マシュー・ベラミー
マシュー・ベラミー | |
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マシュー・ベラミー(2018年) | |
基本情報 | |
出生名 | Matthew James Bellamy |
生誕 | 1978年6月9日(46歳) |
出身地 | イングランド ケンブリッジ |
ジャンル |
オルタナティヴ・ロック プログレッシブ・ロック シンフォニック・ロック |
職業 |
ミュージシャン 作曲家 |
担当楽器 |
ボーカル ギター ピアノ |
活動期間 | 1994年 - |
レーベル | ワーナー・ブラザース・レコード |
共同作業者 | ミューズ |
公式サイト | muse.mu |
マシュー・ベラミー(本名: Matthew James Bellamy[1]、1978年6月9日[1] - )は、イギリスのミュージシャン[2]。1994年からミューズのフロントマンとしてボーカル、ギター、キーボード、ピアノ、作詞、作曲などを担当。イングランド・ケンブリッジ出身。日本国外での主な表記名はMatt Bellamy[1]。
略歴
[編集]イングランドのケンブリッジで生まれる[1]。父親はトルネイドースのギタリストであったジョージ・ベラミー[1]。
6歳からピアノを独学で始めて間もないころ、地元のコンテストで優勝[3]。10歳までをケンブリッジで過ごしたのち、ティンマスに移り住む。
13歳、14歳ごろに1990年代初期の景気後退による父親の破産を経て両親が離婚し、母と暮らすようになる。このころの苦境が自分を成功へと駆り立てたとのちに『ザ・サン』のインタビューで語っている[4]。
学生時代にドミニク・ハワード、クリス・ウォルステンホルムと知り合い、前身バンドでの活動を経て1994年にミューズに改名して本格的に活動を開始する。
2017年にグレアム・コクソンのレーベル「Transcopic Records」をコクソンと共同で運営していたジェイミー・デイヴィスの誕生日パーティーで、ビートルズのカバーを演奏する目的でバンド「The Jaded Hearts Club」を結成し、ベースを担当[5]。活動はその後も続き、デイヴィス、コクソン、ラスカルズの元ボーカリストであるマイルズ・ケイン、ナイン・インチ・ネイルズのドラマーであるIlan Rubin、ザ・ズートンズのドラマーであるショーン・ペイン、ミューズのハワード、ウォルステンホルム、ジェットのニック・セスターらが参加した。のちにビートルズ以外もカバーするようになり、2020年10月にアルバム『You've Always Been Here』をプロデュースし、発表した[6]。
2019年4月に発売されたテレビドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』のコンピレーションアルバム『For the Throne』で初のソロ楽曲「Pray」を発表し、2021年7月にミューズのカバー3曲を含む初のソロアルバム『Cryosleep』をレコード・ストア・デイに合わせて発売した[7][8]。
人物
[編集]極端な気質であると多くのインタビューで自らコメントしており、楽曲に見られる静から動の爆発や、ステージ上での演劇がかった派手な立ち回り、宇宙に対する誇大妄想的興味などが特徴。デビュー時からセカンドアルバムツアーまでの間は黒や金、赤、青など、頻繁に髪の色を変えていた。バナナと赤ワインを好む。
私生活
[編集]2010年に女優のケイト・ハドソンと交際を始め、2011年4月に婚約、7月には男児が生まれた[9][10]。2014年12月に婚約を解消した[11]。
2015年2月にモデルのエル・エヴァンスと交際を始め、2017年12月に婚約を発表、2019年8月に結婚した[12][13][14]。2020年6月に女児、2024年5月に男児が生まれた[15]。
2017年2月にロサンゼルス・ブレントウッドにあるピート・サンプラスの元自宅である邸宅を購入した[16]。
政治思想
[編集]ノーム・チョムスキーに近い左派リバタリアンを自認している[17][18]。政策としては、英国王制の廃止、貴族院の廃止、地方分権、脱炭素化、地価税、企業規模の制限を支持し、シリコンバレーの再生可能エネルギーに焦点を当てた新興企業に投資している[17]。ベラミーは「彼らのアイデアや未来へのビジョンを聞くと、私たちが直面している大きな問題の多くが解決できるかもしれないという純粋な希望が湧いてくるのです」と話している[17]。
2022年には自身の政治的見解を "meta-centrism"(メタ中心主義)という言葉で表現した。個人に対してはリベラルでリバタリアン的な価値観の間で揺れ動くが 、土地の所有権や自然、エネルギーの分配などについては、より社会主義的であるとしている[19]。
