リュウテンサザエ科
リュウテンサザエ科 | |||||||||||||||||||||
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Tapestry turban モルジブ諸島
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分類 | |||||||||||||||||||||
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英名 | |||||||||||||||||||||
turban snails 中名 蝾螺科 (róng luó kē) |
リュウテンサザエ科(リュウテンサザエか)は、ターバン型の貝殻をもつ海洋性の巻貝の科。サザエ科、リュウテン科、リュウテンガイ科の和名もある。貝殻の内面には真珠光沢がある。熱帯海域から極地付近、潮間帯から深海の広範囲に分布するが、多くの種は温暖な海の潮間帯下に生息する[4][5]。
生態
[編集]ニシキウズ科と同様に、雌雄の別はあるが交尾は行わず、メスは放卵しオスは放精する。孵化した幼生は浮遊するが、短期間で稚貝となり、種の分布域は限られている場合が多い。サザエやスガイのように岩礁上や海藻上で海藻類などを削り取って食べるものが多いが、リンボウガイやアザミガイなどのように砂底や砂泥底に生息する種もある[6]。
形態
[編集]頭部に触角を持つが、ニシキウズ科など他の古腹足類に比し上足触角は短いものが多い。鰓はニシキウズ科同様、左側に寄る。呼吸その他に使う外界水の取り込みには、新生腹足類に見られる外套膜の一部が伸長した水管のかわりに、左右の触角後方に頸葉 (neck lobe(s))と呼ばれる”首”の肉が伸び広がった部分があり、これを丸めるようにして管状にし、左頸葉から海水を取り込み、右頸葉から排出する[7][8]。歯舌は中央歯が広い板状[9]。蓋は本来のキチン質の蓋の表面に石灰が沈着した厚い石灰質である[10]。蓋の内面(足への付着面)を見ると螺旋を描いた本来のキチン質の蓋が観察できる。
人との関係
[編集]大型のサザエ類は食用となり、煮ても焼いても美味い。ツブ貝は肉食性で寒冷な深海に棲みツブかごで採取されるのに対し、サザエ科は藻類食で比較的温暖な浅海に生息し素潜りで採取される。バテイラやクボガイ類も小型だがとても美味く、「磯玉」として海浜で食用とされる。昔からヤコウガイの貝殻は螺鈿細工に使用されてきた[11][12]。海岸で貝殻を拾うときに見つかる貝のフタはサザエ亜科の蓋である。
分類
[編集]石灰質の蓋をもつ種族のうちサラサバイ類やサンショウスガイ類は、現在ではサザエ科とは別の科に分類される。一方で、角質の蓋をもつバテイラ類やギンタカハマ類は、従来のニシキウズ科から独立した科[13]あるいはサザエ科に属する亜科に分類されるようになった[14][15][16]。 下にリュウテンサザエ科関連の系統分岐図の概略を示すが、種々の異なる遺伝子解析結果が報告されており、蓋が石灰質か角質かなどの外観とはかならずしも一致せず、系統は未確定である[13][15][16]。
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リュウテンサザエ科に属する主な属と種の例を以下に示す。
貝殻の外観 | 各属の種の一例・分布の例 |
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Prisogasterinae Hickman & McLean, 1990 |
南アメリカ西岸(寒流)産の属。 |
Prisogaster Mörch, 1850 ペルーからチリの太平洋岸。約3cm以下。 図はPrisogaster niger。 | |
Tectinae Cunha, Reimer & Giribet (2021) |
ギンタカハマ亜科 遺伝子系統解析の結果にもとづき新たに提案されている亜科。 |
Cittarium pica (Linnaeus, 1758 チャウダーガイ[17]。カリブ海, 6cm, スープになる。 | |
Rochia Gray, 1758 ベニシリダカなど[注釈 1]。 日本ふくむインド洋-西太平洋 (IWP)。 | |
Tectus Montfort, 1810 ギンタカハマ, マツカサウズなど、IWP。 | |
Tegulinae [1] Kuroda, Habe & Oyama, 1971 |
クボガイ亜科。ニシキウズガイ科に分類されていたが、近年ではサザエ科と並立したクボガイ科Tegulidaeとして分類されている[18]。蓋は角質で薄い。 |
