ミナミシビレタケ
ミナミシビレタケ | ||||||||||||||||||
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メキシコ・ベラクルスにて。
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分類 | ||||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||||
Psilocybe cubensis (Earle) Singer | ||||||||||||||||||
シノニム | ||||||||||||||||||
シビレタケモドキ | ||||||||||||||||||
和名 | ||||||||||||||||||
ミナミシビレタケ ニライタケ | ||||||||||||||||||
およその分布範囲。(含まれないが日本も自生)
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ミナミシビレタケ | |
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菌類学的特性 | |
子実層にひだあり | |
もしくは平坦 | |
もしくは上生形 | |
柄にはリングあり | |
胞子紋は紫 | |
生態は腐生植物 | |
食用: 向精神性 |
ミナミシビレタケ(Psilocybe cubensis)は、幻覚作用を持った化合物として知られるシロシビン、シロシンを含んだ菌類の1種である。子実体としてキノコを形成することから、幻覚キノコと説明されることもある。栽培は容易であり、マジックマッシュルームとしてよく販売されていた種の1つでもある。菌類のヒメノガステル科に属し、以前はStropharia cubensisとされていた。英語圏での俗名はgolden tops、cubes、gold capsなど。南米ではスペイン語でCucumelo。
分類と命名
[編集]本種は、1906年に、キューバのフランクリン・サムナー・アールによって最初に記述された[1]。 1907年に、トンキンのナルシス・テオフィル・パトゥイラールによってNaematoloma caerulescensとして同定され[2]、一方で1941年にフロリダ州のウィリアム・マリルがStropharia cyanescensとした[3]。 これらの命名は、後にPsilocybe cubensisの別名として割り当てられた[4][5]。日本では1967年に八重島諸島と沖縄本島の標本から、宮城元助によりシビレタケモドキとの仮称がつけられ、1996年に京堂健がナンヨウシビレタケとした[6]。
Psilocybe(シビレタケ)は、ギリシャ語の psilos (ψιλος) と kubê (κυβη) に由来し[7]、はげ頭 (bald head) ということである。Cubensisは、アールによって発見されたキューバを指す。
ゲノム
[編集]Dirk Hoffmeisterらの研究チームは、2017年に、本種とシロシベ・キアネセンス (Psilocybe cyanescens)の全ゲノム配列を明らかにし、さらにはキノコの遺伝子を大腸菌にスプライシングし、医薬品としての注目が集まる中で工業規模のシロシビンの生産を可能とする体制が整っている[8]。
特徴
[編集]- 傘:
- ひだ:
- 柄: 長さ4–15 cm、幅.5–1.5 cmで、成熟につれ白から黄味がかっていき傷つけると青変あるいは青緑変する。
- 味: でんぷん質。
- 匂い: 同上。
- 胞子紋: 青紫系の茶。
- 顕微鏡的特徴: 胞子は、11.5–17 x 8–11 µmで楕円形に近く、担子器に4つの胞子があり、胞子は時に2、3個であり、側シスチジアと縁シスチジア(キノコの部位#シスチジア) が存在する[9]。
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ミナミシビレタケ。
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ひだ。
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柄。
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胞子、拡大1000倍。
キューバで発見された。
日本では沖縄に自生している[10]。
近縁種に、同じく糞を好むナンヨウシビレタケ (Psilocybe capitulata) は、沖縄県石垣島の糞に生育し2011年に新種登録されている[6]。
毒
[編集]ミナミシビレタケは、シロシビン含有のキノコとしておそらく最も広く使われた。主な向精神性の化合物は以下である。
- シロシビン (4-ホスホリルオキシ-N,N-ジメチルトリプタミン)
- シロシン (4-ヒドロキシ-N,N-ジメチルトリプタミン)
- ベオシスチン (4-ホスホリルオキシ-N-メチルトリプタミン)
- ノルベオシスチン (4-ホスホリルオキシトリプタミン)
日本では、シロシン、シロシビンを含有するきのこ類の、故意の所持・使用は規制されている。各国では規制は様々である(マジックマッシュルーム#法規制)。
含有されるシロシンとシロシビンの濃度は、高速液体クロマトグラフィーによる測定で、キノコ全体の0.14–0.42%、乾燥重量では0.37–1.30%、傘では0.17–0.78%、茎では0.09–0.30%であった[11]。
個人差はあるが、サイケデリック作用を生じるためには、最低1グラムの乾燥ミナミシビレタケのキノコが経口摂取されれば、適度な作用があらわれる。軽い効果であれば、0.25–1グラムである。1–2.5グラムでは中等度の効果が生じる。2.5グラム以上では強い効果が生じる[12]。
幻覚性があると報告されていた苔癬のディクチオネマ・ワオラニ (Dictyonema huaorani) から、本種と共通する幻覚性物質の存在が示唆されている[13]。
栽培
[編集]テレンス・マッケナと弟のデニス・マッケナは、1970年代に アマゾン熱帯雨林から帰還し『シロシビン―マジックマッシュルーム栽培ガイド』Psilocybin: Magic Mushroom Grower's Guideを出版し、マジックマッシュルーム栽培の(以前の手法を元にした)新しい手法をもたらし、またシロシビン含有キノコの中でミナミシビレタケの栽培が最も簡単だと断言していた[14]。
脚注
[編集]- ^ Earle FS. “Algunos hongos cubanos” (Spanish). Información Anual Estación Central Agronomica Cuba 1: 225–42 (p.240-241) .
