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マイケル・ベントン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
マイケル・ベントン
2014年に王立協会に入会した日の写真。ロンドンにて。
生誕 Michael James Benton
(1956-04-08) 1956年4月8日(68歳)[1]
スコットランドの旗 スコットランド
居住 イングランドの旗 イングランド
国籍 イギリスの旗 イギリス
研究分野 古生物学
大進化英語版
研究機関 ブリストル大学
出身校 アバディーン大学[1]
ニューカッスル大学
博士課程
指導学生
真鍋真
他の指導学生 スティーヴン・ブルサッテ
主な業績 恐竜化石中のメラノソームの発見
主な受賞歴 ライエル・メダル(2005年)
公式サイト
www.bristol.ac.uk/earthsciences/people/mike-j-benton
プロジェクト:人物伝
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マイケル・ジェームズ・ベントン英語: Michael James Benton1956年4月8日[1] - )は、イギリスの古生物学者。ブリストル大学理学部地球科学科の古脊椎動物学教授[2][3]。主に三畳紀爬虫類の進化に関する論文を発表しているが、絶滅事変や化石記録中の動物相の変化も研究している[4][5]

2010年12月にはマイケル・ベントンを称えてリンコサウルス目英語版ベントニクス英語版に献名された[6]

経歴

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アバディーン大学を卒業後[1]、1981年にニューカッスル大学大学院で博士号を取得[7][8]。1996年にはブリストル大学で古生物学の修士(理学)課程を設立し、以来300人を超える学生を輩出している[9]。ベントンは50人を超える博士課程学生を指導し[9]日本の古生物学者真鍋真もその1人である[10]

研究

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ベントンの研究は古生物学大進化英語版の調査であり[11][12]、様々な学術誌に研究を投稿した[13][14][15][16]。ベントンは古生物学者として生命史の理解における基礎研究に取り組み、特に時代の変遷に見る生物多様性の移り変わりを追ってきた[9]。現生生物および化石生物から得たデータを統合して系統樹を作成し、主要なグループの発生の起源、時代を経て多様化の成り行きを突き止めようと目指している[9]。このアプローチにより、生命史の内外でそれを動かしてきた要因の関与と役割は何か、多様性の飽和はあり得るのか、大量絶滅の重要性とは何か、どのように主要な系統群が分岐したかなど、主要な疑問とその理解は急進的に変わってきた[9]。主なテーマは2億5000万年前(顕生代)に発生した生命史最大の大量絶滅であり、ペルム紀末の大量絶滅事変ほどの出来事から、生命がどのように回復できたのか調査研究している[9]

2010年には中華人民共和国遼寧省産の恐竜シノサウロプテリクスの化石の細胞中からユーメラノソームとフェオメラノソームという2種類の色素メラノソームを発見したと報告した。これはある程度、恐竜の色彩や模様を再現する手がかりとなった[17][18]

出演

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ベントンはドキュメンタリー作品に出演している。例えば、BBCの番組「The Day The Earth Nearly Died」(2002年12月5日放送)にはペルム紀末の大量絶滅の謎を研究する科学者のひとりとして、ベントンも当時の環境や生物多様性、ゴルゴノプス亜目ディノゴルゴン英語版の形態などを解説した[19]

著書

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ベントンには大学生用の数多くの古生物学の教科書(例: 『Vertebrae Paleontology』)に加え、恐竜をテーマとした子供向けの本の著作もある[9][20]。邦訳された著作や監修文献も少なくない[21][22][23]

