京急デチ15・16形電車
京急デチ15・16形電車 | |
---|---|
デト17形(手前側の車両)・18形に改造後の姿 | |
基本情報 | |
製造所 | 東急車輛製造 |
主要諸元 | |
編成 | 2両編成 |
軌間 | 1435(標準軌) mm |
電気方式 |
直流1,500V (架空電車線方式) |
起動加速度 | 2.7[2] km/h/s |
減速度(常用) | 4.0[3] km/h/s |
車両重量 | 32.0t[1] |
全長 | 18,000[1] mm |
全幅 | 2,718[1] mm |
全高 |
デチ15形 : 3,929mm[1] デチ16形 : 4,050[1] mm |
主電動機 | 補償巻線付き直巻電動機[1] |
主電動機出力 | 75kW×4[4] |
駆動方式 | 中空軸撓み板式軸型継手[4] |
歯車比 | 77:14 (5.5)[5] |
制御装置 | 電動カム軸式直並列複式 抵抗制御[1] |
制動装置 | 発電ブレーキ併用電磁直通ブレーキ(応荷重装置付き)[1] |
保安装置 | 1号型ATS、C-ATS |
備考 | 荷重18t、製造時のデータ |
デチ15・16形電車(デチ15・16がたでんしゃ)は、1988年(昭和63年)12月に登場した京浜急行電鉄の事業用電動無蓋貨車[4]。
概要
[編集]自動ブレーキ (AMM-R) 装備車を全廃し、ブレーキ性能を統一してATSを改良するため[6]、デワ40形・チ60形の置き換え用として1000形の廃車発生部品を活用し新造された[4]。1989年(平成元年)までにデチ15 - 18の4両が製造されたが、配給車の需要減少により[7]2003年(平成15年)・2006年(平成18年)に救援車化改造を受けデト17・18形デト15 - 18に改番された[8][9]。母体となった1000形が全廃されたため、2010年度に1500形VVVF化改造で発生した部品などを活用した機器の更新が行われた。
当形式の登場により、電動貨車のデワ40形4両(デワ41 - 44)とチ60形2両(チ61・62)が廃車された[4]。限流値[注釈 1]を引き下げ、起動加速度は1000形より低い2.7km/h/sとなっている[2]。
車体
[編集]重量物運搬のため魚腹式台枠を採用[10]。前面非貫通折妻三枚窓構成の運転台[4]、6人分の座席、窓1枚をもつ有蓋室がデチ15形の浦賀寄り、デチ16形の品川寄りに設けられたが、長尺物運搬のため荷台部分を広く取る必要性から、有蓋部分はデト11・12形より短くなっている[11]。また、パンタグラフ、列車無線アンテナ搭載のため屋根が荷台部分に1,600mm延長されている[11]。有蓋室は黄色に塗装され、窓下に赤い帯が巻かれる[11]。有蓋室のない部分は荷台とされ、資材積み下ろし用にチ60形から転用したホイストクレーンを搭載している[4]。台枠は有蓋室と同じ黄色に塗装されている[11]。有蓋室の荷台側妻面には荷台に出るための扉、投光器が設けられた[6]。最大積載量18.0t[1]。デチ15形に電動発電機・空気圧縮機などの補機類と列車無線アンテナを、デチ16形にパンタグラフ・主制御器を搭載する[1]。デト15形の車両番号の位置は、デト11・12形よりもやや低い位置になっている。
主要機器
[編集]- 集電装置 : 東洋電機製造製PT-43系菱形パンタグラフ[12]
- 台車 : TS-310A (15・16)[4]、TS-310B (17・18)[13](東急車輛製造製、コイルばね、鋼板溶接ウイングばね式)[13]
- 主制御器 : 電動カム軸抵抗制御方式、東洋製ACDF-H875-566B[11]
- 主電動機 : 東洋製TDK-815-A(デチ15・16)[4]、TDK-810/6H(デチ17・18)(75kW)[11]
- 駆動方式・歯車比 : 中空軸撓み板式軸型継手、77:14 (5.5)[5]
- 補助電源装置 : 三菱電機製 MG-131 (AC 7.5kVA)[11]
- 制動方式 : 電磁直通ブレーキ (HSC-D)[1]
- 空気圧縮機 : レシプロ式(A-2、吐出量700l/min)[11]
デチ15・16には1988年(昭和63年)廃車のデハ1097・1098、デチ17・18には同年廃車のデハ1017・1018[11]と1989年廃車のデハ1001・1004の部品が活用されている[14]。
改造工事
[編集]登場後、各種の改造が行われている。
制御器交換
[編集]デチ18の主制御器は1998年5月20日付で、デチ16の主制御器は2000年4月6日付でACDF-H875-703Bに変更された[15]。
デト17・18形への改造
