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マリア・ユーイング

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
マリア・ユーイング

マリア・ユーイング(Maria Louise Ewing、1950年3月27日 - 2022年1月9日)は、アメリカ合衆国出身のオペラ歌手。ソプラノメゾソプラノいずれの役もこなし、歌唱と合わせてその演技にも定評があった。

生涯とキャリア

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アメリカ合衆国ミシガン州デトロイトで4人兄弟の末子として生まれる[1]。母親のヘルミナ(旧姓フェラール)はオランダ人、父親のノーマン・I・ユーイングはスー族のネイティブ・アメリカン、スコットランド人及びアフリカ系アメリカ人の家系であった[1][2][3][4][5]オハイオ州クリーブランドニューヨークで学ぶ。

1976年、メトロポリタン・オペラにおいてモーツァルトの『フィガロの結婚』でデビュー。ヨーロッパでの初舞台はスカラ座ドビュッシー作曲『ペレアスとメリザンド』のメリザンド役だった。『カルメン』、モーツァルト作『コジ・ファン・トゥッテ』のドラベッラ、『サロメ』、アルバン・ベルク作『ヴォツェック』のマリー、『ムツェンスク郡のマクベス夫人』などをレパートリーとする。特によく知られているのが、リヒャルト・シュトラウス作『サロメ』のタイトルロールにおけるデリケートな解釈である。オスカー・ワイルドによるオリジナルの戯曲の演出では、「7つのヴェールの踊り」のラストで、サロメはヘロデ王の足元に裸で横たわるとされている。当時多くの歌手がボディストッキングを着用していたが、ユーイングは実際に全裸となってこの場面の演技に臨んだ[6][7]。また、彼女はヘンリー・パーセル作『ディドとエネアス』の舞台にも登場している。

ユーイングの出演した作品のディスコグラフィーには、『サロメ』と『カルメン』の映像、『ムツェンスク郡のマクベス夫人』及び『ペレアスとメリザンド』の録音があるほか、ラヴェルベルリオーズ、ドビュッシーやアメリカのポピュラー音楽の歌曲の録音も残されている。また、グラインドボーン音楽祭で『セビリアの理髪師』(1982)のロジーナ役を演じた際の公演のDVDも入手可能である。

ユーイングはジャズのライブパフォーマンスも行っており、ロンドンのロニー・スコッツ・ジャズ・クラブではバンド「キマエラ」と共演した。

1982年、イギリスの舞台監督であるサー・ピーター・ホール英語版と結婚する。1990年離婚。結婚中、「レディ・ホール」と公式には呼ばれていた。 二人の間の娘は女優のレベッカ・ホールである。ユーイングは、自身の生まれ故郷の近くに居を構えており[8]、2021年1月9日、その住居で71歳の生涯を閉じた[9][10]

脚注

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  1. ^ a b Current biography yearbook, Volume 51.
  2. ^ Isenberg, Barbara (1992年11月8日). “MUSIC No-Risk Opera? Not Even Close Maria Ewing, one of the most celebrated sopranos in opera, leaps again into the role of Tosca, keeping alive her streak of acclaimed performances while remaining true to herself”. Los Angeles Times. http://web.mit.edu/lugao/MacData/afs/net/user/tytso/usenet/americast/latimes/misc/364 2010年2月6日閲覧。 
  3. ^ McLellan, Joseph (1990年11月15日). “Article: Extra-Sensuous Perception; Soprano Maria Ewing, a Steamy 'Salome'”. The Washington Post. オリジナルの2012年10月22日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20121022180005/http://www.highbeam.com/doc/1P2-1158782.html 2010年2月6日閲覧。 
  4. ^ Marsh, Robert C. (1988年12月18日). “Article: Growth of Maria Ewing continues with `Salome' // Role of princess proves crowning achievement”. Chicago Sun-Times. オリジナルの2012年10月22日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20121022180018/http://www.highbeam.com/doc/1P2-3919649.html 2010年2月6日閲覧。 
  5. ^ The International Who's Who 2004. Routledge. (2003). pp. 508. ISBN 1-85743-217-7 
  6. ^ John Rockwell (1989年4月20日). “Review/Opera; Maria Ewing in Strauss's 'Salome' in Los Angeles”. New York Times. http://query.nytimes.com/gst/fullpage.html?res=950DEEDF153DF933A15757C0A96F948260 2008年9月14日閲覧。 
  7. ^ Anthony Holden (2008年2月24日). “Don't go and lose your head...”. The Observer. http://www.guardian.co.uk/music/2008/feb/24/classicalmusicandopera.livereviews 2008年9月14日閲覧。 
  8. ^ Erica Jeal (2003年3月11日). “'I feel I belong'”. The Guardian. http://www.guardian.co.uk/music/2003/mar/11/classicalmusicandopera.artsfeatures 2008年9月14日閲覧。 
  9. ^ “Opera singer Maria Ewing, wife of Peter Hall, dead at 71” (英語). The Intelligencer. (2022年1月10日). https://www.theintelligencer.com/news/amp/Opera-singer-Maria-Ewing-wife-of-Peter-Hall-16765171.php 2022年1月11日閲覧。 
  10. ^ “訃報 〓 マリア・ユーイング, アメリカのメゾ・ソプラノ歌手”. 月刊音楽祭. (2022年1月12日). https://m-festival.biz/27485 2022年1月31日閲覧。 

外部リンク

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