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元禄八犬伝

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
元禄八犬伝
著者 田中啓文
発行日 2020年
ジャンル 時代小説
次作 浮世奉行と三悪人
ウィキポータル 文学
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元禄八犬伝』(げんろくはっけんでん)は、田中啓文による時代小説

内容

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作者が幼少時に見たNHK新八犬伝』の悪役を主人公に、時代を元禄期に移行させて換骨堕胎したのが本作である。また、主人公トリオと捕縛に命を懸ける大坂奉行所与力は『ルパン三世』を意識している[1]

物語

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さもしい浪人・網乾左母二郎は大坂で、鴎尻の並四郎、妖婦・船虫の二人とその日暮らしを送っている。一方、犬公方こと徳川綱吉は全国から異能の侍「八犬士」を選りすぐり、失踪した綱吉の娘・伏姫探索のため大坂に派遣する。

登場人物

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各登場人物のうち、実在の人物における歴史的事項・史実との違い等については当該記事を参照。

主人公たち

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  • 網乾左母二郎(あぼし さもじろう)
    自称さもしい浪人。黒羽二重の単衣で右頬に縦の刀傷がある。元禄期の大坂に住む。
  • 鴎尻の並四郎(かもめじりのなみしろう)[2]
    若旦那風の町人だが正体は義賊「かもめ小僧」。大阪弁で話す。
  • 船虫(ふなむし)
    お金好きの年増女。髪を無造作に束ね丸いかんざしを挿す。

宿敵

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  • 滝沢鬼右衛門(たきざわ おにえもん)
    奉行所の与力。かもめ小僧を捕らえるのが生きがいのごつい男。
    悩殺する旦開野の色香によろめく。

八犬士

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  • 犬塚信乃
    母親によりとして育てられた女装の犬士。艶やかな振袖を着た色白で別嬪のお嬢様。女の髪型で女言葉で話す。
    長い髪は地毛で常に女の装いをしているが、丶大法師との愛人関係を左母二郎に疑われると一笑に付したり、並四郎に暴力を振るうなど男性には厳しい。
  • 犬山道節
    石川五右衛門のような大百日鬘で、鎖帷子を着込んだ大男。火遁の術使い。
    信乃の許嫁・浜路の異母兄。信乃の愛刀「村雨丸」を届けに大坂に上ってきた。
  • 犬飼現八
    太い眉毛にどんぐりまなこの大酒のみ。酔っぱらうとおかしな犬の歌をがなる。
  • 犬川額蔵
    真面目一途の剣豪。突きを得意とする。目下にも敬語を使う。
  • 犬塚毛野/旦開野(あさけの)
    くのいちや踊り子、脚を露出した女軽業師、総髪(そうがみ)の女武者などに扮する、信乃と同様に女装の犬士。男のなりでも化粧や香水により男装の麗人に見える。
    男には薄情な信乃とは反対に、女としての色仕掛けを得意とする。相手が女でも誘惑する。
  • 犬村角太郎
    陰陽師か山伏のようななりの侍。が苦手。
  • 犬田小文吾
    相撲取りに見まがう太った体格で筋肉が盛り上がった巨漢。
  • 犬江親兵衛
    十歳に満たぬ子供だが大人びた物言いをする。
  • 丶大法師
    本名は金碗大輔。八犬士の取り纏め。墨染の衣で錫杖をふるう。

悪役

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  • 宝晋斎其角(ほうしんさい きかく):第一話「通し矢と矢数俳諧」の悪役
    俳諧師。
  • 真白衆(ましろしゅう):第二話「真白山の神隠し」の悪役
    真白山の山賊。
  • 啞面坊洞穴(あめんぼう どうけつ):第三話「三人淀屋」の悪役
    えべっこく寺の住職。
  • 丸砂鉄之介(まるさ てつのすけ):第四話「仇討ち前の仇討ち」の悪役
    元赤穂藩の浪人。
  • 水無瀬屋銀十郎(みなせや ぎんじゅうろう):第五話「歯噛みする門左衛門」の悪役
    芝居小屋の座頭。
  • 美濃口逸ノ丞(みのぐち いつのじょう):第六話「眠り猫が消えた」の悪役
    熊本藩士。化け猫と化した赤岩一角(角太郎の父)の旧友。
  • 中山時春(なかやま ときはる):第七話「天から落ちてきた相撲取り」の悪役
    大坂町奉行。分担地域のある鬼右衛門の上司とは異なり、遊軍的存在。
  • 天野屋利兵衛(あまのや りへい):第八話「さらわれた少年犬士」の悪役
    大坂の廻船問屋。
  • 山寺信雄(やまでら のぶかつ):第九話「調伏大怨霊」の悪役
    水戸藩家老。
  • 堀部安兵衛(ほりべ やすべえ):最終話「討ち入り奇想天外」の悪役
    元赤穂藩の浪人。吉良邸討ち入りを主張する。
    主人公たちに脚を斬りつけられ、討ち入りに参加できず、気絶した体を泉岳寺の境内に投棄された。

その他

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  • 吉良上野介(きら こうずけのすけ)
    天皇親政を復活させんと願う高家。
  • 水戸黄門(みと こうもん)
    怨霊となって吉良に取り憑き、天皇陛下から倒幕の密勅を得ようと目論む。

脚注

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  1. ^ 末國善己「解説」327頁(『さもしい浪人が行く』集英社、2020年)
  2. ^ 馬琴原作では船虫の最初の夫として登場(『南総里見八犬伝』「対牛楼の仇討ち」より、小文吾の盗賊退治)

関連項目

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