ポライト・ソサエティ
ポライト・ソサエティ | |
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Polite Society | |
監督 | ニダ・マンズール |
脚本 | ニダ・マンズール |
製作 |
ティム・ビーヴァン エリック・フェルナー オリヴィエ・ケンプファー ジョン・ポーコック |
出演者 |
プリヤ・カンサラ リトゥ・アリヤ ニムラ・ブチャ アクシャイ・カンナ セラフィーナ・ベー エラ・ブルッコレリ ショナ・ババエミ |
音楽 | トム・ハウ |
撮影 | アシュリー・コナー |
編集 | ロビー・モリソン |
製作会社 | ワーキング・タイトル・フィルムズ |
配給 |
トランスフォーマー( 日本) フォーカス・フィーチャーズ( アメリカ合衆国) |
公開 |
2023年4月28日 2024年8月23日 |
上映時間 | 104分 |
製作国 | イギリス |
言語 |
英語 ウルドゥー語 |
興行収入 |
$1,595,585[1] $616,009[1] $2,643,922[1] |
ポライト・ソサエティ | |
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ジャンル | アクション映画, コメディ映画 |
『ポライト・ソサエティ』(Polite Society)は、2023年のイギリスの武術アクションコメディ映画。
監督および脚本はニダ・マンズール(長編映画としては初監督作)。出演者はプリヤ・カンサラ、リトゥ・アリヤ、ニムラ・ブチャ、アクシャイ・カンナ、セラフィーナ・ベー、エラ・ブルッコレリ、ショナ・ババエミなど。
10代の少女リア・カーンは、夢を諦め結婚しようと決意した姉のリーナを救うために奔走する。
本作は2023年1月21日にサンダンス映画祭でワールドプレミア上映され[2]、イギリスとアメリカでは2023年4月28日にフォーカス・フィーチャーズによって公開された[3][4]。 映画は批評家からは賞賛を集めたが、興行的には惨敗した。
日本では、2024年8月23日にトランスフォーマーによって全国公開された[5]。
ストーリー
[編集]ロンドンに暮らすパキスタン系イギリス人のティーンエイジャー、リア・カーンは、憧れのユーニス・ハサートのような映画のスタント・パフォーマーを目指している。アルター・エゴの 「怒りの権化 」(the Fury)のもと、リアは姉のリーナの助けを借りつつ、武術トレーニングの動画を作成しては自分の動画配信チャンネルに投稿している。リーナは美術学校を中退し、愛情はあるものの伝統的な価値観をもつ両親、ファティマとレイフの暮らす実家に戻ってきている。両親はリアに夢を諦めさせようとしている。
学校では、リアは友人のクララとアルバとは切っても切れない仲だが、彼女たちを嫌う教師は、スタント・ ウーマンを目指すのはやめてもっと「まともな」職業に就くよう彼女に勧める。ユーニスに送った武術指導を頼みこむメールには音沙汰がなく、その上学校のいじめっ子コヴァックスとの喧嘩では特訓中の540キック(空中での回し蹴り)に失敗して、完敗してしまう。カーン一家は、母ファティマが参加しているパキスタン人のママ友社交サークルのまとめ役であるラヒーラから、豪邸でのイードの夜会に招待される。リアは、このパーティーが遺伝子学者として成功したラヒーラの息子サリムにふさわしい相手を見つけるために用意されたものだと気づくが、デートに応じようとするリーナを止めることはできない。
リアは愕然とするが、リーナはサリムに魅了され、数週間のデートの後、彼と結婚してシンガポールに引っ越すことに同意する。芸術家としてのキャリアを捨てるというリーナの選択を認められないリアのかたくなな態度は、姉妹の仲を引き裂いてしまう。姉の婚約にはもっと邪な理由があるに違いないと確信したリアは、クララとアルバに協力してもらい、サリムをスパイする。サリムのノートパソコンを盗むという手の込んだ計画を練り、リアがサリムの気をそらしている隙に友人たちはパソコンをハッキングすることに成功するが、犯罪絡みのものは何も見つからない。
リアはリーナの交際を妨害しようと必死になるあまり、友人たちに当たり散らした上に、サリムの寝室に侵入して使用済みコンドームを仕掛けるという暴挙に及んでしまう。捕まって家族とラヒーラたちの面前に突き出されたリアは、サリムが美女と一緒に写っている、寝室で発見した2ショット写真を彼に突きつけるが、サリムはその女性が出産のときに亡くなった彼の最初の妻だと明かす。怒り心頭のリーナはリアを非難して、自分が結婚についての考えを変えるなどという妄想はあきらめるように言う。
姉と仲違いし、友人からも無視された失意のリアは、武術を断念する。リアはラヒーラを邸に訪ねて謝罪するが、彼女のエステに引っぱりこまれる。そこで本性をあらわしたラヒーラは、皮膚に塗りつけた脱毛ワックスを強引に引き剥がすという拷問をリアに加える。ラヒーラの手先のエステティシャンたちを戦闘の末撃退したリアは、邸の秘密の研究室に偶然逃げこみ、イードの夜会に参加した花嫁候補の女性全員が密かにスキャンされ、テストされたこと、そしてリーナが生殖能力と強い子宮のために選ばれたことを知る。
