リベラルホーク
リベラルホーク(英: Liberal hawk)は、アメリカ合衆国における自由主義の政治イデオロギーの1つで、米国において主に民主党政権時のタカ派外交政策・介入主義姿勢に非常に大きな影響を与えている。共和党のネオコンと共通点を持ち、人脈的にもつながりが深く超党派として活動することも多く人道的介入主義が特徴でありネオコンと区別はつきにくい。
概要
[編集]ウッドロー・ウィルソン、フランクリン・ルーズベルト、ハリー・S・トルーマン、ジョン・F・ケネディ、リンドン・ジョンソンら介入主義的な民主党の各大統領の系譜を継ぐ勢力であり、冷戦時代は朝鮮戦争やベトナム戦争などを支え、かつては冷戦リベラルとも呼ばれた。冷戦崩壊後にアメリカを唯一の超大国に確立したビル・クリントンによるクリントン・ドクトリンもこれに該当し、コソボ紛争ではセルビアに対して北大西洋条約機構(NATO)初の軍事行動を行った。アメリカ同時多発テロ事件後の共和党のブッシュ政権によるイラクへの侵攻を支持してネオコンと軌を一にした民主党の政治家を表す用語として注目が集まり、アメリカの左派やリベラル派を大きくこの介入主義派と介入反対派に分断させることになった[1]。
ネオコンと共に東欧・旧ソ連各国でのカラー革命や中東のアラブの春に関与し、支持してきた。2009年発足のバラク・オバマ政権においては国務長官のヒラリー・クリントンが主導となり、リビア内戦やシリア内戦などへの介入主義的傾向を推し進めた。2014年ウクライナ政変でも、ヒラリーの子飼いであるビクトリア・ヌーランドの関与が指摘されている。2021年以降のジョー・バイデン政権でもアントニー・ブリンケンやロイド・オースティンなどをはじめリベラルホークは要職を占めており、2022年ロシアのウクライナ侵攻におけるロシアへの対抗路線を強く打ち出している[2][3]。
また、フランスのベルナール=アンリ・レヴィに代表されるようにアメリカ合衆国以外にもリベラルホークは浸透してきている。[要出典]
代表的なリベラルホークのシンクタンクは、戦略国際問題研究所(CSIS)やブルッキングス研究所や新アメリカ安全保障センターなどの名が上げられる。
さらに、リベラルホークは欧州を始めとして世界各地にも広く浸透し、とりわけクラウス・シュワブが主宰する世界経済フォーラム(WEF)とジョージ・ソロスの創設したオープン・ソサエティ財団もリベラルホークの政治家や活動家、財界人の育成に大きく深く関与しており、アメリカ合衆国国際開発庁(USAID)、全米民主主義基金(NED)と共にNGO活動、慈善活動を行って各地でカラー革命をしかけているとされる。
リベラルホークと深い関連のあるとされている著名人
[編集]- アンナレーナ・ベアボック - ドイツ同盟90/緑の党の政治家。ショルツ内閣の外務大臣。
- ウルズラ・フォン・デア・ライエン - ドイツキリスト教民主同盟(CDU)所属のの政治家。欧州委員会委員長(第13代)。
- バラク・オバマ - 第44代米大統領、民主党上院議員
- ヒラリー・クリントン - 元国務長官、民主党上院議員
- アントニー・ブリンケン - アメリカ合衆国国務長官、元国家安全保障担当副大統領補佐官
- クラウス・シュワブ - 世界経済フォーラム(WEF)主宰
- サマンサ・パワー - アメリカ合衆国国際開発庁長官。元アメリカ合衆国国際連合大使、元大統領上級顧問
- ジェイク・サリバン - 政治家、法律家、外交官。第29代国家安全保障問題担当大統領補佐官。
- ジャスティン・トルドー - 第29代首相
- ジョー・バイデン - 民主党 第46代米国大統領
- ジョージ・ソロス - 投資家、オープン・ソサエティ財団創設者。東欧系ユダヤ人。
- ジョセップ・ボレル - スペインの政治家。欧州連合外務・安全保障政策上級代表。
- ズビグネフ・ブレジンスキー - 政治学者、オバマ陣営外交顧問
- ジョー・リーバーマン - 元上院議員
- チャールズ・ネスビット・ウィルソン - 元下院議員
- ヘンリー・M・ジャクソン - 政治家、元下院・上院議員
- ウォルト・ロストウ - 経済学者、大統領特別補佐官
- ラリー・ダイアモンド - フーヴァー戦争・革命・平和研究所に属する政治学者
- マイア・サンドゥ - 第6代モルドバの大統領
- マイケル・マクフォール - フーヴァー研究所フェローの政治学者
- マデレーン・オルブライト - 元国務長官
- トニー・ブレア - 第73代英首相、労働党党首
- クリストファー・ヒッチェンズ - イギリス出身の作家、ジャーナリスト
- マイケル・イグナティエフ - カナダの政治学者、政治家
- ベルナール=アンリ・レヴィ - フランスの哲学者、作家
- ロナルド・アスムス
- ジョナサン・チャイト - ジャーナリスト
- ケネス・ポラック - ブルッキングス研究所フェロー
- マイケル・トマスキー - コラムニスト
脚注と出典
[編集]- ^ Packer, George. "The Liberal Quandary Over Iraq." The New York Times Magazine. December 8, 2002.
- ^ “「アメリカはウクライナ戦争を終わらせたくない」と米保守系ウェブサイトが”. Yahoo!ニュース (2022年4月16日). 2023年9月22日閲覧。
- ^ “「ロシアは国連を侮辱」 米国務長官、安保理会合で批判”. 共同通信 (2023年9月21日). 2023年9月22日閲覧。[リンク切れ]
関連項目
[編集]- ネオコン
- 人道的介入
- 戦略国際問題研究所(CSIS)
- ブルッキングス研究所
- 新アメリカ安全保障センター
- ケネディスクール
- 世界経済フォーラム
- 平和強制
- アメリカ合衆国国際開発庁(USAID)
- 全米民主主義基金(NED)
外部リンク
[編集]- Progressive Internationalism: A Democratic National Security Strategy
- A Liberal's Case for Bush's War[リンク切れ]., Michael Totten, FrontPage Magazine, January 8, 2003.
- Slate: Liberal Hawks Reconsider the Iraq War
- Bush’s Useful Idiots, Tony Judt, London Review of Books, 21 September 2006