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マイルドドラッグ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

マイルドドラッグとは、ドラッグと同等の強い依存性を持つ嗜好品等を表す定義であり、規制が欠如している事が社会的問題となっている[1]

概要

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マイルドドラッグ[2][3][4]は近年に取り上げられる事が多くなった定義であり、マイルドドラッグの代表的な物が砂糖、カフェイン、タバコ、アルコール、ポルノグラフィ等であり[3][5][6][7]、薬物並の中毒性・依存性があるとされており[6][1]、脳が興奮状態になり、空腹でなくても食べれてしまい「もっと欲しい」と中毒性・常習性が生まれる危険性への警鐘から生まれた言葉である[1]。ポルノグラフィやエナジードリンク等は特に危険とされている[7][1]

またそれに対する規制が無い事も社会的に問題視されている[1]

薬学博士である生田哲による著書『砂糖をやめればうつにならない』では砂糖の危険性への警鐘が強く鳴らされている[8]

特に砂糖摂取や砂糖依存症は精神衛生に悪影響を与えたり、うつ病を発症する傾向があり、学術誌『Medical Hypotheses』の研究結果によると、精製された砂糖を最も多く摂取している女性は砂糖摂取量が最も少ない女性に比べ、臨床的うつ病になるリスクが23%高いといい[5]ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドンの研究結果では糖分摂取量が多い男性は気分障害になる可能性が高いという[9]

プリンストン大学のラットを使った砂糖依存症の研究では、ラットに10%の砂糖水を3週間与え続けると1日に37mlしか飲まなかったが、次第に摂取量が増えて3週間後には砂糖水を112mlも飲むようになったという[10][11]。脳内の側坐核(麻薬で活性化する神経核)を調べた所、砂糖水を飲み続けたラットではドーパミンの分泌量が130%に増加しており、この脳内の反応は報酬系と呼ばれ、ヘロイン、コカイン、ニコチン、モルフィネといった麻薬性の物質を摂取した時に脳で活性化する反応に酷似していたという[10]

バーモント大学経済学部 准教授であるサラ・ソルニックとハーバード大学公衆衛生学 教授であるデービット・ヘメンウエイはボストンの公立学校に通う10歳代の若者1878人を対象に炭酸飲料水の摂取量と過去1年間の暴力歴や銃所持歴などを調査した結果、炭酸飲料水が週に1本以下の低摂取群の若者の23.2%が銃を所持していたのに対して、週に5本以上摂取する若者では37.8%、14本以上摂取する若者では42.7%が銃を所持していたといい、低摂取群の若者の交際相手への暴力歴が15.3%だったのに対し、週5〜7本摂取する若者では54.7%、週14本以上摂取する若者では58.3%に交際相手への暴力歴があることが明らかとなったという[10][12]

ポルノグラフィ

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WHOはポルノ依存を精神疾患の1つとして認定している[13]

多くの機関による研究ではポルノやオナニーによる脳への悪影響が現代社会の諸問題(犯罪、精神障害、心身衰弱等)の根源であるとしている。インターネット上には性的な画像・動画が溢れており、ポルノグラフィ中毒に対する批判は以前より行われていたが、2020年代にその動きが活発になり始め、様々な学術機関が研究データを公表している[7]

2021年にはゲーリー・ウィルソンが『インターネットポルノ中毒 やめられない脳と中毒の科学』を出版し、様々な医学的アプローチを用いた上でポルノやオナニーの有害性を記述した[14]

有害性

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人間はポルノ鑑賞・性行為などによってドーパミンの基準や感度が下がり、思い切った行動の減少、不安、鬱、怒りの過剰反応、精神障害、社交力低下、引きこもり、集中力欠如、やる気欠如、前向き(ポジティブ)な予想の欠如、落ち着きの無さ、恐怖、強迫観念症状など、マイナス面が強まるという[15][16]。またドーパミン代謝の変化は灰白質密度の減少に関係するのではないかとも考えられており、ドーパミンが過剰分泌されると人体に諸問題が生じるというデータも公表されている[17][18][19]

医学専門誌である「JAMA Psychiatry」は2014年5月に、軽度のポルノ利用者でも灰白質(認知機能を司る脳部位)の減少や性的反応の低下がポルノ鑑賞と相関するという研究を掲載した[15][20]

別の研究データによると、ポルノ鑑賞について、側坐核(脳の報酬中枢)と視床下部の性中枢の灰白質萎縮、灰白質の喪失は神経細胞分岐と他の神経細胞との接続喪失を意味し、ドーパミン信号の減少により8気筒エンジンが3気筒で無理に走るような物だという[15][21]

また減少した灰白質は該当する問題行動を止めれば元に戻るという[22]。灰白質についてはカフェインやシリアルなどを実験対象にしたデータも公表されている[23]

詳細は「灰白質」を参照

ストレス系は長期のストレス要因に耐えられるようにするが、ポルノ中毒はストレスホルモンの循環や脳のストレス系に多数の変化を引き起こし、ストレス耐性などにも悪影響を及ぼす[15]

心理学者であるフィリップ・ジンバルドーはポルノやテレビゲームなどの興奮中毒が引っ込み思案などの社会不安を生じ、社会能力の発達を阻害するという[15]

ノーマン・ドイジは著書『脳は奇跡を起こす』にて、ポルノの刺激は脳の不動産を乗っ取り、配線を変えてしまうと述べている[15]

2023年8月8日に毎日新聞はネットポルノ依存の深刻さについて記事を取り上げた[13]

