仲岡しゅん
なかおか しゅん 仲岡 しゅん | |
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生誕 |
仲岡 駿[1] 1985年8月(39歳)[2] 日本 大阪府河内長野市 |
出身校 |
大阪市立大学法学部卒業 関西大学法科大学院修了 |
職業 |
弁護士 関西大学人間健康学部客員教授 |
公式サイト | うるわ総合法律事務所 |
仲岡 しゅん(なかおか しゅん、本名:仲岡駿[1]、1985年8月 - [2])は、日本の弁護士。うるわ総合法律事務所代表、大阪弁護士会所属[3]。関西大学人間健康学部客員教授[4]。MtFトランスジェンダー[注 1]当事者として、性的少数者の人権問題などに取り組む[10][11]。自治体、企業、学校などでの講演も多い[12]。著書に北樹出版「ふらっとライフ」(共著)ほか[13]。
経歴
[編集]1985年、大阪府河内長野市生まれ[2][14]。大阪府立生野高等学校、大阪市立大学法学部卒業[14][1]。2010年、関西大学法科大学院修了[14][1]。知的障がい者ヘルパー、学童保育指導員などを経験[1][4]。
2014年に司法試験に合格[15]。戸籍上は男性だが、2015年に女性弁護士として大阪弁護士会に登録[16][17][18]。MtFトランスジェンダーを公表し、性別適合手術を受けた[6]。身体も女性化しているため、戸籍を女性に変えることも出来るが、「変えられずにもがいている人たちと一緒にいたい」ため、戸籍は男性のままにしている[6]。
大阪市内の法律事務所2カ所で勤務後、2018年4月に独立[4][19]。「うるわ総合法律事務所」を開設し[4][19]、DVやセクシュアルハラスメントなどジェンダーに関する法律問題に多く対応する[4][13][20]。会社におけるSOGIハラスメントや[6]、トランスジェンダーである人とその子どもの親子関係、本人の同意なく性的指向や過去の性別を第三者に暴露する「アウティング」など、性的少数者の権利をめぐる裁判で代理人をつとめてきた[5][16][21]。全国各地の自治体や学校、企業などでの講演も多い[13][6]。性的少数者の権利擁護について自治体や企業などへの助言も行う[22]。
2017年度に、女性自身でコラム「あんたのトラブルしばいたる!!」を連載[4][14]。2019年 - 2021年3月、MBS『ミント!』のレギュラーコメンテーター、NHK『バリバラ』『ハートネットTV』など、メディアにも出演[23]。2018年4月から、関西大学人間健康学部の客員教授[4][24]。2023年12月1日から、朝日新聞デジタル「コメントプラス」コメンテーターの1人[25][13]。
MtFに対するデマの否定
[編集]「トランス女性(MtF、出生時は男性と割り当てられたが、女性としての性同一性をもつ人)の存在を認めると、女性用のトイレや浴場などに、女装した男性が入ってくる」という主張に対し、「ある男性が、『自分は女だ』と言いさえすれば、直ちにあらゆる女性用の場を使えるかのような想定が、そもそも日本の法律実務からすれば荒唐無稽なものでしかない」「トランスジェンダーは、長い時間をかけ、その人の性別のあり方を根本的に切り替えていくもの」「ほとんどの当事者は体を変えないまま銭湯などで女湯に入ることを望んでもいない」と否定し[22][26][27]、「トランスジェンダーは、決してこの社会を破壊しようとするモンスターではない。ネット上で交わされる偏った情報に惑わされることなく、落ち着いて考えてほしい」と話している[28][21][20][29]。
誹謗中傷・脅迫の被害
[編集]トランスジェンダーを公表し、トランスへの誤った情報を正そうと積極的に発信することで、殺害予告や名誉毀損など、様々な攻撃を受けてきた[12][22][30]。
誹謗中傷被害
[編集]2021年7月、大阪府茨木市在住の女性にTwitterで何度もデマを流したり中傷を繰り返され[31]提訴した[32][21]。2023年8月、大阪地裁は仲岡の訴えを認め、中傷した女性に対し慰謝料80万円の支払いを命じた[32][21]。
脅迫被害