Agathistoma Olsson & Harbison, 1953 北米東西両岸および南米東岸[14]。 図はモヨウクボガイ[19]。 | |
Chlorostoma[注釈 2] Swainson, 1840 クボガイ属 日本および南北アメリカ太平洋岸など。 図はクマノコガイ。「磯もの」として食用。 | |
Omphalius[注釈 3] R. A. Philippi, 1847 コシダカガンガラ属 図のコシダカガンガラのほかバテイラなど。 臍が開く。日本、朝鮮半島から福建省にかけて。 | |
Tegula Lesson, 1832 ヘビカワターバン属 図はヘビカワターバン[19]。中央アメリカ太平洋岸。 | |
Turbininae Rafinesque, 1815 |
リュウテンサザエ亜科。蓋は石灰質で厚い。 |
Astraea heliotropium ニチリンサザエ[20] 近年現生の本種と化石種のみが本属に残され、他は別の属に分けられた。 ニュージーランド外洋の深底、9cm。 | |
Astralium Link, 1807 IWP, 熱帯南北アメリカ東岸など。 図はウラウズガイの底面。 | |
Bellastraea Iredale, 1924 キキョウウラウズガイ[21] オーストラリア南部の潮間帯下に普通、2.5cm。 | |
Bolma Risso, 1826 アザミガイ[22] (コーラル海から日本、水深約300m, 3cm)など。 同じ種でも棘が出る場合と出ない場合がある。 | |
Cookia sulcata Gmelin, 1791 クックウラウズガイ[23] ニュージーランドの潮間帯の岩礁にふつう。 | |
Guildfordia Glay, 1850 オセアニアから日本の水深50-500mの砂底。 図はリンボウガイ[24][25] | |
Lithopoma Glay, 1850 ワカクサウズ属 熱帯アメリカ両岸の潮間帯下の岩礁。 図はキザミウズガイ[26]、フロリダからバミューダ諸島, 6cm。 | |
Lunella Gmelin, 1791 図はスガイ[27]、日本から南アフリカ, 内湾の潮間帯の岩礫地。殻幅3.5cm。 | |
Megastraea McLean, 1970 図はナミジワターバン(殻高7cm)[26]。ほかにイワオターバン(殻高15cm)。 バハ・カリフォルニア。蓋に3本のひだ。 | |
Modelia Gray, 1850 ニュージーランドに生息。 | |
Pomaulax Gray, 1850 日本とアメリカ西岸、潮下帯の岩礁。 図はヒラサザエ(殻幅10cm)[22]。 | |
Turbo Linnaeus, 1758 リュウテン[28], ヤコウガイ, サザエなど。 両極とアフリカ西岸を除く世界中の浅海の岩礁。 図はナンカイサザエ, 台湾産。 | |
Uvanilla Gray, 1850 図はアカベソターバン[21]。 メキシコ西岸の潮下帯の岩礁にふつう。殻高6cm。 | |
Turbinidae | どの亜科にも属さない属 |
図なし[29] | Tropidomarga biangulata Powell, 1951 サンドウィッチ諸島, 15mm。 |
Colloniinae (Watson, 1879) |
サンショウスガイ科に分類されるようになった[30]。 |
Phanerolepida⇒ サンショウスガイ科 Colloniidae に分類されている。 Phanerolepida transenna Gray, 1850[31] キヌジメザンショウ。フィリピンと日本の水深600-800m。その他化石種。 |
脚注
[編集]注釈
[編集]出典
[編集]- ^ a b Williams 2008.
- ^ 波部 & 小菅 1967.
- ^ “Turbinidae”. WoRMS. 2024年2月24日閲覧。
- ^ 奥谷 & 竹之内 2004, p. 54-59.
- ^ “Turbinidae”. gbif. 2024年2月23日閲覧。
- ^ 奥谷 & 竹之内 2004, p. 23.
- ^ Geigerら 2008.
- ^ 貝類学 2010, p. 185-186.
- ^ Dornellasら 2019, p. 144.
- ^ 奥谷 & 竹之内 2004, p. 49-59.
- ^ “リュウテン科”. 大島町貝の博物館. 2021年11月6日閲覧。
- ^ “市場魚貝類図鑑ヤコウガイ”. ぼうずコンニャク. 2021年11月6日閲覧。
- ^ a b Williams 2012.