家に逃げ帰ったリアは家族を説得しようとするが、相手にされない。彼女はクララとアルバに声をかけて、一緒に計画を練り、コヴァックスを説得してリーナを救出するために結婚式に車で向かわせる。リアが華やかなフィルミ(ボリウッドスタイル)のダンス(Maar Dala)で招待客の気をそらしている間に、ウェイターに変装したクララとアルバはリーナの待合室のドアの前にいる武装警備員の目をすり抜ける。ふたりはクロロホルムを嗅がせて気絶させたリーナを、お茶と軽食を載せたワゴンの下に隠すが、リアを捕らえたラヒーラは、サリムと共謀して自分のクローンをリーナに孕ませる計画だと明らかにする。
ラヒーラに脅迫されてリーナを返すことを余儀なくされた友人たちは、結婚式が始まると待合室に閉じこめられるが、コヴァックスが助けに来て警備員を制圧する。リアがラヒーラに警備員から奪った銃を突きつけ、ラヒーラの計画を暴露すると、リーナもサリムに薬を盛られて検査されたことを思い出す。サリムは最初の妻が母親のクローンを身ごもって死んだことを認める。ラヒーラは銃を奪うが、ファティマに取り返される。リアの家族と友人たちは客とラヒーラのスタッフを撃退する。
リーナがサリムを取り押さえ、リアはついにマスターした540キックでラヒーラを倒す。リーナと和解したリアは、ついにユーニスから励ましのメールを受け取り、姉妹は祝杯をあげる。
登場人物・キャスト
[編集]- リア・カーン
- 演 - プリヤ・カンサラ
- スタントウーマンを夢見る10代の武術愛好家。
- リーナ・カーン
- 演 - リトゥ・アリヤ
- リアの姉。
- ラヒーラ・シャー
- 演 - ニムラ・ブチャ
- リーナとサリムの仲を取りもつファティマの家族ぐるみの友人。
- サリム・シャー
- 演 - アクシャイ・カンナ
- ラヒーラの息子で、リーナの婚約者。
- クララ
- 演 - セラフィーナ・ベー
- リアの友人。
- アルバ
- 演 - エラ・ブルッコレリ
- リアの友人。
- コヴァックス
- 演 - ショナ・ババエミ
- リアのいじめっ子。
- ファティマ・カーン
- 演 - ショーブ・カプール
- リアとリーナの母。
- レイフ・カーン
- 演 - ジェフ・ミルザ
- リアとリーナの父。
- ユーニス・ハサート
- 演 - 本人(声の出演/写真)
- リアの憧れのスタントウーマン
製作
[編集]2022年1月、ロンドンで私立教育を受けたパキスタン系イギリス人の姉妹を主人公にしたフェミニスト武術アクション/コメディ映画をニダ・マンズール監督が制作中であることが明らかになった。この映画は、ワーキング・タイトル・フィルムズ、フォーカス・フィーチャーズ、パークヴィル・ピクチャーズによるもので、マンズール監督がブレイクし、BAFTA、ピーボディ賞、ローズドール賞を受賞したシットコムシリーズ『絶叫パンクス レディパーツ!』に似たトーンを持っている[6] 。
2022年2月、ロンドンでの撮影が終了したことが発表された。製作はワーキング・タイトルのティム・ビーヴァンとエリック・フェルナー、パークヴィル・ピクチャーズのオリヴィエ・ケンプファーとジョン・ポーコック。フォーカス・フィーチャーズが配給権を持つ[7][8][9]。
タイトルカード、クレジット、チャプター見出し、格闘シークエンス紹介のタイポグラフィーおよびグラフィックデザインはピーター・アンダーソン・スタジオ(Peter Anderson Studio)にデザインされた[10]。
ジャンルと影響
[編集]『ポライト・ソサエティ』の構成は全体を通して特定のジャンルに縛られているわけではないが、マンズールはその一部を 「陽気なカンフー・ボリウッド叙事詩」と表現している[11] 。マンズールはまた、マカロニ・ウエスタン、『イヴの総て』、香港のカンフー映画、ユエン・ウーピンの作品、『マトリックス』からもヒントを得ている[11][12]。 その他の影響としては、2002年版の『デーヴダース』(リアは結婚式でMaar Dalaを踊る)[13]、ジェーン・オースティンの小説[14]、ジャッキー・チェン、アイシュワリヤー・ラーイ・バッチャン、『ゲット・アウト』、『キル・ビル』(クエンティン・タランティーノ)、ミーラー・ナーイル、ディーパ・メータ、『Fカップの憂うつ』などがある[15]。
公開
[編集]本作は、2023年1月21日に2023年サンダンス映画祭で、2023年3月12日に2023年グラスゴー映画祭で公開され[16] 、2023年4月28日にイギリスとアメリカで公開された[3][4]。日本では2024年8月23日に公開された[5]。
評価