[編集]2023年6月、「男のクセに女のフリをしている」などの中傷や「メッタ刺しにして殺害する」などの殺害予告が届き、警察に被害届を出した[10][30][33]。この事件を受けて、大阪弁護士会や自由法曹団など20を超える弁護士団体が、ヘイトクライムであると非難声明を発表した[34][35][36]。10月、メッセージを送った男が逮捕された[37]。裁判で男は「LGBT法で変態が女性スペースに入ってくるのはデマだ」という仲岡の主張を暴力で押さえつけたかったと動機を語った[30][38]。2024年1月、大阪地裁(角田康洋裁判官)は「身勝手な考え」だとして、脅迫の罪で懲役10カ月の実刑判決を言い渡した[39][11]。しかし、その後も模倣犯による脅迫や嫌がらせが相次いでいる[39][40]。
著書・論文
[編集]- 『川西市広報紙』人権コラム「生きる」連載、2016年
- 『LGBTsの法律問題Q&A』分担執筆、大阪弁護士会:著、2016年、LABO
- 『女性自身』「あんたのトラブルしばいたる!!」2017年度連載、光文社
- 『ふらっとライフ』共著(担当範囲:第5章「トランスジェンダー・ライフ」)、2020年4月、北樹出版
ほか
出演番組
[編集]テレビ番組
[編集]- 『ハートネットTV』(NHK、2019年)[23]
- 『ミント!』( MBS、2019年 - 2021年3月) - 水曜レギュラー[23]
- 『バリバラ〜障害者情報バラエティー〜』「多様性フェイクニュース」(NHK、2021年4月)[41]
- 『報道ステーション』(テレビ朝日、2022年6月)[3]
ラジオ
[編集]- MBSラジオ「松井愛のすこ〜し愛して★」(2019年 - 現在) - 不定期出演[23]
脚注
[編集]注釈
[編集]出典
[編集]- ^ a b c d e “きみはこれからなにをする? 第2回 法学部卒 仲岡駿さん”. Hijicho 大阪市立大学新聞 (2015年4月18日). 2024年3月11日閲覧。
- ^ a b c “「社会の隅に置かれた人のよりどころになるよう戦う」戸籍上は男性の女性弁護士、仲岡(なかおか)しゅんさん(32)”. 産経WEST. 2021年10月20日閲覧。
- ^ a b “連続講座「ネット差別と対抗運動」 第1回 仲岡しゅん氏「消えるオンラインとオフラインの境界:トランスジェンダーへのヘイトを事例に」”. Peatix (2023年7月30日). 2024年3月11日閲覧。
- ^ a b c d e f g “プレスリリース◆関西大学 人間健康学部・仲岡しゅん客員教授講演会を開催◆戸籍上は男性の敏腕女性弁護士が性にまつわる問題を語る「多様な性と生き方の尊重~LGBTsのいきづらさと、あなたのいきづらさ~」(Digital PR Platform)”. 毎日新聞 (2018年10月11日). 2024年3月11日閲覧。
- ^ a b “「手術をしないと性別変更できない」は憲法に違反するか #性のギモン”. Yahoo!ニュースオリジナル (2023年6月3日). 2024年3月11日閲覧。
- ^ a b c d e “LGBTの法律問題を考える 〜トランスジェンダーと性同一性障害特例法を中心に〜講師:仲岡しゅん氏”. マガジン9 (2023年11月29日). 2024年3月11日閲覧。
- ^ “「トランスジェンダー」か「性同一性障害者」か 日本ファクトチェックセンターの表記の理由”. 日本ファクトチェックセンター(JFC) (2023年12月19日). 2024年1月7日閲覧。
- ^ 浅井春夫、遠藤まめた、染矢明日香、田代美江子、松岡宗嗣『Q&A多様な性・トランスジェンダー・包括的性教育:バッシングに立ちむかう74問』大月書店、2023年12月20日。ISBN 978-4272350629。
- ^ “トランスジェンダーの方の中にも 様々な状況の方がいます。” (PDF). 愛知県. 2024年1月7日閲覧。
- ^ a b “トランスジェンダー公表 大阪の弁護士に中傷や殺害予告”. NHK (2023年6月5日). 2024年3月11日閲覧。
- ^ a b “「めった刺しにしてやる」トランスジェンダー公表の弁護士に殺害予告 男に懲役10カ月の実刑判決 「裁判の中で『二度としない』と言ったことを忘れないでください」と裁判官”. 関西テレビ (2024年1月11日). 2024年3月11日閲覧。