灰白質はポルノや性行為を断って時間が経てば回復し、増加させることが可能だという[22][24]。日常を多忙にしてポルノ鑑賞や自慰を行う時間を強制的に無くしたりするなど、関心を現実世界に向けることだといい、ウィルソンはそれをコンピューターを再起動させたり元の工場出荷状態に戻すような事に例えている[15]。まずは行動を先に変え、行動を変えることで人間の構造も自ずと変わり、新しい生き方や思考が脳機能の変化に反映されるという[15]

またウィルソンはReboot Nationを活用することも推奨している。

脚注

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  1. ^ a b c d e 『マイルドドラッグ』という言葉をご存知でしょうか?スナック菓子や炭酸飲料水に散見される。 | マルカワみそのスタッフブログ”. 2023年10月23日閲覧。
  2. ^ 宗田 哲男『甘いもの中毒 私たちを蝕む「マイルドドラッグ」の正体』朝日新聞出版、2018年1月12日。ISBN 978-4022737496 
  3. ^ a b 日本人の健康を蝕むマイルドドラッグ――医師が説く「米」との付き合い方”. デイリー新潮 (2018年12月5日). 2023年10月25日閲覧。
  4. ^ いごころ vol.27”. 福島県立医科大学. 2023年10月26日閲覧。
  5. ^ a b 砂糖の摂り過ぎがメンタルヘルスに及ぼす影響”. Women's Health (2020年6月21日). 2023年10月23日閲覧。
  6. ^ a b 甘いもの好きな人必見!砂糖依存症について|心療内科・精神科|うつ病治療の品川メンタルクリニック”. 品川メンタルクリニック (2019年7月31日). 2023年10月23日閲覧。
  7. ^ a b c Online Porn Addiction: What We Know and What We Don’t—A Systematic Review”. NCBI. 2023年10月25日閲覧。
  8. ^ 生田 哲『砂糖をやめればうつにならない』角川書店(角川グループパブリッシング)、2012年9月10日。ISBN 978-4041103128 
  9. ^ 甘いものがうつの原因に? 気分の落ち込みと食生活の関係”. Esquire (2020年3月18日). 2023年10月23日閲覧。
  10. ^ a b c Colorda編集部 (2016年12月1日). “砂糖は麻薬並みの依存性あり! ジュースの飲みすぎは危険!?”. Colorda. 2023年10月23日閲覧。
  11. ^ Dec. 10, Kitta MacPherson on. “Sugar can be addictive, Princeton scientist says” (英語). Princeton University. 2023年10月24日閲覧。
  12. ^ Solnick, Sara J.; Hemenway, David (2012-08). “The 'Twinkie Defense': the relationship between carbonated non-diet soft drinks and violence perpetration among Boston high school students”. Injury Prevention: Journal of the International Society for Child and Adolescent Injury Prevention 18 (4): 259–263. doi:10.1136/injuryprev-2011-040117. ISSN 1475-5785. PMID 22025524. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22025524/. 
  13. ^ a b 「やめたくてもやめられない…」 実は深刻なネットポルノ依存”. 毎日新聞. 2023年10月25日閲覧。
  14. ^ TEDxトーク900万回以上再生の著者が書き下ろし!〈スマホ脳〉に続く社会問題〈ポルノ脳〉を解き明かす唯一の書籍『インターネットポルノ中毒』が発売|株式会社ディスクユニオンのプレスリリース”. web.archive.org (2023年3月9日). 2023年10月25日閲覧。
  15. ^ a b c d e f g h ゲーリー・ウィルソン 著、山形 浩生 訳『インターネットポルノ中毒 やめられない脳と中毒の科学』DU BOOKS、2021年3月31日、14,81,83,120,130,140,141,148頁。ISBN 978-4866471419 
  16. ^ Borreli, Lizette (2015年8月12日). “Watching Adult Films Alters Brain Activity Similar To Drug Addicts, Alcoholics: The Pornographic Mind” (英語). Medical Daily. 2023年10月25日閲覧。
  17. ^ 線維筋痛症患者の灰白質密度の減少がみられる部位とドーパミン代謝との相関関係 - 慢性の痛み情報センター”. web.archive.org (2023年5月28日). 2023年10月25日閲覧。
  18. ^ 統合失調症はドーパミンの過剰分泌が原因か”. Science Portal - 科学技術の最新情報サイト「サイエンスポータル」. 2023年10月25日閲覧。
  19. ^ France-Presse, Agence (2014年5月29日). “Porn viewing linked to less grey matter in brain” (英語). The Guardian. ISSN 0261-3077. https://www.theguardian.com/culture/2014/may/29/porn-viewing-linked-less-grey-matter-brain 2023年10月25日閲覧。 
  20. ^ Kühn, S.、Gallinat, J. (2014-05). “Brain Structure and Functional Connectivity Associated With Pornography Consumption: The Brain on Porn”. JAMA Psychiatry: 71,827-834. 
  21. ^ Cera, Nicoletta; Pizzi, Stefano Delli; Pierro, Ezio Domenico Di; Gambi, Francesco; Tartaro, Armando; Vicentini, Carlo; Galatioto, Giuseppe Paradiso; Romani, Gian Luca et al. (2012-06-18). “Macrostructural Alterations of Subcortical Grey Matter in Psychogenic Erectile Dysfunction” (英語). PLOS ONE 7 (6): e39118. doi:10.1371/journal.pone.0039118. ISSN 1932-6203. PMC PMC3377616. PMID 22723943. https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0039118. 
  22. ^ a b 定期的なカフェインの摂取は脳の構造に影響”. リンクDEダイエット. 2023年10月25日閲覧。
  23. ^ 第78話 食べ物で変わる脳の大きさ! - さくら薬局グループ”. www.kraft-net.co.jp. 2023年10月25日閲覧。
  24. ^ 日経ビジネス電子版. “脳の構造を変える! マインドフルネスって何?”. 日経ビジネス電子版. 2023年10月25日閲覧。