ・シェストパーロフ; 1981年5月6日就任