コンテンツにスキップ

英文维基 | 中文维基 | 日文维基 | 草榴社区

メンデレス川

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
マイアンドロス川から転送)
大メンデレス川
メンデレス川
延長 548 km
水源 ディナル
河口・合流先 エーゲ海
流域 トルコ
テンプレートを表示
メンデレス川とハンチャラル橋(デニズリ県チャル近郊)

メンデレス川トルコ語: Büyük Menderes Nehri)、古名マイアンドロス古代ギリシア語: Μαίανδρος / Maíandros、現代ギリシャ語ではメアンドロス)はトルコ南部の川。トルコにはもうひとつ同名のメンデレス川Küçük Menderes)があり、本記事の川を「大メンデレス川」(ビュユックメンデレス川)、もうひとつの川を「小メンデレス川」(キュチュックメンデレス川)と呼ぶことも多い。流れのあちこちが蛇行しており、英単語meander(曲流する)はこの川の名に由来する。

流路

[編集]

トルコ中央部の西側、ディナールDinar)付近を水源とする。イシュクル湖Işıklı)を出て蛇行しながら西方向に流れ、アドゥギュゼル・ダムAdıgüzel Barajı)に入る。このダムでハマム川Hamamçayı)と合流する。ダムを出るとさらに西に流れてチュリュクス川Çürüksu Çayı)と合流し、さらにダンダラス川Dandalas Çayı)、アクチャイ川Akçay)、チネ川Çine Çayı)、チャムルルウルジャ川Çamurluılıca Çayı)、サル川Sarı Çayı)、チャミチ・ギョリュ川Çamiçi Gölü Çayıバファ湖の流出河川)と合流して最終的には古代イオニアミレトス付近でエーゲ海に注ぐ。

古代文献への登場

[編集]

メンデレス川はアナトリア半島で古代にイオニア人が住んでいたカリア地方を流れていた川としてマイアンドロス川の名で有名である。早くもヘシオドスの『神統記』に名前が見え[1]トロイア戦争について歌ったホメロス叙事詩イリアス』でもミレトス市と共に登場する[2]

神話

[編集]

メンデレス川はエーリス地方のアルペイオス川と共に神話に登場する[3]

水源に関する議論

[編集]

メンデレス川(メアンドロス川)の流れは複雑であり、古代、その源流について議論があった。古代ギリシアヘロドトスはその源流がフリギアの都市ケライナイ (en(現ディナル)付近にあると説明しており[4]クセノポンはその流れがキュロスの公園の泉から発していると説明している[5]ストラボンは源泉がマルシュアース川 (enと同じ場所であると説明している[6]。クセノポンとストラボンの解説には矛盾があり、クセノポンはマルシュアース川とは水源が近いだけだと論じている[7]古代ローマプリニウスはまた別の説を採っており、メアンドロス川の源泉はAulocrene山の湖にあると述べている[8]。19世紀イギリスのウィリアム・リーク (enはこれらの説に対し、メアンドロス川とマルシュアース川の源泉は共にAulocrene山にあるが、その発する所はAulocrene山麓の異なる湖であると解説している[9]

流域に関する解説

[編集]
メンデレス河口からの堆積物により埋まる古代のミレトス

メンデレス川は非常に屈曲していることで昔から知られており、ヘーシオドスパウサニアスオウィディウスリウィウスセネカなどが著作でその点に触れている[10]

プリニウスが古代ギリシア時代の流れを解説している。それによると、大まかにはメソギス(Messogis)の南部を南西方向に進むというものであった。トリポリス (enの南方でライカス川 (enと合流し、流れが大きくなる。カルラ (enの付近でフィリジア(Phrygia)からカリア (enへと入り、メアンドリアン平野で流れの蛇行が大きくなる[11]。最終的にはプリエネ (enとミウス (enの間でエーゲ海のイカロス湾(Icaros)に注ぐ。この場所はミレトスの都市イオニアからもわずか10スタージアの距離であったと説明されている[12]

また、その支流は北部ではOrgyas, Marsyas, Cludrus, Lethaeus, Gaesonなどがあり、南部ではObrimas, Lycus, Harpasus, Marsyasなどがあった。

川の流れの影響

[編集]

メンデレス川は川幅が狭く、水深が深く、川幅と水深が同じくらいであった[13]。また、その流れには多くの泥が含まれていたため、往来できるのは小船に限られていた[14]。洪水となることも多く、そのときに流れ出る泥が沖合い20~30スタディオンまでを埋めて、小島と陸地が繋がることもあったと言う[15]

脚注

[編集]
  1. ^ Hesiod, Theogony, line 339.
  2. ^ Iliad, ii 869.
  3. ^ Pausanias il. 5. § 2; comp. Hamilton, Researches, vol. i. p. 525, foll., ii. p. 161, foll.
  4. ^ Herodotus, Histories, Book 7 section 26.
  5. ^ Xenophon, Anabasis, Book 1 Chapter 2.
  6. ^ Strabo xii. p. 578; Maximus of Tyre viii. 38.
  7. ^ Xenophon, Anabasis 1.2.8.
  8. ^ Pliny (v. 31), Solinus (40. § 7), and Martianus Capella (6. p. 221).
  9. ^ Asia Minor, p. 158, &c.
  10. ^ Hesiod, Theogony, line 339; Strabo, Geography, Book 12, Chapter 8, Section 15; Pausanias viii. 41. § 3; Ovid Met. viii. 162, &c.; Livy xxxviii. 13; Seneca Herc. Fur. 683, &c., Phoen. 605.
  11. ^ comp. Strabo xiv. p. 648, xv. p. 691
  12. ^ Pliny l. c.; Pausanias ii. 5. § 2.
  13. ^ Niketas Choniates, p. 125; Livy l. c.
  14. ^ Strabo xii. p. 579, xiv. p. 636.
  15. ^ Pausanias viii. 24. § 5; Thucydides viii. 17.)

参考文献

[編集]
  • ウィキソース出典 Herodotus (英語), History of Herodotus, ウィキソースより閲覧。 
  • ウィキソース出典 Hesiod (英語), Theogony, ウィキソースより閲覧。 
  • Strabo; H.C. Hamilton, W.Falconer, Editors. “Geography”. Tufts University: The Perseus Digital Library. 2009年8月14日閲覧。
  • ウィキソース出典 Xenophon (英語), Anabasis, ウィキソースより閲覧。 
  • Xenophon, Anabasis, Harvard University Press, Cambridge, MA; William Heinemann, Ltd., London. 1980. OCLC 10290977. ISBN 0674991001.
  •  この記事には現在パブリックドメインである次の出版物からのテキストが含まれている: Smith, William, ed. (1854–1857). Dictionary of Greek and Roman Geography. London: John Murray. {{cite encyclopedia}}: |title=は必須です。 (説明)

関連項目

[編集]

外部リンク

[編集]