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マニュファクチュール

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

マニュファクチュールとは、ムーブメント(時計の駆動装置)から自社一貫製造する時計メーカーを指す業界用語。原語はフランス語の"Manufacture d'horlogerie"。

エタ等のムーブメント・メーカーからムーブメントを購入して時計を組み立てるエタブリスール(établisseur )の反対語で、高度で幅広い技術を持っている証しとされる。

初めて自社一貫製造を取り入れたブランドはジャガー・ルクルトとされ[1]1866年に確立した。時計製造がまだ数百の小さな家内工房に依存していた当時、ジャガー・ルクルトは時計製作に関わる数多くの技術を一つ屋根の下に集結させた。

マニュファクチュールの定義

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マニュファクチュールと呼ばれている時計メーカーでも、全製品を自社製ムーブメントで賄っているわけではなく自社製ムーブメントを使う製品ラインとムーブメントメーカーから調達したムーブメントを使う製品ラインを分けているメーカーがほとんどである。特にクロノグラフに関してはパテック・フィリップロレックスでもムーブメントを自社製造できず、長らく外部からのムーブメント供給に頼ってきた。なお、ロレックスは2000年以降、自社開発・自社製造したクロノグラフ用ムーブメントCal.4130を使用している[2]

また、機械式時計の最も重要な基幹部品であるヒゲゼンマイの製造には極めて高度な技術力を要するため、ほとんどのマニュファクチュールでも自社製造できず、自社でヒゲゼンマイを製造していると公表している時計メーカーは世界でわずか数社のみである[3]。世界最高級の時計をつくると評価されているパテック・フィリップをはじめとするスイス三大高級時計メーカーでも、ヒゲゼンマイは外部からの調達に依存しているのが実情である。

一方、セイコーやロレックスは針から文字盤、ケース、ヒゲゼンマイに至るまで全ての部品を自社で生産する「完全なマニュファクチュール」と呼べるメーカーである[4][2]。また、シチズンも製造装置に始まりヒゲゼンマイ、ムーブメントに至るまで自社生産しており、2010年5月に約30年ぶりの新型自社ムーブメントを発表したことに伴い、改めてマニュファクチュール宣言をした[5]

近年は、ムーブメントの設計のみを行い[6]、製造は他社に任せるファブレス・マニュファクチュールも増えてきている。またノモスのようにムーブメントメーカーからムーブメントの設計図とその使用権を購入して生産する会社も存在する。

また、自社製ムーブメントを謳っていてもムーブメントメーカーのムーブメントとの類似を指摘され流用を疑われる例がある。

以上に述べたようにマニュファクチュールとエタブリスールとの間にはっきりした境界線はなく、近年、時計メーカーや時計販売店がマーケティング用語として「マニュファクチュール」を乱用する傾向が続いている。

ブランドの例

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脚注

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  1. ^ ジャガー・ルクルトが“真のマニュファクチュール”と言われる理由”. OPENERS (2019年12月6日). 2024年8月31日閲覧。
  2. ^ a b ロレックス公式サイト
  3. ^ 自製したヒゲゼンマイを搭載した腕時計をラインナップしているメーカーの例としてはセイコーA.ランゲ&ゾーネパルミジャーニ・フルリエ英語版、ロレックスなどがある。世界文化社『傑作腕時計年鑑2006』『同2007』の各ブランドの項目ないしムーブメント図鑑のページを参照。また、ロレックス、パテック フィリップ、ブレゲは2006年にシリコン製ヒゲゼンマイを共同開発すると発表している。オメガも2007年にシリコン製ヒゲゼンマイを採用した自社ムーブを発表している。ほかには2007、2008年の各時計誌のスイス見本市特集号で自社ヒゲゼンマイを搭載するH.モーザーの腕時計が紹介されている。ロレックスは2005年以降、自社開発したブルーパラクロム・ヒゲゼンマイを採用している。
  4. ^ グランドセイコー50年の本質 [1]
  5. ^ 新型機械式ムーブメント搭載『ザ・シチズン』 オートマティック を創立記念日に発売~マニュファクチュールとして約30年ぶりに発表する機械式時計~』(プレスリリース)シチズン時計株式会社、2010年5月14日http://citizen.jp/news/2010/20100514.html2018年6月13日閲覧 
  6. ^ 設計を独立時計師に委託する場合もある

参考文献

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