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ヤコウボク

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ヤコウカ
ヤコウカの蕾と実
保全状況評価[1]
LEAST CONCERN
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
分類APG IV
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 eudicots
階級なし : コア真正双子葉類
core eudicots
階級なし : キク類 asterids
階級なし : シソ類 lamiids
: ナス目 Solanales
: ナス科 Solanaceae
: キチョウジ属 Cestrum
: ヤコウカ C. nocturnum
学名
Cestrum nocturnum L.
和名
ヤコウカ、ヤコウボク
英名
night jasmine, lady of the night
ヤコウカ(2024年8月 沖縄県本部町)
ヤコウカの実(2024年8月 沖縄県本部町)

ヤコウボクヤコウカ(夜香木・夜香花、学名:Cestrum nocturnum)はナス科キチョウジ属[2]常緑低木。南西諸島に帰化[3][4]

保全状況評価

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IUCNレッドリストLC(低危険種)。

特徴

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樹高1–4 m。幹は緑色を帯びる。多数の茎を伸ばして株立ちに育ち、枝は弓なりに伸びる。葉は淡緑色~濃緑色で長さ6–20 cm、幅3–5 cmの卵状~楕円状披針形、薄く互生し、全縁で両面無毛、長さ1.5 cmほどの葉柄をもち、先端は尖る。葉腋から円錐花序を出す。花は淡黄緑色の小さい筒状花で長さ1.5–2.5 cm、先は5裂し星型で径1 cm。花は昼間は香らないが、日没から1時間ほど経過すると強い芳香を放ち始め、翌朝まで香りが残り、英名のnight jasmineやヤコウボク(夜香木)の別名がある。種小名nocturnumも夜を意味する。香りで花粉を媒介する蛾を引き寄せている。長い花冠の奥にある蜜を吸うために蛾が口吻を差し込む際に体に花粉が付着し、別の花へと運ばれる。細長い花筒と夜に香る本種の特徴は、蛾による送粉を行う植物に典型的なものとされる[5]。開花期は春~秋(3–11月)。果実は楕円形、径1 cmほどで、はじめ緑色で熟すると白色に変わり、花とともに長期間見られる[6][7][8][9][10][11][12][13][14][15][2][4]

原産地

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メキシコ~コロンビア、ベネズエラ原産[14][4]。西インド諸島原産とする文献[5][9][11][12][13][15]もあるが、POWOでは西インド諸島、アフリカ、南アジア~東南アジアへ導入としている[16]。インドなどに帰化とする文献もある[17]

生育環境、利用

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世界の熱帯~亜熱帯にかけて広く栽培されている。公園、庭園用。夜に甘く香る庭木として人気で、野生化も多い。南西諸島では耕作地周辺の石灰岩地や湿った林縁、谷沿いなどに逸出帰化。伊豆諸島にも野生化[8][10][12][3][13][2][4]。有毒植物ともされる[7][12][4]。あんどん支柱で纏めるか、大鉢仕立てにする。キチョウジ属のなかでは耐寒性が強く、凍らなければ冬越し可能[14]。土壌はあまり選ばず、乾燥にも強い。生長が早く枝が開拡しやすいため、定期的な剪定を要する。病虫害は少ない。繁殖は実生や挿し木による[6][9][11]

脚注

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  1. ^ Botanic Gardens Conservation International (BGCI), IUCN SSC Global Tree Specialist Group & Meave, J.A. (2019). Cestrum nocturnum. IUCN Red List of Threatened Species 2019: e.T72045868A136785819. doi:10.2305/IUCN.UK.2019-2.RLTS.T72045868A136785819.en. https://www.iucnredlist.org/species/72045868/136785819 09 November 2024閲覧。. 
  2. ^ a b c (勝山 2021, p. 337)
  3. ^ a b (植村ほか 2015, p. 428)
  4. ^ a b c d e (林 & 名嘉 2022, p. 244)
  5. ^ a b (大場 1997, p. 22–23)
  6. ^ a b (池原 1979, p. 73)
  7. ^ a b (白井 1980, p. 30)
  8. ^ a b (天野 1982, p. 168–169)
  9. ^ a b c (海洋博記念公園管理財団 1997, p. 172)
  10. ^ a b (新里 & 嵩原 2002, p. 112)
  11. ^ a b c (屋比久 2006, p. 53)
  12. ^ a b c d (平良ほか 2009, p. 106)
  13. ^ a b c (大川 & 林 2016, p. 388)
  14. ^ a b c (日本インドア・グリーン協会 2020, p. 262)
  15. ^ a b (沖田原 2021, p. 450)
  16. ^ Cestrum nocturnum L. | Plants of the World Online | Kew Science” (英語). Plants of the World Online. 2024年11月9日閲覧。
  17. ^ (L.H.Bailey Hortorium, Cornell University 1976)

参考文献

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  • 池原直樹「ヤコウカ」『沖縄植物野外活用図鑑 第2巻 栽培植物』新星図書出版、1979年。 
  • 白井祥平「ヤコウカ」『沖縄園芸植物大図鑑』 4巻《熱帯花木》、沖縄教育出版、那覇市、1980年。 
  • 天野鉄夫「ヤコウカ」『琉球列島有用樹木誌』琉球列島有用樹木誌刊行会、1982年。 
  • 大場秀章 著「ヤコウカ」、岩槻邦男ら監修 編『朝日百科 植物の世界』 3巻、朝日新聞社、東京、1997年、22–23頁。ISBN 9784023800106 
  • 海洋博記念公園管理財団「ヤコウカ」『沖縄の都市緑化植物図鑑』新星出版、那覇市、1997年。ISBN 9784902193732 
  • 新里孝和; 嵩原建二「ヤコウカ」『伊江島の植物図鑑』伊江村教育委員会、2002年。 
  • 屋比久壮実「ヤコウボク」『花ごよみ 亜熱帯沖縄の花』アクアコーラル企画、2006年。ISBN 4990191730 
  • 平良一男; 新里隆一・仲村康和・松田正則「ヤコウカ」『沖縄 花めぐり』沖縄都市環境研究会、2009年。 
  • 植村修二ほか編著「ヤコウカ」『増補改訂 日本帰化植物写真図鑑 第2巻 -Plant invader 500種-』全国農村教育協会、2015年。ISBN 9784881371855 
  • 大川智史; 林将之「ヤコウカ」『ネイチャーガイド 琉球の樹木 奄美・沖縄~八重山の亜熱帯植物図鑑』文一総合出版、東京都新宿区、2016年。ISBN 9784829984024 
  • 日本インドア・グリーン協会「ヤコウカ」『熱帯植物図鑑』誠文堂新光社、東京都文京区、2020年。ISBN 9784416918852 
  • 沖田原耕作「ヤコウカ」『おきなわの園芸図鑑 園芸植物とその名前』新星出版、那覇市、2021年。ISBN 9784909366832 
  • 勝山輝男 著「ヤコウカ」、大橋広好・門田裕一・木原浩・邑田仁・米倉浩司 編『フィールド版改訂新版 日本の野生植物』 2巻、平凡社、2021年、453頁。ISBN 9784582535396 
  • 林将之; 名嘉初美「ヤコウカ」『沖縄の身近な植物図鑑』ボーダーインク、2022年。ISBN 9784899824350 
  • Staff of the Liberty Hyde Bailey Hortorium of Cornell University, ed. (1976), Hortus Third: A Concise Dictionary of Plants Cultivated in the United States and Canada, ISBN 9780025054707 

外部リンク

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