おもな著作

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児童書

  • 『生命の歴史 : その起源と進化のあとをたどる』 舟木嘉浩 訳(評論社〈児童図書館・科学の部屋 ; 別巻〉 1990)著者名義はミヒャエル・ベントン

児童書の監修

一般書

  • 共同監修『生命の進化大図鑑』池田比佐子ほか訳、小畠郁生 日本語版総監修、オフィス宮崎(日本語版編集)(2010年、河出書房新社)原題『Prehistoric』、書評あり[22]
  • ロジャー・オズボーン 共著『進化地図』池田比佐子 訳、小畠郁生 日本語版監修、スティーヴン・ジェイ・グールド 監修(2011年、河出書房新社)原題『The Viking Atlas of Evolution』、書評あり[23]
  • 久保田克博、千葉謙太郎、田中康平 監訳『恐竜研究の最前線 : 謎はいかにして解き明かされたのか』喜多直子 訳(創元社、2021)原題『#The Dinosaurs Rediscovered : How a Scientific Revolution is Rewriting History』(Thames & Hudson, c2019の翻訳)NCID BC0823202XISBN 9784422430409
    • 「年代層序表」[4]-[5]頁
    • 「参考文献一覧」314-327頁。

共著

洋書

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児童書

一般書

  • Vertebrate Palaeontology 第4版( Wiley-Blackwell、2014)ISBN 978-1118407554
  • On the trail of the dinosaur(Quarto Publishing、1989)ISBN 0-517-67976-0
  • When Life Nearly Died: the Greatest Mass Extinction of All Time(第1版 2003、第2版 2008、Thames & Hudson)書評あり[24]、Thus 版の初版2005。
  • The Dinosaurs Rediscovered: How a Scientific Revolution is Rewriting History(Thames & Hudson、2019)ISBN 978-0500052006

共著

受賞

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自然の知識を向上させた功績により、2014年に王立協会フェローに選ばれた[注釈 1][9][25]

脚注

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注釈

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  1. ^ 前述は少なくとも1件、royalsociety.org による。右の記載を参照。
    “All text published under the heading 'Biography' on Fellow profile pages is available under Creative Commons Attribution 4.0 International License.”
    Royal Society Terms, conditions and policies”. 2016年11月11日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年11月11日閲覧。

