マメジカ科
マメジカ科 | ||||||||||||||||||||||||
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分類 | ||||||||||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||||||||||
Tragulidae Milne-Edwards, 1864[1] | ||||||||||||||||||||||||
和名 | ||||||||||||||||||||||||
マメジカ科[2][3][4] |
マメジカ科 (マメジカか、Tragulidae) は、哺乳綱偶蹄目(鯨偶蹄目とする説もあり)に分類される科。
属名の「トラグルス」はギリシャ語でヤギに似たもの、英名で使われる「Chevrotains」はフランス語で小さなヤギを意味する。同じく英名「マウス・ディア」は<ネズミジカ>の意味である。[5]
形態
[編集]大型種のミズマメジカで体重8 - 13キログラム、小型種のジャワマメジカ類では主に体重2キログラム未満[3]。赤褐色や黄褐色の体毛で被われ、白い斑紋や斑点が入る種もいる[3]。
角はない[2][3]。眼は大型[3]。下顎に臭腺(下顎腺)があるが、マメジカ類では発達するものの、ミズマメジカやインドマメジカ類では痕跡的[2]。側蹄も含め、蹄が発達する[2]。
上顎の門歯がなく、下顎の犬歯は門歯と類似した形状となり繋がる[2][3]。小臼歯の歯冠は鋭い[2]。これは食物をすりつぶすのではなく、切断に適した構造をしている[3]。舌は長い[3]。胃は腹腔内の4分の3を占めるほど大型で、3室(第1・第2・第4室)に分かれる[3]。他の反芻動物における第3室を欠くが、ミズマメジカは痕跡的に第3室がある[3]。
オスは上顎の犬歯が伸び続ける[2][3]。メスの上顎の犬歯は小型で、外観からはわからない[3]。
ミズマメジカは時々昆虫やカニ類を食べ、死体あさりをして肉や魚を口にすることがある[6]。
マメジカの残す原始的な部分として、ブタのような非反芻動物に近い特徴をもつことが挙げられる。足はほっそりしていて短く、それほど敏捷に動くことはできない。しかし体が小さいので、彼らが棲み家にするような藪の中は楽に走り抜けることができる。
分類
[編集]2004年に頭骨や毛皮といった形態の比較から、旧オオマメジカT. napuと旧ジャワマメジカT. javanicusを細分化する説が提唱された[7]。2005年には頭骨や毛皮といった形態の比較から、M. kathygreの新種記載も含め旧インドマメジカMoschiola meminnaを3種に分割する説が提唱された[8]。
以下の現生種の分類・英名は、Moschiola属を除いてGrubb(2005)に従う[1]。和名は、川田ら(2005)に従う[4]。
- ミズマメジカ属 Hyemoschus
- Hyemoschus aquaticus ミズマメジカ Water chevrotain
- Moschiola属 - 分類はGroves & Mejiaard(2005)に従う[8]
- Moschiola indica(旧インドマメジカM. meminnaからインド個体群を分割)
- Moschiola meminna (スリランカの乾燥帯の個体群のみを残し分割)
- Moschiola kathygre(旧インドマメジカM. meminnaからスリランカの湿地帯の個体群を分割)
- マメジカ属 Tragulus - 分類の変移はMejiaard & Groves(2004)に従う[7]
- Tragulus javanicus ジャワマメジカ Java mouse-deer(ジャワ島個体群のみを残し分割)
- Tragulus kanchil ヒメマメジカ Lesser mouse-deer(ジャワマメジカの大部分が分割)
- Tragulus napu オオマメジカ Greater mouse-deer
- Tragulus nigricans フィリピンマメジカ Philippine mouse-deer(オオマメジカのフィリピン個体群が分割)
- Tragulus versicolor ベトナムマメジカ Vietnam mouse-deer(オオマメジカのベトナム個体群が分割)
- Tragulus williamsoni ウィリアムソンマメジカ Williamson's mouse-deer(ジャワマメジカから分割。タイ北部産の模式標本のみ)
絶滅種は6属に分類される[9]。
- Dorcatherium属
- Dorcabune属
- Afrotragulus属 Sánchez, Quiralte, Morales and Pickford, 2010 [11]
- Afrotragulus moruorotensis (previously "Dorcatherium" moruorotensis Pickford, 2001) (中新世初期) ケニア共和国 Moruorotより
- Afrotragulus parvus (previously "D." parvus Withworth 1958) (中新世初期)、ケニア共和国 ルシンガ島より
- Siamotragulus属
- Siamotragulus sanyathanai Thomas, Ginsburg, Hintong and Suteethorn, 1990 (中新世中期)、タイ王国 ラムプーン県より
- Siamotragulus haripounchai Mein and Ginsburg, 1997 (中新世)、タイ王国 ラムプーン県より
- Yunnanotherium属
- Archaeotragulus属 [12]
- Archaeotragulus krabiensis Metais, Chaimanee, Jaeger and Ducrocq, 2001 (始新世後期)、 タイ王国 クラビー県より。
- Krabitherium属
- Krabitherium waileki Metais, Chaimanee, Jaeger and Ducrocq, 2007 (始新世後期)、 タイ王国 クラビー県より。[15]
生態