かつてはUFO、デイビッド・アイク、アメリカ同時多発テロ事件陰謀説などの陰謀論に関心を示し[18]、2016年には「NMEが選ぶ、クレイジーな陰謀論を信じるミュージシャン13人」に選ばれる[20]。
のちに陰謀論は右翼政治に乗っ取られたものであるとし、合理的、経験的、現実的、具体的なことに集中するようになったとして陰謀論に否定的になる[18]。2022年には陰謀論をやらせと評し、陰謀論が魅力的であるのは差し迫った問題から目をそらすためであり、たとえ邪悪な存在であってもどこかで人間が支配しているのではないかという安心感があるからであるとしている[17]。
新型コロナウイルス感染症の世界的流行においては、COVID-19ワクチンの予防接種を受け、マスクによる対策を支持した[19]。
特徴と影響
[編集]歌手としてはジェフ・バックリィの影響を受けたビブラート、ファルセット、メリスマティックなフレーズを使う[21]。バックリィの1994年のアルバム『グレース』を聴くまでは、自分の高音の歌声がロックに適しているとは思っていなかったと語っている[22]。2020年にはバックリィが『グレース』で使用したフェンダー・テレキャスターを購入し、The Jaded Hearts Clubおよびミューズの2022年のアルバム『ウィル・オブ・ザ・ピープル』のレコーディングで使用した[23][24]。
ギタリストとしてはカート・コバーンとジミ・ヘンドリックスの影響を受け、彼らのカオスな部分、制御不能な部分を賞賛している[25]。ラテン音楽やスペインのギター音楽からも影響を受け、ロックとは異なるハーモニーや楽曲構造、異なる種類の情熱の世界を切り開いたと語っている[26]。
ギターは主にMansonのカスタマイズギターを使用し[27]、"Mattocasters"という名称がつけられている[1]。2000年代初頭からManson Guitar Works社と共同でエレキギターを製作[28]。タッチコントロール可能なMIDIコントローラーを内蔵させ、KORG社製の「KAOSS PAD QUAD - DYNAMIC EFFECTS PROCESSOR」を操作している[27][29]。ピックアップは基本的にリアを好み、フロントにはサステイナーを搭載している[23]。2019年にはManson社の株式の過半数を購入した[30]。Manson以外ではフェンダー・ストラトキャスターをフロント・ピックアップのサウンドが欲しい時に使用していたが、『ウィル・オブ・ザ・ピープル』では前述のバックリィのテレキャスターがストラトキャスターの代わりに使用されている[23]。
ギターでエレクトロニックなサウンドを作り出すために、アルペジエーターやピッチシフトエフェクトを多用している。手法についてはヘンドリックスやトム・モレロの影響を受けている[31]。ディストーションはZ.VEX社製の「Fuzz Factory」を多用[32]。
ピアニストとしては、アルペジオを多用。「スペース・ディメンシア」「バタフライズ・アンド・ハリケーンズ」でセルゲイ・ラフマニノフ、「アイ・ビロング・トゥ・ユー」でカミーユ・サン=サーンス、「サンバーン」のイントロでヨハン・セバスティアン・バッハの「Prelude No. 1 in C」、「ユナイテッド・ステイツ・オブ・ユーラシア」でフレデリック・ショパンなど、後期古典派やロマン派の作曲家を示唆したり、引用したりすることが多い[33]。
ピアノをはじめたきっかけはレイ・チャールズやスティービー・ワンダーなどのブラックミュージックであった。トム・ウェイツのファンでもあり、「彼の歌詞には、人生のすべてが詰まっている」と発言した[1]。
作詞家としては、政治的でディストピア的なテーマが多い。作詞に影響を与えた本には、ジョージ・オーウェルの『1984年』、ジョン・パーキンスの『エコノミック・ヒットマン』、ミチオ・カクの『Hyperspace』、ゼカリア・シッチンの『The 12th Planet』、キャシー・オブライエンの『トランスフォーメーション・オブ・アメリカ』などがある[34][35]。
受賞・記録など
[編集]- 『ケラング!』「ロック界で最もセクシーな人物(sexiest person in rock)」28位(2005年4月)
- 『コスモポリタン』「最もセクシーなロッカー(sexiest rocker)」(2003年、2004年)
- 『NME』「偉大なロックンロール・ヒーロー(greatest "rock 'n' roll hero")」14位
- 『NMEアワーズ』「最もセクシーな男性賞(Sexiest Male Award)」(2007年[36]、2009年、2010年、2011年、2013年、2014年)
- 『NMEアワーズ』「ヒーロー・オブ・ザ・イヤー(Hero of the Year)」(2012年[37])
- ギネス世界記録「ツアー中に壊したギターの数」140本(2010年[38])