出典

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  1. ^ a b c d Anon (2015). "Benton, Prof. Michael James". Who's Who (英語) (オンラインオックスフォード大学出版局 ed.). A & C Black. doi:10.1093/ww/9780199540884.013.U43387 (要購読、またはイギリス公立図書館への会員加入)
  2. ^ Liz Loeffler. “People: Earth Sciences”. bris.ac.uk. University of Bristol. 2020年3月30日閲覧。
  3. ^ Professor Mike Benton – School of Earth Sciences”. Bristol.ac.uk. 28 August 2018閲覧。
  4. ^ Benton, M. J. (2009). “The Red Queen and the Court Jester: Species diversity and the role of biotic and abiotic factors through time”. Science 323 (5915): 728–32. doi:10.1126/science.1157719. PMID 19197051. 
  5. ^ Lloyd, G. T.; Davis, K. E.; Pisani, D.; Tarver, J. E.; Ruta, M.; Sakamoto, M.; Hone, D. W. E.; Jennings, R. et al. (2008). “Dinosaurs and the Cretaceous Terrestrial Revolution”. Proceedings of the Royal Society B: Biological Sciences 275 (1650): 2483–90. doi:10.1098/rspb.2008.0715. PMC 2603200. PMID 18647715. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2603200/. 
  6. ^ Bristol University – Alumni and friends – 2011: Introducing Bentonyx[同窓生と校友紹介 – 2011年:Bentonyx とは]”. bristol.ac.uk. 2020年3月30日閲覧。
  7. ^ Benton, Michael James (1981). The Triassic reptile Hyperodapedon from Elgin, functional morphology and relationships. jisc.ac.uk (PhD thesis). University of Newcastle upon Tyne. EThOS uk.bl.ethos.238091
  8. ^ Benton, Michael James (1983). “The Triassic Reptile Hyperodapedon from Elgin: Functional Morphology and Relationships”. Philosophical Transactions of the Royal Society B: Biological Sciences 302 (1112): 605–718. doi:10.1098/rstb.1983.0079. ISSN 0962-8436. 
  9. ^ a b c d e f g h Anon (2014年). “Professor Michael Benton FRS [FRS マイケル・ベントン教授]”. royalsociety.org. London: 王立協会. 2020年3月30日閲覧。
  10. ^ 第4回 あの「恐竜博士」の意外な経歴”. 研究室に行ってみた。国立科学博物館 恐竜 真鍋真. 日経BP (2019年7月3日). 2020年3月29日閲覧。
  11. ^ Benton, M. J.; Emerson, B. C. (2007). “How Did Life Become So Diverse? The Dynamics of Diversification According to the Fossil Record and Molecular Phylogenetics”. Palaeontology 50: 23–40. doi:10.1111/j.1475-4983.2006.00612.x. 
  12. ^ Benton, M. J.; Donoghue, P. C. J. (2006). “Paleontological Evidence to Date the Tree of Life”. Molecular Biology and Evolution 24 (1): 26–53. doi:10.1093/molbev/msl150. PMID 17047029. 
  13. ^ Sahney, S.; Benton, M. J.; Falcon-Lang, H. J. (2010). “Rainforest collapse triggered Carboniferous tetrapod diversification in Euramerica”. Geology 38 (12): 1079–1082. doi:10.1130/G31182.1. 
  14. ^ Sahney, S; Benton, M. J.; Ferry, P. A. (2010). “Links between global taxonomic diversity, ecological diversity and the expansion of vertebrates on land”. Biology Letters 6 (4): 544–7. doi:10.1098/rsbl.2009.1024. PMC 2936204. PMID 20106856. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2936204/. 
  15. ^ Sahney, S; Benton, M. J. (2008). “Recovery from the most profound mass extinction of all time”. Proceedings of the Royal Society B: Biological Sciences 275 (1636): 759–65. doi:10.1098/rspb.2007.1370. PMC 2596898. PMID 18198148. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2596898/. 
  16. ^ Search”. 8 January 2015時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年10月23日閲覧。
  17. ^ 恐竜の羽毛はショウガ色だった?化石から色素を発見」『AFP BB NEWS』(フランス通信社)2010年1月28日。2020年3月30日閲覧。
  18. ^ Chris Sloan (2010年1月27日). “恐竜の体色を初めて特定:科学的に再現”. ナショナルジオグラフィック協会. 2020年3月30日閲覧。
  19. ^ The Day The Earth Nearly Died - transcript”. BBC. 2020年3月30日閲覧。
  20. ^ 著者名マイケル・J・ベントンの検索結果”. ndlonline.ndl.go.jp. 国立国会図書館オンライン. 国立国会図書館. 2023年12月10日閲覧。
  21. ^ マイケル・J・ベントン”. cir.nii.ac.jp. 人名〈マイケル・J・ベントン〉の検索結果、書籍その他. CiNii Research. 2023年12月10日閲覧。
  22. ^ a b 佐藤慎一『生物の進化大図鑑』マイケル・J・ベントン他(監修)、小畠郁生(日本語版総監修)、河出書房新社、2010年10月30日発行、512pp.、ISBN978-4-309-25238-4、9,500円(税別)」『化石』第89巻第0号、2011年、59–60頁、doi:10.14825/kaseki.89.0_59_2 
  23. ^ a b 矢島道子「『進化地図』スティーヴン・J・グールド(監修)、ロジャー・オズボーン(著)、マイケル・J・ベントン(著)、小畠郁生(日本語版監修)、池田比佐子(訳)、河出書房新社、2011年6月25日発行、206pp、ISBN978-4-309-25245-2、4,743円(税別)」『化石』第91巻第0号、2012年、44頁、CRID crid/1390001204437072256doi:10.14825/kaseki.91.0_44_1 
  24. ^ Bowler, P. J. (2003). “Suffocated or shot?”. Nature 423 (6938): 384. doi:10.1038/423384a.  Review of When Life Nearly Died: The Greatest Mass Extinction of All Time
  25. ^ Home – The Royal Society of Edinburgh [エディンバラ王立協会]” (pdf). The Royal Society of Edinburgh (2016年6月20日). 28 August 2018閲覧。