- ^ Patouillard NT (1907). “Champignons nouveaux du Tonkin” (French). Bulletin de la Société Mycologique de France 23 (1).
- ^ Murrill, W.A. (May–June 1941). “Some Florida Novelties”. Mycologia 33 (3): 279–287. doi:10.2307/3754763. JSTOR 3754763 .
- ^ “Naematoloma caerulescens Pat. 1907”. MycoBank. International Mycological Association. 2010年10月18日閲覧。
- ^ “Stropharia cyanescens Murrill 1941”. MycoBank. International Mycological Association. 2010年10月18日閲覧。
- ^ a b 寺嶋芳江監修『南西日本菌類誌: 軟質高等菌類』東海大学出版部、2016年、252-253頁。ISBN 978-4-486-02085-1。オリジナルの2018年8月時点におけるアーカイブ 。 また少し情報量が減った記述: ナンヨウシビレタケ(妖菌図鑑)
- ^ Cornelis, Schrevel (1826). Schrevelius' Greek lexicon, tr. into Engl. with numerous corrections. p. 358 2011年10月4日閲覧。
- ^ “Scientists Unlock the Mystery of Magic Mushrooms, Allowing for Mass Production of Psilocybin”. Psychedelic Frontier (2017年4月19日). 2018年2月1日閲覧。
- ^ Stamets, Paul (1996). Psilocybin Mushrooms of the World. Ten Speed Press. pp. g. 108. ISBN 0-89815-839-7
- ^ 玉那覇康二「沖縄県で発生している自然毒中毒事例」『マイコトキシン』第63巻第1号、2013年1月31日、55-65頁、doi:10.2520/myco.63.55、NAID 10031161946。
- ^ Tsujikawa, K.; Kanamori, T.; Iwata, Y.; Ohmae, Y.; Sugita, R.; Inoue, H.; Kishi, T. (December 2003). “Morphological and chemical analysis of magic mushrooms in Japan”. Forensic Science International 138 (1–3): 85–90. doi:10.1016/j.forsciint.2003.08.009. PMID 14642723 .
- ^ Erowid (2006年). “Erowid Psilocybin Mushroom Vault: Dosage” (shtml). Erowid. 2006年11月26日閲覧。
- ^ Schmull, Michaela; Dal-Forno, Manuela; Lücking, Robert; Cao, Shugeng; Clardy, Jon; Lawrey, James D (2014). “Dictyonema huaorani(Agaricales: Hygrophoraceae), a new lichenized basidiomycete from Amazonian Ecuador with presumed hallucinogenic properties”. The Bryologist 117 (4): 386–394. doi:10.1639/0007-2745-117.4.386. ISSN 0007-2745.
- ^ “Terence McKenna's books in print”. December 17, 2015閲覧。
さらに読む
[編集]- Guzman, G. The Genus Psilocybe: A Systematic Revision of the Known Species Including the History, Distribution and Chemistry of the Hallucinogenic Species. Beihefte zur Nova Hedwigia Heft 74. J. Cramer, Vaduz, Germany (1983) [now out of print].
- Guzman, G. "Supplement to the genus Psilocybe." Bibliotheca Mycologica 159: 91-141 (1995).
- Nicholas, L.G.; Ogame, Kerry (2006). Psilocybin Mushroom Handbook: Easy Indoor and Outdoor Cultivation. Quick American Archives. ISBN 0-932551-71-8
- Oss, O.T.; O.N. Oeric (1976). Psilocybin: Magic Mushroom Grower's Guide. Quick American Publishing Company. ISBN 0-932551-06-8
- Stamets, Paul; Chilton, J.S. (1983). Mushroom Cultivator, The. Olympia: Agarikon Press. ISBN 0-9610798-0-0
- Stamets, Paul (1996). Psilocybin Mushrooms of the World. Berkeley: Ten Speed Press. ISBN 0-9610798-0-0
関連項目
[編集]外部リンク
[編集]- ミナミシビレタケ Psilocybe cubensis(大菌輪)
- ミナミシビレタケ in Index Fungorum
- The Ones That Stain Blue Studies in ethnomycology including the contributions of Maria Sabina, Dr. Albert Hofmann and Dr. Gaston Guzman.
- Erowid Psilocybin Mushroom Vault
- Mushroom John's Tale of the Shrooms: Psilocybe cubensis (200 photographs and Description