- ^ a b Dornellasら 2019.
- ^ a b Guoら 2020.
- ^ a b Cunhaら 2021.
- ^ アボットら 1985, p. 38.
- ^ a b c “Tegulidae”. WoRMS. 2021年11月7日閲覧。
- ^ a b アボットら 1985, p. 46.
- ^ アボットら 1985, p. 53.
- ^ a b アボットら 1985, p. 55.
- ^ a b 竹之内ら 2004, p. 58-59.
- ^ アボットら 1985, p. 52.
- ^ 目八譜六 1843, p. 105.
- ^ 波部 1967, p. 17.
- ^ a b アボットら 1985, p. 54.
- ^ 竹之内ら 2004, p. 57.
- ^ 目八譜七 1984, p. 10.
- ^ “Tropidomarga biangulata”. WoRMS. 2024年2月24日閲覧。
- ^ “Colloniinae”. WoRMS. 2024年2月24日閲覧。
- ^ Hickman 1972.
参考文献
[編集]- 武蔵石壽・服部雪斎「113 輪鋒」『目八譜』 第六巻 刺螺、1843年。NDLJP:1287301/105。
- 武蔵石壽・服部雪斎「10 龍天」『目八譜』 第七巻 螺圓、1843年。NDLJP:1287302/10。
- 波部忠重・小菅貞男『標準原色図鑑全集3 貝』保育社、1967年。ISBN 4586320036。 NCID BN04374609 。
- Carole S. Hickman (1972). “Review of the Bathyal Gastropod Genus Phanerolepida (Homalopomatinae) and Discription of a New Species from the Plegon Oligocene”. Veliger 15: 107-112 .
- R.T.アボット、S.P.ダンス『世界海産貝類大図鑑』波部忠重、奥谷喬司 監修・訳、平凡社、1985年3月。ISBN 4582518117。 NCID BN00814197。NDLJP:12602136。
- 奥谷喬司『世界文化生物大図鑑『貝類』(サザエ科の項 竹之内孝一)』(改訂新版)世界文化社、2004年。ISBN 9784418049042。全国書誌番号:20617488 。
- Suzanne T. Williams; Satoshi Karube; Tomowo Ozawa (2008). “Molecular systematics of Vetigastropoda: Trochidae, Turbinidae and Trochoidea redefined”. Zoologica Scripta 37: 483-506. doi:10.1111/j.1463-6409.2008.00341.x.
- Daniel L. Geiger; Alexander Nützel; Takenori Sasaki (2008). Phylogeny and Evolution of the Mollusca_Vetigastropoda. Univ of California Pr.. ISBN 978-0520250925
- Hugh J. Porter; Lynn Houser (2010). “Seashells of North Carolina”. North Carolina Sea Grant College Program
- 佐々木猛智『貝類学』東京大学出版会、2010年。ISBN 9784130601900。全国書誌番号:21846371 。
- Suzanne T. Williams (2012). “Advances in systematics of the vetigastropod superfamily Trochidea”. Zoologica Scripta 41: 571-595. doi:10.1111/j.1463-6409.2012.00552.x.
- M. Castelin; S. T. Williams; G. Buge; P. Maestrati (2017). “Untangling species identity in gastropods with polymorphic shells in the genus Bolma (Mollusca, Vetigastropoda)”. European Journal of Taxonomy 288: 1-21. doi:10.5852/ejt.2017.288.
- Ana Paula Dornellas; Diogo Ribeiro Couto; Luiz Ricardo L. Simone (2019). “Morphological phylogeny of the Tegulinae (Mollusca: Vetigastropoda) reinforces a Turbinidae position”. Cladistics 36 (2): 129-163. doi:10.1111/cla.12400.
- Erfei Guo; Yi Yang; Lingfeng Kong; Hong Yu; Shikai Liu; Zhanjiang Liu; Qi Li (2020). “Mitogenomic phylogeny of Trochoidea (Gastropoda: Vetigastropoda): New insights from increased complete genomes”. Zoologica Scripta: 1-15. doi:10.1111/zsc.12453.
- T. J. Cunha; J. D. Reimer; G. Giribet (2021). “Investigating Sources of Conflict in Deep Phylogenomics of Vetigastropod Snails”. Systematic Biology 0: 1-14 .