人間の土地
『人間の土地』(にんげんのとち)は、1939年にフランスで出版されたアントワーヌ・ド・サン=テグジュペリによるエッセイ集。飛行士としての15年間の経験を基に巧みな筆致で語るエッセイで、極限状態での僚友との友情や、人間らしい生き方とは何か、が主題となっている。出版の同年にアカデミー・フランセーズ小説大賞を受賞した。
主に語られているのは1926年以降の郵便飛行士としての経験で、作者はラテコエール社での僚友アンリ・ギヨメに同書を捧げている。
フランス語の原題 Terre des hommes は、著者が書き残した戯画等を考え合わせると、直訳すれば「人間達の地球」という意味であると思われる。東欧圏では「人びとの惑星」と訳すのが一般的である。アメリカ版の題は Wind, Sand and Stars となっている。
2000年にみすず書房から出版された山崎庸一郎訳のもの、および2015年に光文社から出版された渋谷豊訳のものの邦題は、『人間の大地』となっている。
構成
[編集]※(各章のタイトルは、新潮文庫版より引用)
- 序文
- 人間の使命について。
- 1 定期航空
- 作者がラテコエール社に入社したばかりの駆け出しの飛行士であったころの思い出。
- 2 僚友
- 勇敢な僚友たちの思い出をふり返り、人間らしい生き方について語る。
- 3 飛行機
- 技術の進歩とは何を意味するかについて。この章は一貫してギヨメへと語りかける形式で書かれている。
- 4 飛行機と地球
- 飛行機がはじめて見せる地球の姿について。
- 5 オアシス
- アルゼンチンで招待された、おとぎ話のような一軒家での出来事について。
- 6 砂漠で
- サハラ砂漠での現地民との交流について、砂漠の魅力について。
- 7 砂漠のまん中で
- リビア砂漠にて墜落・遭難し、奇跡的に生還した経験について。
- 8 人間
- 人間の本質とは何か、なぜ挑戦し続けるのかについて。
他作品との関連
[編集]この作品で描かれる飛行士としての経験は、作者の他の作品にも大きな影響を与えている。
夜間飛行
[編集]「定期航空」や「僚友」には、果敢に新航路を開発する僚友や、親友が消息不明になった経験、服務規程を徹底する支配人など、『夜間飛行』の原型になったと思われるエピソードが多数描かれている。
星の王子さま
[編集]『星の王子さま』の主人公はサハラ砂漠の単独飛行中に不時着しているが、この元になったと思われる「砂漠のまん中で」は、リビア砂漠(サハラ砂漠の一部分。エジプトとリビアにまたがる)での遭難体験(1935年12月。墜落地点はカイロ西方200km)である。これとは別に1927年2月、サハラ西部に不時着し、2日後にギヨメに救出されるという体験もしている。
南方郵便機
[編集]「砂漠で」のエピソードのうちいくつかは、『南方郵便機』にそのまま挿入されたものだと作者自身が『人間の土地』の中で語っている。