ヤングの畳み込み不等式
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数学におけるヤングの畳み込み不等式(ヤングのたたみこみふとうしき、英: Young's convolution inequality)は、ウィリアム・ヘンリー・ヤングに名を因む、ふたつの函数の畳み込みに関する不等式である[1]。
定理の主張
[編集]実解析において、ヤングの畳み込み不等式[2](Theorem 3.9.4)は以下のようなものである:
- 定理 (Young's convolution inequality)
- f ∈ Lp(ℝd), g ∈ Lq(ℝd) で が満たされるならば、不等式 が成り立つ。ここに、左辺の ∗ は畳み込みで、Lp はルベーグ p-乗可積分函数の空間および は Lp-ノルムである。
おなじことだが、以下のように述べることもできる:
- p, q, r ≥ 1 が を満たすならば が成り立つ。
- 一般化
- ヤングの畳み込み不等式は、ℝd を単模群 G に取り換えた自然な一般化ができる。G 上の両側ハール測度を μ とすれば μ に関する積分が定義できて、G 上の実または複素数値函数 f, g に対して および と定めれば、f ∈ Lp(G, μ), g ∈ Lq(G, μ) に対して、件の不等式 はそのままの形で成り立つ(もちろん、 とも書ける)。
- 事実として、ℝd は局所コンパクトアーベル群、したがって単模であり、ルベーグ測度がそのハール測度を与えるから、事実これは先の不等式を一般化するものである。
より厳密な評価
[編集]p, q > 1 の場合、ヤングの不等式はより強く、適当な定数 cp,q < 1 を含む の形のより厳密な評価にすることができる[3][4][5]。この最適化定数が達成されるとき、函数 f, g は高次元ガウス函数 である。
証明
[編集]最適化定数 1 のヤングの不等式には、初等的な証明がある[6]。
位相群の不変積分版の証明を以下に示す:
ヘルダーの不等式による一般の場合の証明
応用
[編集]ヤングの不等式の応用の一つの例が、L2-ノルムを用いて 熱半群が縮小半群である(つまり、ヴァイヤシュトラス変換が L2-ノルムを大きくしない)ことを示すことである。
脚注
[編集]- ^ Young, W. H. (1912), “On the multiplication of successions of Fourier constants”, Proceedings of the Royal Society A 87 (596): 331–339, doi:10.1098/rspa.1912.0086, JFM 44.0298.02, JSTOR 93120
- ^ Bogachev, Vladimir I. (2007), Measure Theory, I, Berlin, Heidelberg, New York: Springer-Verlag, ISBN 978-3-540-34513-8, MR2267655, Zbl 1120.28001
- ^ Beckner, William (1975). “Inequalities in Fourier Analysis”. Annals of Mathematics 102 (1): 159–182. doi:10.2307/1970980. JSTOR 1970980.
- ^ Brascamp, Herm Jan; Lieb, Elliott H (1976-05-01). “Best constants in Young's inequality, its converse, and its generalization to more than three functions”. Advances in Mathematics 20 (2): 151–173. doi:10.1016/0001-8708(76)90184-5 .
- ^ Fournier, John J. F. (1977), “Sharpness in Young's inequality for convolution”, Pacific J. Math. 72 (2): 383–397, doi:10.2140/pjm.1977.72.383, MR0461034, Zbl 0357.43002
- ^ Lieb, Elliott H.; Loss, Michael (2001). Analysis. Graduate Studies in Mathematics (2nd ed.). Providence, R.I.: American Mathematical Society. pp. 100. ISBN 978-0-8218-2783-3. OCLC 45799429