[編集]映画批評家のレビュー集積サイトのRotten Tomatoesでは、158のレビューに基づく支持率は91%で、平均評価は7.3/10。同サイトの批評家のコンセンサスは、「『ポライト・ソサエティ』は、ジャンルのエチケット本を窓から投げ飛ばし、キックし、パンチすることで、ボリウッドの華麗さとイギリスの軽妙さを融合させた楽しい映画を提供している」と書かれている[17]。Metacriticでは、32人の批評家による加重平均スコアは100点満点中75点で、「概ね好意的な評価」を示している[18]。
受賞
[編集]マンズールは2023年英国インディペンデント映画賞の最優秀デビュー脚本家部門で受賞した [19]。また、ブレイクスルー・パフォーマンス部門にプリヤ・カンサラ、最優秀助演賞にリトゥ・アリヤ、最優秀ヘアメイク賞にクレア・カーター、最優秀エフェクト賞にパディ・イーソンがノミネートされた[20]。
使用楽曲
[編集]- The Bombay Royale「You Me Bullets Love」
- The Shirelles「Mama Said」
- THE CHEMICAL BROTHERS「Free Yourself」
- Mohammed Rafi, R.D. Burman「Gulabi Ankhen」
- Dope Saint Jude「Didn't Come to Play」
- The Bombay Royale「Monkey Fight Snake」
- 浅川マキ「ちっちゃな時から」
- Phalon Alexander, Christopher Bridges, Nathaniel Hale, Billy Nichols「Area Codes」
- Kavita Krishnamurthy, KK「Maar Dala」
- Karen O, Danger Mouse「Redeemer」
- KSHMR 「Blood In The Water」
- X-ray Spex「Identity」
出典
[編集]- ^ a b c “Polite Society”. Box Office Mojo. 2024年8月27日閲覧。
- ^ “Polite Society”. Sundance Film Festival. 21 January 2023時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年1月21日閲覧。
- ^ a b Grobar, Matt (2022年11月1日). “'Polite Society' Release Date: 'We Are Lady Parts' Creator Nida Manzoor Makes Feature Directorial Debut With Action-Comedy For Focus Features”. Deadline Hollywood. 2 November 2022時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年1月21日閲覧。
- ^ a b McClintock, Pamela (2022年11月2日). “Nida Manzoor Movie 'Polite Society' Lands Late April 2023 Release”. The Hollywood Reporter. 2 November 2022時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年1月21日閲覧。
- ^ a b “『ポライト・ソサエティ』本予告公開 主演プリヤ・カンサラ初来日&ジャパンプレミアも”. Real Sound (2024年7月11日). 2024年8月27日閲覧。
- ^ Richardson, Jay (2022年1月25日). “Nida Manzoor shoots her first film” (英語). British Comedy Guide. 1 November 2022時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年1月21日閲覧。
- ^ Grater, Tom (2022年2月15日). “'We Are Lady Parts' Creator Nida Manzoor Helming Feature Debut 'Polite Society' For Working Title & Focus”. Deadline Hollywood. 1 November 2022時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年1月21日閲覧。
- ^ Kay, Jeremy (February 15, 2022). “Production wraps on Nida Manzoor's 'Polite Society' for Focus, Working Title, Parkville”. Screen Daily. 24 January 2023時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年1月21日閲覧。