- 『Q』「読者が選ぶ歴代ベスト・フロントマン(best front man of all time by the readers)」8位(2010年4月)
- BBC Radio 6 Music「過去30年間で最も優れたギタリスト(best guitarist of the last 30 years)」3位(2010年[39])
作品
[編集]スタジオ・アルバム
[編集]- 『Cryosleep』(2021年7月17日、Globalist Industries)
参加作品
[編集]映画
[編集]- ザ・バンク 堕ちた巨像(2009年、監督 トム・ティクヴァ) - 作曲で参加
楽曲
[編集]- アダム・ランバート「ソークド」(2009年、『フォー・ユア・エンターテイメント』収録) - 作曲
- キンブラ「90s Music」(2014年、『ザ・ゴールデン・エコー』収録) - ギターで参加
オーディオブック
[編集]アルバム
[編集]- 『For the Throne: Music Inspired by the HBO Series Game of Thrones』(2019年4月26日、コロムビア・レコード) - 『ゲーム・オブ・スローンズ』のコンピレーションアルバム。初のソロ楽曲「Pray」収録。
- 『You've Always Been Here』(2020年10月2日) - The Jaded Hearts Clubのプロデューサー、ベーシストとして
脚注
[編集]- ^ a b c d e f g “Matt Bellamy - Biography” (英語). IMDb. 2024年12月18日閲覧。
- ^ 現代外国人名録2016. “マシューベラミーとは? 意味や使い方”. コトバンク. 2024年12月19日閲覧。
- ^ Robbie Gennet (2005年6月). “Innocence and Absolution” (英語). keyboardmag.com. フューチャー・パブリッシング. 2006年11月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2006年11月8日閲覧。
- ^ “ミューズのマシュー・ベラミー、子供の頃の父親の破産が自分を成功へと駆り立てたと語る”. rockinon.com. 2024年12月19日閲覧。
- ^ “ミューズやブラーのメンバーらが率いるバンド=The Jaded Hearts Club、デビューSG“Nobody But Me”を発表!”. rockinon.com. 2024年12月19日閲覧。
- ^ “The Jaded Hearts Club: ‘If we’re playing Beatles songs and Paul McCartney’s singing, are we The Beatles?’” (英語). The Independent (2020年9月23日). 2024年12月15日閲覧。
- ^ Trendell, Andrew (2019年4月26日). “Listen to Rosalía, The Weeknd, Matt Bellamy, The National and more on new 'Game Of Thrones' album” (英語). NME. 2024年12月15日閲覧。
- ^ Trendell, Andrew (2021年4月8日). “Muse's Matt Bellamy to release 'Cryosleep' – a collection of solo recordings on Record Store Day” (英語). NME. 2024年12月15日閲覧。
- ^ Report, Post Staff (2011年4月27日). “Kate Hudson engaged to Muse frontman Matthew Bellamy” (英語). 2024年12月18日閲覧。
- ^ “Kate Hudson, Matthew Bellamy Have Baby” (英語). People.com. 2024年12月18日閲覧。
- ^ “Kate Hudson & Matt Bellamy Split: Couple Breaks Off Engagement” (英語). People.com. 2024年12月18日閲覧。
- ^ “Matthew Bellamy Is Engaged to Model Elle Evans”. E! Online (2017年12月24日). 2024年12月18日閲覧。
- ^ Peters, Mitchell (2017年12月24日). “Muse’s Matthew Bellamy and Model Elle Evans Get Engaged” (英語). Billboard. 2024年12月18日閲覧。