[編集]2003年3月[8]にレール運搬を専用の機械で行うことが増え、稼働率が低下したデチ17・18を救援車に改造、デト17・18形デト17・18に改番した[2]。ホイストクレーンを撤去、荷台にデト11形などと同様のあおり戸を設け、救援資材の入った箱を搭載した[7]。2006年(平成18年)3月にデチ15・16にも同様の改造が行われ、デト17・18形デト15・16となった[9]。
界磁チョッパ制御化改造
[編集]2010年(平成22年)6月にデト17・18、2011年(平成23年)3月にデト15・16に運転取扱、使用機器の統一、省令改正への対応のための機器更新工事が施工された[16][17]。前灯形状が変更され[18]、偶数番号車運転台から設定する運行番号表示器を設置[19]、運転台・荷室に冷暖房が搭載されたほか[19]、運転台は800形タイプのワンハンドルマスコンとなった[19]。改造後の主な使用機器は以下の通り。
- 集電装置 : 東洋電機製造製PT-7117-Aシングルアームパンタグラフ[16]
- 台車 : TH-1500M(車体直結空気ばね乾式ゴム入り円筒案内方式)[16]
- 主制御器 : 回生制動式電動カム軸界磁チョッパ方式、東洋製AS-786-B-M[16]
- 主電動機 : 東洋製TDK-8700-A (100kW)[16]
- 駆動方式・歯車比 : TD継手式平行カルダン[16]、82:15 (5.47)[20]
- 補助電源装置 : 三菱電機製 NC-SAT30A[16]
- 制動方式 : 回生制動併用電気指令式電磁直通空気制動 (MBS-R)[16]
- 空気圧縮機 : ロータリー式(AR-2[16]、吐出量2000l/min[21])
脚注
[編集]注釈
[編集]出典
[編集]- ^ a b c d e f g h i j k 『鉄道ピクトリアル』通巻677号p65
- ^ a b c 京急の車両p94
- ^ 『京急1000形半世紀のあゆみ』p83
- ^ a b c d e f g h i 『鉄道ピクトリアル』通巻518号p69
- ^ a b 『京急の車両』p107
- ^ a b 『鉄道ピクトリアル』通巻518号p68
- ^ a b 『鉄道車両年鑑2003年版』p116
- ^ a b 『鉄道車両年鑑2003年版』p212
- ^ a b 『鉄道車両年鑑2006年版』p212
- ^ 『鉄道ピクトリアル』通巻656号p255
- ^ a b c d e f g h i 『鉄道ピクトリアル』通巻656号p256
- ^ 『京急の車両』p112
- ^ a b 『京急の車両』p109
- ^ 『京急1000形半世紀のあゆみ』p184
- ^ 『京急の車両』p142
- ^ a b c d e f g h i 『鉄道車両年鑑2011年版』p166
- ^ 『鉄道車両年鑑』2011年版p215
- ^ 『鉄道ファン』通巻592号p69
- ^ a b c 『鉄道車両年鑑2011年版』p167
- ^ 『鉄道車両年鑑2011年版』p185
- ^ 『京急1000形半世紀のあゆみ』p51
参考文献
[編集]書籍
[編集]- 佐藤良介『JTBキャンブックス 京急の車両 現役全形式・徹底ガイド』JTBパブリッシング、2004年。ISBN 9784533055461。
- 佐藤良介『JTBキャンブックス 京急1000形半世紀のあゆみ』JTBパブリッシング、2011年。ISBN 9784533082177。
雑誌記事
[編集]- 『鉄道ピクトリアル』通巻518号(1989年10月・電気車研究会)
- 小暮 洋「私鉄車両めぐり 138 京浜急行電鉄 補遺」 pp. 62-71
- 『鉄道ピクトリアル』通巻656号「特集 京浜急行電鉄」(1998年7月・電気車研究会)
- 園田 淳「私鉄車両めぐり 160 京浜急行電鉄」 pp. 209-259
- 『鉄道ピクトリアル』通巻677号(1999年11月・電気車研究会)
- 園田 淳「私鉄車両めぐり 160 京浜急行電鉄 補遺」 pp. 54-65
- 『鉄道ピクトリアル』通巻738号「鉄道車両年鑑2003年版」(2003年10月・電気車研究会)
- 岸上 明彦「2002年度民鉄車両動向」 pp. 109-130
- 「各社別新造・改造・廃車一覧」 pp. 208-219
- 『鉄道ピクトリアル』通巻738号「鉄道車両年鑑2006年版」(2006年10月・電気車研究会)
- 岸上 明彦「2005年度民鉄車両動向」 pp. 118-140
- 「各社別新造・改造・廃車一覧」 pp. 205-220
- 『鉄道ファン』通巻592号(2010年8月・交友社)
- 「京浜急行電鉄新1000形10次車」 pp. 69
- 『鉄道ピクトリアル』通巻855号「鉄道車両年鑑2011年版」(2011年10月・電気車研究会)
- 安田 直樹「デト17・18チョッパ制御化改造」 pp. 166-167
- 「民鉄車両諸元表」 pp. 185-186
- 「各社別新造・改造・廃車一覧」 pp. 210-222