ラームナーミー・サマージ
ラームナーミー・サマージ(ヒンディー語: रामनामी समाज、Rāmnāmī Samāj)は、ヒンドゥー教の一分派である。1890年代にパラスラーム(Parasurām)により創設された宗派である。信徒はもっぱら不可触民であり、主にチャッティースガル州で盛んである。ラーマ神を崇拝するために「राम」と書かれたショールを羽織り、全身に入れ墨を刻む。
歴史
[編集]ラームナーミー・サマージは、チャンバル(皮革を扱う不可触民カースト)であるパラスラームによって創設された[1][2][3]。1870年代に生まれた彼は[4]、自らのカーストを理由に寺院への参詣を拒否されたことに抵抗すべく、入れ墨を刻んだ[5]。彼はおもえらくは自らの額に「राम」の文字を刻んだはじめての人物と信じられており[4]、1890年代にこの宗派を創設したと考えられている[5]。ラムダス・ラム(Ramdas Lamb)によれば、この宗派は15世紀のバクティ運動(神への絶対的帰依を重視するヒンドゥー教の宗教運動)の延長線上にある[4]。
1910年、ラームナーミーの信徒は「ラーマ」の名称の使用権を巡る、上位カーストを相手どった訴訟に勝訴した[6]。遅くとも1980年代後半には、入れ墨を刻んだ信徒は「カーストが明らかである」ために寺院への参詣を拒否されるようになっていた[5]。
実践
[編集]ラームナーミーの信徒は禁酒・禁煙を守り、毎日「ラーマ」の名前を唱える[7]。また、身体に「राम」の文字を入れ墨として刻み、「राम」と記されたショールを羽織るほか、孔雀の羽根でつくられた被り物をつける。全身に入れ墨を刻んだ信徒は purnanakshik と呼ばれ、高齢者に多い。若い信徒は差別や就労の制限を恐れ、入れ墨を刻まない[4]。信徒は12月から1月、収穫期の終わりに、チャッティースガル州ライプール県の Sarsiwa村で開かれる、3日間の祭りである Bhajan Mela に参加する。ここで信徒は jayostambh とよばれる、ラーマの名前を刻んだ白い柱を立て、『ラームチャリトマーナス』の詩句を唱える[4]。
規模
[編集]ラームナーミーの信徒は統計上はヒンドゥー教に含まれるため、信徒の規模に関する正確な情報はないものの、2017年の記事によれば、サマージの長老は Bhajan Mela への参列者から、その規模は20,000人程度であろうと推計している[4]。また、100,000人程度であろうと推計する者もいる[7]。信徒はチャッティースガル州のマハナディ川沿いの村落に多く、一部はマハーラーシュトラ州・オリッサ州の州境の村落にも居住する[4]。
出典
[編集]- ^ Bauman, Chad M. (2008-10-07) (英語). Christian Identity and Dalit Religion in Hindu India, 1868-1947. Wm. B. Eerdmans Publishing. ISBN 978-0-8028-6276-1
- ^ Lamb, Ramdas (2012-02-01) (英語). Rapt in the Name: The Ramnamis, Ramnam, and Untouchable Religion in Central India. State University of New York Press. ISBN 978-0-7914-8856-0
- ^ Lorenzen, David N. (英語). Bhakti Religion in North India: Community Identity and Political Action. State University of New York Press. ISBN 978-1-4384-1126-2
- ^ a b c d e f g Mitra 2017.
- ^ a b c Shafi 2017.
- ^ Dam 2019.
- ^ a b Abidi 2016.
参考文献
[編集]- Abidi, Adnan (14 January 2016). “Tattoos, faith and caste”. Reuters. 21 November 2017時点のオリジナルよりアーカイブ。13 April 2020閲覧。
- Dam, Abhirup (22 November 2019). “In search of Ram: The death of wisdom, tradition and philosophy”. The Telegraph. 23 November 2019時点のオリジナルよりアーカイブ。13 April 2020閲覧。
- Kohli, Namita (14 May 2016). “The God of Small Things: The last few with Ram inked on their bodies”. Hindustan Times. 27 July 2017時点のオリジナルよりアーカイブ。13 April 2020閲覧。
- Lamb, Ramdas (29 August 2002). Rapt in the Name: The Ramnamis, Ramnam, and Untouchable Religion in Central India. SUNY Press. ISBN 0791453855
- Mitra, Joydip (30 November 2017). “In the name of Ram”. People's Archive of Rural India. 3 October 2019時点のオリジナルよりアーカイブ。12 April 2020閲覧。
- Shafi, Showkat (16 January 2017). “In the name of Ram: Tattoos in India's Dalit community”. Al-Jazeera. 9 November 2018時点のオリジナルよりアーカイブ。12 April 2020閲覧。