- ^ “Muse Frontman Matt Bellamy and Model Elle Evans Are Married” (英語). People.com. 2024年12月18日閲覧。
- ^ “Muse Frontman Matthew Bellamy and Wife Elle Evans Welcome Second Baby Together” (英語). People.com. 2024年12月18日閲覧。
- ^ “Pete Sampras Sells Los Angeles House to Matt Bellamy of Muse - Variety”. web.archive.org (2021年3月8日). 2024年12月18日閲覧。
- ^ a b c d Lynskey, Dorian (2022年8月5日). “Muse’s Matt Bellamy: ‘I’ve got to an age where I’m not so titillated by disaster’” (英語). The Guardian. ISSN 0261-3077 2024年12月18日閲覧。
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- ^ Greene, Andy (2021年7月19日). “Muse's Matt Bellamy Bought Jeff Buckley's 'Grace' Guitar and Recorded a Song With It” (英語). Rolling Stone. 2024年12月4日閲覧。
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- ^ Trendell, Andrew (2019年6月20日). “Muse's Matt Bellamy plans to make his signature Manson guitars more affordable” (英語). NME. 2024年12月5日閲覧。
- ^ McNamee, David (2011年3月9日). “Hey, what's that sound: Kaoss Pad” (英語). The Guardian. ISSN 0261-3077 2024年12月4日閲覧。
- ^ Aubrey, Elizabeth (2019年6月8日). “Muse's Matt Bellamy buys his favourite guitar workshop in Devon” (英語). NME. 2024年12月5日閲覧。
- ^ “Muse's Matt Bellamy Talks” (英語). www.ultimate-guitar.com. 2024年12月4日閲覧。
- ^ “The Genius Of… Origin of Symmetry by Muse” (英語). Guitar.com | All Things Guitar. 2024年12月4日閲覧。
- ^ “Muse interview” (英語). The Telegraph (2009年11月18日). 2024年12月5日閲覧。
- ^ “New Muse album 'inspired' by 1984” (英語). BBC News. (2009年8月4日) 2024年12月5日閲覧。
- ^ “Muse: The band who fell to earth - Features - Music - The Independent”. web.archive.org (2012年2月26日). 2024年12月5日閲覧。
- ^ “Kate Rocks NME Awards - Sky Showbiz”. web.archive.org (2010年6月17日). 2024年12月16日閲覧。
- ^ 株式会社ローソンエンタテインメント. “「NME Awards 2012」発表!”. www.hmv.co.jp. 2024年12月16日閲覧。
- ^ @GWR (2012年9月24日). "setting a Guinness World Record for the most guitars smashed on tour". X(旧Twitter)より2024年12月16日閲覧。
- ^ “BBC - 6Music - The Axe Factor” (英語). www.bbc.co.uk. 2024年12月16日閲覧。
- ^ Spangler, Todd (2024年1月9日). “Audible ‘1984’ Adaptation to Star Andrew Garfield, Cynthia Erivo, Tom Hardy, Andrew Scott” (英語). Variety. 2024年12月15日閲覧。