光シート顕微鏡法
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光シート顕微鏡法(ひかりシートけんびきょうほう)とは、試料の側面から薄いシート状に整形した励起光を当てることでピントの合った画像(光学切片)を得る顕微鏡法。
概要
[編集]従来の共焦点顕微鏡や2光子顕微鏡では試料の正面から強い光を照射するため(落射照明)、胚等、反射率の低い生きた状態の細胞に悪影響を与える場合が少なからずあった。光シート顕微鏡法では光を側面から照射することにより、細胞への悪影響を抑えると共に、従来の照射法よりも深くまで照射できるため3次元の像を得るために適している[1]。生きた状態の細胞の観察では、光シート顕微鏡を使えば光毒性をあまり気にせず時間解像度を上げることができる一方、空間分解能については開口数(NA)の大きな対物レンズを使えないので共焦点顕微鏡には一歩譲る。深部観察能については、光シート顕微鏡では深部は暗くならないものの、焦点があわず、同一平面内であっても照射光がサンプルに入る場所以外では背景光の増加や縞状の影が発生して画質は劣化する[2]。
脚注
[編集]- ^ “マウス胚の体づくりの様子を高精度で捉えることに成功”. 基礎生物学研究所 (2013年7月16日). 2018年12月30日閲覧。
- ^ “ライトシート顕微鏡”. 生命時空間制御グループ. 2018年12月30日閲覧。
参考文献
[編集]- 野中茂紀「光シート顕微鏡 : 生体観察のための新しい顕微鏡法」『顕微鏡』第47巻第3号、日本顕微鏡学会、2012年9月、163-166頁、doi:10.11410/kenbikyo.47.3_163、ISSN 13490958、NAID 10031121401。
- 野中茂紀「光シート顕微鏡を用いた解析 (特集 顕微鏡で物を見ることの新しい動き)」『生体の科学』第64巻第6号、金原一郎記念医学医療振興財団 ; 1949-、2013年11月、589-594頁、ISSN 0370-9531、NAID 40019925997。
- 今井猛「組織透明化試薬を用いた生体試料の深部イメージング技術 (光散乱制御のためのニューテクノロジー)」『光学』第43巻第11号、応用物理学会分科会日本光学会、2014年11月、524-526頁、ISSN 0389-6625、NAID 40020266306。
- 野中茂紀「3SDA-04 光シート顕微鏡による生体まるごとイメージング(ラマン顕微分光および先端光計測が拓く生物物理の視界,シンポジウム,第52回日本生物物理学会年会(2014年度))」『生物物理』第54巻第1号、日本生物物理学会、2014年、S139、doi:10.2142/biophys.54.S139_2、ISSN 0582-4052、NAID 110009932215。
- Chen, Bi-Chang, et al. "Lattice light-sheet microscopy: imaging molecules to embryos at high spatiotemporal resolution." Science 346.6208 (2014): 1257998.
- 野中茂紀. "光シート顕微鏡の展望." 生体の科学 68.5 (2017): 412-413.