ラビナル・アチ
ラビナル・アチ(Rabinal Achí)は、グアテマラのバハ・ベラパス県ラビナルに伝わるアチ・マヤ族の音楽をともなう仮面舞踊劇。ラビナルの王子(ラビナル・アチ)とキチェの王子(キチェ・アチ)の間の争いを描く。
16世紀のスペインによる植民地化以来、ラビナル・アチは聖パウロの日である1月25日の祭りで演じられてきた。祭りはコフラディア(マヤ人による互助的なキリスト教の信心会)が深くかかわる[1]。しかし、劇の内容はキリスト教と関係がない[2]。
現代の登場人物は、ラビナル王ホブトフ(Job’Toj)、ラビナル・アチ、キチェ・アチ、王女(ラビナル・アチの恋人)、2人の召し使い、鷲の戦士、ジャガーの戦士[3]の7人前後であるが、かつてはもっと多くの登場人物があったらしい[4]。
舞台はマヤの村々で、その中には14世紀にラビナル人の首都であったカフユブ(Kajyub’)の要塞もある[1]。
劇は4幕から構成され、主要な内容はラビナル・アチとキチェ・アチの抗争である。キチェ・アチが侵略し、ラビナル王、王女、家臣らを誘拐する。ラビナル・アチはキチェ・アチの侵略を非難する[5]。キチェ・アチは最後に捕えられて、誘拐の罪で裁きにあう[1]。
音楽は1人がトゥンという木鼓を演奏し、2人がトランペットを演奏する。ほかに演者の体につけられた鈴や小型のシンバルが使われる[6]。
ラビナル・アチの台本は1850年にバルトロ・シスという人物によってラテン文字のキチェ語で文字に記された。フランスのシャルル・エティエンヌ・ブラッスール・ド・ブールブールはこの台本を入手し、1862年にキチェ語とフランス語で出版した。スペイン語訳や英語訳はこの版からの重訳である[7]。
脚注
[編集]参考文献
[編集]- 奥村浩一「「ラビナル・アチ」を巡る諸問題―その過去・現在・未来―」『ラテンアメリカ研究年報』第12号、1992年、169-186頁。