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ヴェデットボーツ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ヴェデットボーツ(Vedettbåt
1932年建造のイェーガレン(V21→V41)
魚雷艇T47時代のエーレグルンド(V05)
掃海艇時代のテルネ(V52)
類別変更後のイェーガレン(V150)
類別変更を検討されているストックホルム

ヴェデットボーツスウェーデン語: Vedettbåt)は、スウェーデンで運用される艦艇の一種。機雷戦能力を有する哨戒艇掃海艇よりも速力で勝り、機雷戦に加えて船舶の護衛や捜索救難任務をこなす艦種である[1][2]

1930年代に掃海艇と哨戒艇の双方の任務を果たせる艦艇としてスウェーデン海軍に配備されたが、任務の分離に伴い一旦姿を消した[2]。その後、主として改造による類別変更により運用が行われている。

歴史

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旧式化した1:a型魚雷艇の内、1921年にコメツ(Komet)級11隻、1928年にはプリヤード(Plejad)級16隻に掃海能力を付与する改装を行い、類別変更を行った[3]

1932年から1934年にかけてイェーガレン級Jägaren)4隻が新たに建造された。第二次世界大戦後の1957年には[注 1]、Snapphanenがグアテマラ海軍に売却され、ホセ・フランシスコ・バルンディア(José Francisco Barrundia)となり、作戦能力は1964年以降失われたとみられるものの、1979年の解体まで艇体は現存した[4][5][6]。イェーガレン級は1959年に除籍され、スウェーデン海軍からは一旦姿を消すことになった[3]

それに先立つ1953年、スウェーデン沿岸砲兵隊[注 2]向けの哨戒艇としてV57が建造された。翌年就役したV57は、機雷敷設設備を有する基準排水量115tの大型艇であったが、建造は1隻に留まり、後継は20mm機関砲を有するのみの哨戒艇となった[7][8]

1970年代から80年代には、魚雷艇MTB)8隻、ハネ級掃海艇6隻が改装により類別変更されている[7][8]。1981年10月27日に発生したウィスキー・オン・ザ・ロックにおいて、魚雷艇改造型の一隻であるスミーゲ(V02 Smyge)が出動している[9]

1984年から1985年にかけて、3型ヴェデットボーツ(Vedettbåt typ III[注 3]として機雷敷設能力を有するダーラリョー(Dalarö)、サンドハムン(Sandhamn)、エストハンマル(Östhammar)の3隻を新造。ストックホルムゴットランドに配備された後、1990年代にマルメエーレスン海峡管区スウェーデン語版で旧型艇を更新した。2004年には退役したダーラリョーとエストハンマルが、スウェーデン海上民兵スウェーデン語版[注 4]に譲渡された。その後ダーラリョーは退役したが、エストハンマルは近代化改装を受けて運用されている[10]

1988年7月にはフギン級哨戒艇のプロトタイプとして建造されたイェーガレンが、機雷敷設能力を追加する改装を施され類別変更されている[11][7]

2014年には、タッペル級哨戒艇英語版6隻を退役させ、ストックホルム級コルベットをヴェデットボーツに類別変更して充当する計画が報じられた。また、カールスクローナモスボールされている旧型艇を改装してこれに加える案もあるが、費用の問題により進展していない[1]

同種の艦種記号を有する艇

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Vedettbåtの名称と艦種記号Vは、1900年代初頭には哨戒艇に与えられており、これらは機雷戦能力を有しているとの記録は無い[3][12]。同様に沿岸砲兵隊向けの艦種記号Vを有する艇もその大半は機関砲を有するのみの哨戒艇であるが、V57は上記の通り例外的に機雷敷設艇としての機能を有していた[8]。 またVを含む艇の記号として、SVKは海上民兵(Sjövärnskåren)を[8]、KBVはスウェーデン沿岸警備隊(Kustbevakningen)を示すもので[13]、本種との関わりは無い。