[編集]主に薄明薄暮時に活動し、昼間は樹洞や岩陰などで休む[3]。繁殖期を除き、単独で生活する[3]。視覚的なコミュニケーションは行わず、鳴き声や臭いつけなどの聴覚的・嗅覚的コミュニケーションを行う[2]。ミズマメジカは肛門周辺の臭腺(肛門腺)や包皮腺から分泌物を糞や尿に混ぜ、行動圏に臭いつけ(マーキング)を行う(縄張り防衛を行うかは不明)[2]。休息時にはまず腰を下ろしてから(イヌのお座りの姿勢)、前肢を畳み込む姿勢をとる[2][3]。
主に植物の葉や落果を食べるが[2]、昆虫・魚類などを食べることもある[3]。
交尾は長く、性行動は単純[2]。出産後に母親は胎盤を食べる[2]。
種によってある程度の違いはあるが、子供は約3ヶ月で離乳し、5-10ヶ月の間で成熟する。両親が面倒をみることは限られる。彼らには他の反芻動物が持っているような類の臭腺は無いが、顎先の腺で仲間かそうでないかを見分ける。
一部の種は水が得意である。彼らは、捕食者や、その他歓迎できない侵入者が接近した時、長い時間潜水することで危機から逃れることができる。このような水に親和性のある小型の偶蹄類がクジラ類への進化の道を辿ったのではないかとも言われている[16]。
出典
[編集]- ^ a b Peter Grubb, "Order Artiodactyla," Mammal Species of the World, (3rd ed.), Don E. Wilson & DeeAnn M. Reeder (ed.), Johns Hopkins University Press, 2005, Pages 637 - 722
- ^ a b c d e f g h i j k l m G. Dubost 「マメジカ」三浦慎悟訳『動物大百科 4 大型草食獣』、平凡社、1986年、72 - 73頁。
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p 福田勝洋 「偶蹄類の祖先の姿 マメジカ」『動物たちの地球 哺乳類II 6 シカ・プロングホーンほか』第9巻 55号、朝日新聞社、1992年、198 - 200頁。
- ^ a b 川田伸一郎他 「世界哺乳類標準和名目録」『哺乳類科学』第58巻 別冊、日本哺乳類学会、2018年、1 - 53頁。
- ^ 荒俣宏 世界大博物図鑑 第5巻 [哺乳類] 1988-4-25
- ^ Kingdon, J. (1997). The Kingdon Field Guide to African Mammals. Academic Press. ISBN 0-12-408355-2
- ^ a b E Meijaard & C. P. Groves, "A taxonomic revision of the Tragulus mouse-deer (Artiodactyla)," Zoological Journal of the Linnean Society, Volume 140, 2004, Pages 63 - 102.
- ^ a b C. P. Groves & E. Meijaard, "Intraspecific variation in Moschiola, the Indian Chevrotain," Raffles Bulletin of Zoology Supplement, Volume 12, 2005, Pages 413 - 421.
- ^ Farooq, U., Khan, M.A., Akhtar, M.and Khan, A.M. 2008. Lower dentition of Dorcatherium majus (Tragulidae, Mammalia) in the Lower and Middle Siwaliks (Miocene) of Pakistan. Tur. J. Zool., 32: 91–98.
- ^ E. Thenius 1950. Über die Sichtung und Bearbeitung der jungtertiären Säugetierreste aus dem Hausruck und Kobernaußerwald (O.Ö.) in Verh. Geol. B.-A. 51/2, pp 56
- ^ Israel M. Sánchez; Victoria Quiralte; Jorge Morales; Martin Pickford (2010). “A new genus of tragulid ruminant from the early Miocene of Kenya”. Acta Palaeontologica Polonica 55 (2): 177–187. doi:10.4202/app.2009.0087 .
- ^ Métais, G., Chaimanee, Y., Jaeger, J.-J. & Ducrocq S (2001). “New remains of primitive ruminants from Thailand: Evidence of the early evolution of the Ruminantia in Asia”. Zoologica Scripta 30 (4): 231. doi:10.1046/j.0300-3256.2001.00071.x. オリジナルの2011年7月22日時点におけるアーカイブ。 .
- ^ Terry A. Vaughan,James M. Ryan,Nicholas J. Czaplewski (2011-04-21). Mammalogy (5th ed.). ISBN 9780-7637-6299-5 April 4, 2012閲覧。
- ^ Sánchez, Israel M.; Quiralte, Victoria; Morales, Jorge; Pickford, Martin (2010). “A New Genus of Tragulid Ruminant from the Early Miocene of Kenya”. Acta Palaeontologica Polonica 55 (2): 177. doi:10.4202/app.2009.0087.
- ^ Paleobiology Database: Krabitherium. Paleodb.org. Retrieved on 2013-01-18.
- ^ “Aquatic deer and ancient whales”. BBC News. (2009年7月7日) 2010年3月26日閲覧。[出典無効]