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ユーティリティコンピューティング

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

ユーティリティコンピューティング: Utility computing)とは、リソース(CPUやストレージ)を電気/ガス/水道電話のように使用した分だけ料金を課すようにサービスとしてパッケージ化すること。

概要

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ユーティリティコンピューティングでは、システム構築の初期投資が少ないか、ほとんどかからない。その代わり、計算リソースは基本的にレンタルされる。顧客は急に大規模な計算能力が必要になったり、アクセスが集中して処理能力が必要になった場合でも、新たなコンピュータ群を物理的に調達して配線などを行う時間をとることなく、必要に応じてリソースを追加利用できる。

ホスティングサービスでも、個々のサーバをレンタルして利用可能にすることは素早くできる。例えば、Webサイトの突然のアクセス集中に備えて、Webサーバ群を事前に用意しておくなどの対応が可能である。

「ユーティリティコンピューティング」と言った場合、一般に(ストレージや計算能力の)何らかの仮想化を想定しており、利用可能なリソースは単一のコンピュータシステムよりも大きい。つまり、複数のサーバシステムを使って1つのシステムを構築している。これは例えば、コンピュータ・クラスターをレンタル専用に構築するようなもので、場合によってはスーパーコンピュータを使用することもありうる。このような、複数のコンピュータ上で1つの計算を行う技法を分散コンピューティングと呼ぶ。

グリッド・コンピューティング」という用語も分散コンピューティングの一形態を指すが、利用形態ではなく、物理的構成や組織的構成を指す用語である。

ユーティリティコンピューティングの定義は、Webサービスのような特定の業務と結びつけてなされることがある。

2006年に提唱され、広く普及したクラウドコンピューティングは、商用のサービスとして捉えた場合には、契約に対する考え方が全く異なっている[1]。ユーティリティ・コンピューティングではメインフレーム時代と同じく、利用可能な性能やメモリ容量,サービスの利用可能な場所などが公開されており、厳格な契約を経て利用が開始されるものであって、1分1秒単位で変化する需要の増減に応じて利用する計算リソースの量を変更することは出来ない。従って、急激な需要増で処理遅延を招きやすく、需要が少ないときは無駄なコストが発生する。しかし、クラウドコンピューティングではユーザーから見て設定1つで(時には全自動で)計算リソースの変更が行えるため、需要の増減に追従して計算リソースの量を増減させることができる。結果として必要な時に必要なだけ計算リソースを利用することが出来るため、ユーティリティ・コンピューティングと比較して、コスト面で効率的な利用形態であると言える。

歴史

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ユーティリティコンピューティングは新しい概念というわけではなく、長い歴史がある。1961年、ジョン・マッカーシーマサチューセッツ工科大学の100周年にあたって、次のように述べている。

私が主張した種類のコンピュータが将来現実となるならば、電話が公共設備となったようにコンピューティングが公共設備となる日が来るかもしれない…コンピュータ・ユーティリティは新たな重要な産業基盤となるかもしれない。

1964年のMulticsでも、コンピュータ・ユーティリティの考え方が根本にあった。[2]

IBMメインフレームと電子タイプライターを電話回線で接続し[3]、計算能力とデータベース用ストレージ領域を銀行などに提供する事業を行っていた。

2000年、サン・マイクロシステムズは Sun Grid サービスを開始し、最近では時間単位で計算能力を利用できるサービスを提供している[4]InsynQヒューレット・パッカードのコンピュータなどを使い、1997年からユーティリティコンピューティングのサービスを開始した。

クラウドコンピューティングの先駆けではあるが、2006年8月25日、Amazon.comAmazon EC2 を開始した[5]。これは、最小リソースで1時間当たり0.1ドルからのコストでリソースを提供するサービスで、ストレージ容量とインターネット上のデータ転送量によっても課金される。仮想化は Xen を使い、レンダリングや計算処理だけでなく、Webサーバクラスタなどとしても利用できる。以後、クラウドコンピューティングが急速にシェアを伸ばすことになった。

脚注

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  1. ^ ユーティリティとクラウド”. www-ikn.ist.hokudai.ac.jp. 2019年6月7日閲覧。
  2. ^ A Multics based definition
  3. ^ 日経クロステック(xTECH) (2010年12月10日). “「遊び心」が人を引き付ける。新技術を駆使して店舗作り”. 日経クロステック(xTECH). 2024年12月2日閲覧。
  4. ^ 米Sun、1ドル/CPU時間からの簡単グリッドサービス開始 INTERNET Watch、2006年3月23日
  5. ^ Jeff Barr (2006年8月25日). “Amazon EC2 Beta|AWS Official Blog”. Amazon Web Services, Inc.. 2015年11月13日閲覧。

関連項目

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外部リンク

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技術文書