- ^ Gularte, Alejandra (2022年2月15日). “We Are Lady Parts Creator Nida Manzoor to Direct Feature Film Polite Society”. Vulture.com. 1 November 2022時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年1月21日閲覧。
- ^ “Polite Society” (英語). BFI Southbank Programme Notes (2023年4月21日). 29 June 2023時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年6月29日閲覧。
- ^ a b Sanders, Sam (2023年5月2日). “Polite Society Depicts Sister Fights As They Are: 'Brutal, Violent, and Hideous'” (英語). Vulture. 13 August 2023時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年8月24日閲覧。
- ^ 常川拓也 (2024年8月23日). “物理法則を超えて家父長制と戦う?ジャンル横断映画『ポライト・ソサエティ』主演俳優に聞く”. CINRA. 2024年8月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年8月24日閲覧。
- ^ Seth, Radhika (2023年5月4日). “'Polite Society' Is The Sequin-Strewn Kung-Fu Romp You Never Knew You Needed” (英語). British Vogue. 27 August 2023時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年8月24日閲覧。
- ^ “"Polite Society" Writer/Director Nida Manzoor on Her Genre-Melding Feature Debut” (英語). Motion Picture Association (2023年4月28日). 13 August 2023時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年8月24日閲覧。
- ^ Yohannes, Alamin (April 28, 2023). “How Jackie Chan and a 'Kill Bill' fight influenced Nida Manzoor's 'Polite Society'” (英語). EW.com. 13 August 2023時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年8月24日閲覧。
- ^ “Full Festival Programme”. Glasgow Film Festival. 19 February 2023時点のオリジナルよりアーカイブ。19 February 2023閲覧。
- ^ “Polite Society”. Rotten Tomatoes. Fandango Media. 24 January 2023時点のオリジナルよりアーカイブ。17 June 2023閲覧。
- ^ “Polite Society Reviews”. Metacritic. Fandom, Inc.. 30 April 2023時点のオリジナルよりアーカイブ。9 May 2023閲覧。
- ^ Ntim, Zac (December 3, 2023). “British Independent Film Awards: 'All Of Us Strangers' Sweeps With 7 Wins Including Best Film”. Deadline Hollywood. 3 December 2023時点のオリジナルよりアーカイブ。3 December 2023閲覧。
- ^ Ramachandran, Naman (November 2, 2023). “Jodie Comer, Paul Mescal Score Nods as 'Rye Lane,' 'Scrapper, 'All of Us Strangers' Lead British Independent Film Awards Nominations”. Variety. 2 November 2023時点のオリジナルよりアーカイブ。2 November 2023閲覧。