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乗数・加速度モデル

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
乗数加速度モデルから転送)

乗数・加速度モデル(じょうすうかそくどモデル、: Multiplier–accelerator model)とは、景気循環を説明するモデルである。ハンセン=サミュエルソンの乗数・加速度モデルとも呼ばれる。ポール・サミュエルソンSamuelson, P.A. (1939))が発表し、J. R. ヒックスHicks, J.R. (1950))が発展させた。発展させたものはサミュエルソン=ヒックスの乗数・加速度モデルと呼ばれる。

概要

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乗数・加速度モデルは乗数原理と加速度原理を合わせ、景気循環を説明しようというものである。以下はサミュエルソンによる乗数・加速度モデルである[1][2]

(1)
(2)
(3)

ただし、

  • : GDP
  • はt期の消費。は基礎消費。
  • はt期の投資。は独立投資。
  • : 消費性向
  • : t期(時間)
  • : 加速度係数

をそれぞれ指す。

ここで、(1)はt期の国民所得が消費されるか投資されるかのいずれかであることを示している。(2)はt期の消費がどのように決定されるかを示している。(3)はt期の投資がどのように決定されるかを示している。(3)式は加速度原理を表している[3]

(1)、(2)を(3)に代入すると、

(4)

という2階差分方程式を得る。これを(4)式とする。

とおいて、(4)式を整理すると、

(4')

(4')式の不動点を求めると、

(5)

これを(5)式とする。

(4')式の特性方程式は、

(6)

この特性方程式を(6)式とする。(6)式の判別式をDとすると

よって、が正のとき実根が存在し、負のとき複素根が存在する。 (6)式の特性根は

このモデルで示される経済は、(6)式の特性根が実根の場合、時間とともに単調に発散するか、単調に不動点に収束することになる。このモデルで示される経済は、(6)式の特性根が複素根の場合、変動が存在する。 複素根が存在するとして、これらの複素根を

と置く。さらに、特性根の絶対値をとすると、

となる。これらの式から、

同次部分の一般解を求めると、

(6)式の特性根の式から、

なので、

となる。このとき、ならば解の軌道は時間とともに振動しながら不動点に収束し、ならば解の軌道は時間とともに振動しながら発散する[4]

このサミュエルソンの乗数・加速度モデルの特性方程式が複素根を持つ場合に対して、J. R. ヒックスは床と天井の概念を導入した[4]

脚注

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関連項目

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参照文献

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  • 西垣泰幸「非線形動学理論と経済成長,景気循環:展望」『龍谷大学経済学論集』第45巻第4号、龍谷大学経済学会、2006年3月、75-100頁、hdl:10519/4233ISSN 09183418NAID 110005859236 
  • 森誠「乗数・加速度原理と景気循環:2階差分方程式と位相図」『経済学雑誌.別冊』第100巻第1号、大阪市立大学経済学会、1999年4月、46-51頁、ISSN 04516281NAID 40000854640 
  • Hicks, J.R. (1950). “A Contribution to the Theory of the Trade Cycle”. Oxford University Press (Oxford): 95-100. 
  • Samuelson, P.A. (1939). “Interactions between the multiplier analysis and the principle of acceleration”. Review of Economic Statistics 21: 75-78.