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ムネエソ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ムネエソ
保全状況評価[1]
LEAST CONCERN
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 条鰭綱 Actinopterygii
亜綱 : 新鰭亜綱 Neopterygii
: ワニトカゲギス目 Stomiiformes
: ムネエソ科 Sternoptychidae
亜科 : ムネエソ亜科 Sternoptychinae
: ムネエソ属 Sternoptyx
: ムネエソ S. diaphana
学名
Sternoptyx diaphana
Hermann, 1781[2]
英名
Diaphanous hatchetfish

ムネエソ学名: Sternoptyx diaphana )は、ワニトカゲギス目ムネエソ科に属する中深層性の深海魚である。全世界の温帯熱帯域でみられ、日本でも太平洋岸に出現する。最大でも全長5 cm程度の小型魚であり、体は高くて短く、平行四辺形状の特徴的な体型を呈する。腹部には発光器を持ち、光のわずかに届く中深層でカウンターシェーディングの役割を果たしている。

分類

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ムネエソはワニトカゲギス目ムネエソ科ムネエソ属 Sternoptyx に分類される[3]。本種はフランスの博物学者ジャン・エルマンによって1781年に初記載されている。本種はムネエソ属のタイプ種である[4]

形態

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ムネエソ Sternoptyx diaphana

ムネエソは体高が高く、著しく側偏した体型を持ち、最大でも全長45 mmほどにしかならない小型魚である。体型は菱形から斜め後方に歪んだ平行四辺形になっている。口はほぼ垂直に開き、微小な歯をもつ。は小さく、眼は大きい。背鰭は9-12軟条臀鰭は13-14軟条からなる。臀鰭は体の中心よりやや前方から始まって尾柄部まで続き、その基底部には透明域がみられる。眼の下方と後方、鰓蓋、および体側下方には発光器が存在する。背側は暗色で、体側は銀色の体色を示す[5][6][7][8]

分布

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本種は全世界の温帯熱帯域の深海に生息するが、赤道近海では比較的まれである。水深300-1500 mの中深層海域で見られるが、水深600-900 mで水温が4-11℃程度の海域で最もよくみられる。近縁種と同様、日周鉛直移動英語版を行うとみられている[9]

日本では北海道から沖縄にかけての太平洋沿岸でみられる[7]

生態

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本種は小魚やオキアミ十脚類カイアシ類端脚類などを捕食する。大型の個体はより大きな生物を捕食する傾向がある。食性は地域によって異なるが、特定の生物を選り好みすることはなく、単に遭遇した獲物を捕食していると推測される[9]

他の中深層性魚類と同様、背側は暗い体色を示す一方で、腹部では発光器を用いて発光することにより、わずかに光の届く環境の中でカウンターシェーディングを利用して身を隠している[7]

保全状態

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本種は非常に広い生息域を持ち、個体数も多いことが推測されている。このことから国際自然保護連合は本種の保全状況について低危険種(LC)と評価している[1]

出典

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  1. ^ a b Harold, A. (2015). Sternoptyx diaphana. IUCN Red List of Threatened Species 2015: e.T18253296A21913860. doi:10.2305/IUCN.UK.2015-4.RLTS.T18253296A21913860.en. https://www.iucnredlist.org/species/18253296/21913860. 
  2. ^ Bailly, Nicolas (2015). "Sternoptyx diaphana Hermann, 1781". World Register of Marine Species. 2016年2月27日閲覧
  3. ^ ムネエソ”. 日本海洋データセンター(海上保安庁). 2020年11月1日閲覧。
  4. ^ Hermann, J. 1781. Schreiben an den Herausgeber über ein neues amerikanisches Fischgeschlecht, Sternoptyx diaphana, der durchsichtige Brust-Falten-Fisch. - Der Naturforscher 16: 8-36, Tab. I [= 1]. Halle.
  5. ^ The Fishes of the Indo-Australian Archipelago. Brill Archive. pp. 132–133. GGKEY:6JSRCF1TTR1. https://books.google.com/books?id=E50eAAAAIAAJ&pg=PA132 
  6. ^ McEachran, John; Fechhelm, Janice D. (2013). Fishes of the Gulf of Mexico, Vol. 1: Myxiniformes to Gasterosteiformes. University of Texas Press. p. 437. ISBN 978-0-292-75705-9. https://books.google.com/books?id=jZtrYzge92YC&pg=RA1-PA42 
  7. ^ a b c 遠藤広光 (2004年11月). “ムネエソ”. 今月の魚. 高知大学理学部理学科 海洋生物学研究室. 2020年11月1日閲覧。
  8. ^ ムネエソ”. 世界大百科事典 (コトバンク. 朝日新聞社、 Voyage Group. 2020年11月1日閲覧。
  9. ^ a b Hopkins, T.L.; Baird, R.C. (1973). “Diet of the hatchetfish Sternoptyx diaphana”. Marine Biology 21 (1): 34–46. doi:10.1007/BF00351190.