一覧[12][3][7][10][注 5]
# 名称 旧名 原級 就役または類別変更 退役 備考
V27 V27 (Blixt) コメツ級魚雷艇 1921年 1947年6月13日
V28 V28 (Meteor) 1921年 1947年6月13日
V29 V29 (Stjerna) 1921年 1937年
V30 V30 (Orkan) 1921年 1947年6月13日
V31 V31 (Bris) 1921年 1937年 1938年標的として沈没
V32 V32 (Vind) 1921年 1937年
V33 V33 (Virgo) 1921年 1941年12月30日
V34 V34 (Mira) 1921年 1943年12月17日
V35 V35 (Orion) 1921年 1947年6月13日
V36 V36 (Sirius) 1921年 1942年7月24日
V37 V37 (Kapella) 1921年 1937年
V39 V39 (Iris) プリヤード級魚雷艇 1928年 1947年6月13日 1951年解体
V40 V40 (Thetis) 1928年 1947年6月13日 1951年解体
V41 V41 (Spica) 1928年 1947年6月13日 1951年解体
V42 V42 (Astrea) 1928年 1947年6月13日 1953年標的として沈没
V43 V43 (Antares) 1928年 1947年6月13日 1951年解体
V44 V44 (Arcturus) 1928年 1940年10月18日 1951年解体
V45 V45 (Altair) 1928年 1947年6月13日 1951年解体
V46 V46 (Argo) 1928年 1940年10月18日 1951年解体
V47 V47 (Polaris) 1928年 1947年6月13日 1951年解体
V48 V48 (Perseus) 1928年 1947年6月13日 1957年解体
V49 V49 (Regulus) 1928年 1944年 1957年解体
V50 V50 (Rigel) 1928年 1944年 1949年解体
V51 V51 (Castor) 1928年 1940年10月18日 1947年解体
V52 V52 (Pollux) 1928年 1940年10月18日 1947年解体
V53 V53 (Vega) 1928年 1941年12月30日 1948年解体
V54 V54 (Vesta) 1928年 1941年12月30日 1947年解体
V21→V41 イェーガレン(Jägaren) 新造 1932年12月1日進水 1959年1月1日 標的、1961年10月17日売却
V22→V42 (kaparen) 1933年3月3日進水 1959年1月1日 訓練用ハルク、1963年3月10日売却
V23→V43 (Snapphanen) 1934年11月2日進水 1959年1月1日 グアテマラ海軍ホセ・フランシスコ・バルンディア
V24→V44 (Väktaren) 1934年4月25日進水 1959年1月1日 標的となった後解体
V57 V57 新造 1954年 1985年除籍。沿岸砲兵隊所属
V01 スカノール(Skanör) T42 T42型魚雷艇 1976年 1989年
V02 スミーゲ(Smyge) T43 1977年 1989年
V03 アーリルド(Arild) T44 1977年 1991年
V04 ヴィケン(Viken) T41 T32型魚雷艇 1977年 1991年
V51 ハネ(Hanö) 同一 ハネ級掃海艇 1979年1月1日 1982年7月1日
V52 テルネ(Tärnö) 1979年1月1日 1989年
V53 シュルショー(Tjurkö) 1979年1月1日 1989年
V54 ストルケ(Sturkö) 1979年1月1日 1987年 訓練船となる。
V55 オルネ(Ornö) 1979年1月1日 1992年4月
V56 ウテ(Utö) 1979年1月1日 1982年7月1日
V05 エーレグルンド(Öregrund) T47 T42型魚雷艇 1983年 1993 - 1994年
V06 スリーテ(Slite) T48 1983年 1993 - 1994年
V07 マストランド(Marstrand) T50 1983年 1993 - 1994年
V08 リーセシル(Lysekil) T51 1983年 1993 - 1994年
V09 ダーラリョー(Dalarö 新造 1984年9月21日 2002 - 2003年 海上民兵に譲渡後退役
V10 サンドハムン(Sandhamn) 1984年12月5日 2002 - 2003年 民間船として売却
V11 エストハンマル(Östhammar 1985年3月1日 2002 - 2003年 海上民兵に譲渡
V150 イェーガレン(Jägaren) 同一 哨戒艇 1988年7月

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  1. ^ 近代化改装を行って引き渡しており、除籍は他艇と同じ1959年となる[3]
  2. ^ Kustartilleriet、略称KAは、海軍と陸軍の混成による別組織扱いの沿岸防備軍。2000年の再編で海軍に両用戦隊として吸収。
  3. ^ 1型・2型はMTB改装の8隻。3型も同様に改装予定であったが、1983年に計画変更。
  4. ^ スウェーデン郷土防衛隊の海軍に相当する。
  5. ^ この他に2:a型魚雷艇が10隻改装され、沿岸砲兵隊所属となっているが、資料間の矛盾のため省略した[3]

出典

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  1. ^ a b Mikael Holmström (2014年7月14日). “Färre fartyg vaktar haven”. スヴェンスカ・ダーグブラーデット. 2015年1月19日閲覧。
  2. ^ a b Vedettbåt typ Jägaren”. スウェーデン海軍. 2015年1月19日閲覧。
  3. ^ a b c d e f Conway's All the World's Fighting Ships 1922-1946. Conway Maritime Press. (1980). pp. 370-376. ISBN 0851771467 
  4. ^ Foto: SNAPPHANEN Fo184236AB”. カールスクローナ海洋博物館. 2014年1月21日閲覧。
  5. ^ Olle Melin (2013). “Svensk grundade Guatemalas flotta” (PDF). Flottans Män (Flottans Män) 2 (79). http://www.flottansman.se/uploads/forbundet/tidskriften/FM.Tidskrift.Nr.2-2013.pdf 2014年1月21日閲覧。. 
  6. ^ Conway's All the World's Fighting Ships 1947-1995. Naval Institute Press. (1996). pp. 167. ISBN 978-1557501325 
  7. ^ a b c d Conway's All the World's Fighting Ships 1947-1995. Naval Institute Press. (1996). pp. 448-452. ISBN 978-1557501325 
  8. ^ a b c d Jane's Fighting Ships 1981-82. Jane's Information Group. (1981). p. 426. ISBN 978-0710607287 
  9. ^ Mikael Holmström (2011年10月23日). “”Nu är vi nog i krig””. スヴェンスカ・ダーグブラーデット. 2015年1月19日閲覧。
  10. ^ a b Mikael Lostedt (2012年9月9日). “SVK 11 Östhammar”. 2015年1月19日閲覧。
  11. ^ Diarier över utgående och inkomna skrivelser”. 2015年1月21日閲覧。
  12. ^ a b Conway's All the World's Fighting Ships 1906-1921. Conway Maritime Press. (1985). pp. 359. ISBN 0851772455 
  13. ^ Fartygskatalog”. スウェーデン沿岸警備隊. 2015年1月21日閲覧。

外部リンク

[編集]
  • Ulf Blomgren (2011年6月11日). “Ensamt fartyg värnar vår västkust”. Bohusläningen. 2015年1月20日閲覧。 スウェーデンの新聞Bohusläningenによるイェーガレン取材記。