- ^ a b “仲岡しゅんさんが語るトランスヘイトの現実 問い直すべきものは何か”. 朝日新聞 (2023年9月27日). 2024年3月11日閲覧。
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- ^ “LGBTセクシャルマイノリティへの理解を深めるために” (PDF). 泉佐野市 (2019年10月20日). 2024年3月11日閲覧。
- ^ a b “「勝つまで闘い続けますよ」性的少数者を法的に支える 弁護士・仲岡しゅん”. AERA (2022年11月15日). 2024年3月11日閲覧。
- ^ “トランスジェンダーの弁護士に殺害予告 「ヘイトだ」と捜査求める”. 朝日新聞 (2023年6月5日). 2024年3月11日閲覧。
- ^ “トランス脅迫はヘイトクライム 当事者の弁護士「捜査を」”. 神奈川新聞 (2023年6月6日). 2024年3月11日閲覧。
- ^ a b “「男女の狭間」で不平等と闘う弁護士 仲岡しゅんさん”. ふぇみん (2019年3月5日). 2024年3月11日閲覧。
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- ^ “法律実務の現場法律実務の現場から「TERF」論争を考える(後編) 仲岡しゅん「TERF」論争を考える(前編) 仲岡しゅん”. Women's Action Network (2020年8月28日). 2024年3月11日閲覧。
- ^ “第21回 学生スタッフレポート”. 津田塾大学. 2024年3月11日閲覧。
- ^ “仲岡しゅん弁護士寄稿 トランスジェンダー「モンスター」という偏見”. 朝日新聞 (2023年6月23日). 2024年3月11日閲覧。
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- ^ “ツイートに対して内容証明郵便書が来ました。”. よもぎもちNovo (2021年11月10日). 2024年3月11日閲覧。
- ^ a b “トランスジェンダー公表の弁護士をSNSで中傷 “主張・発言を捏造” 投稿女性に慰謝料80万円の支払い命じる判決 大阪地裁”. MBSニュース (2023年8月7日). 2024年3月11日閲覧。
- ^ “トランスジェンダー弁護士に殺害予告 「メッタ刺しに」―大阪”. 時事通信社 (2023年6月5日). 2024年3月11日閲覧。
- ^ “トランスジェンダーの弁護士を脅迫した男に懲役1年6ヵ月が求刑”. OUT JAPAN (2023年12月21日). 2024年3月11日閲覧。
- ^ “2023年6月6日、「トランスジェンダーの弁護士に対する殺害予告に断固抗議し、ヘイトクライムを許さず、性的マイノリティに対する差別の根絶を目指す声明」を発表しました”. 自由法曹団 (2023年6月6日). 2024年3月11日閲覧。
- ^ “トランスジェンダーの会員弁護士に対する差別的言辞を以ての殺害予告を強く非難する会長声明”. 大阪弁護士会 (2023年6月6日). 2024年3月11日閲覧。
- ^ “「トランスジェンダー」公表の仲岡しゅん弁護士殺害予告メール、送信疑いで東京の男逮捕”. 読売新聞 (2023年10月11日). 2024年3月11日閲覧。
- ^ “「男のクセに女のフリ」「メッタ刺しにして殺害」 トランスジェンダー公表の弁護士を脅迫 無職の39歳男に実刑判決”. ABCニュース (2024年1月11日). 2024年3月11日閲覧。
- ^ a b “「めった刺しに」「家族に硫酸334Lをかけ…」仲岡弁護士に殺害予告、さらに模倣犯も 仲岡弁護士「匿名化ツールを使っても捕まる」「模倣犯達は自分の力を過信している」”. ABEMA TIMES (2024年2月4日). 2024年3月11日閲覧。
- ^ “仲岡しゅん弁護士に対する殺害予告事件について”. うるわ総合法律事務所 (2024年1月26日). 2024年3月11日閲覧。
- ^ “バリバラ「多様性フェイクニュース」”. ザテレビジョン. 2024年3月11日閲覧。
外部リンク
[編集]- うるわ総合法律事務所
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