ボルンの式
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ボルンの式(ボルンのしき、英: The Born Equation)は、イオンの溶媒和のギブズ自由エネルギーの静電成分を示す式である。
ボルンの式は、溶媒を連続した誘電媒体と扱う(連続体溶媒和法と呼ばれる方法の1つ)。
式
[編集]ここで
導出
[編集]静電界分布に蓄えられるエネルギーUは次のように表される。
比誘電率εrの媒体中のイオンの電場の大きさは であり、また体積要素 は, であらわされるため、エネルギー は次のように表される:
したがって、イオンが真空(εr =1)から誘電率εr の媒質に溶解する際のエネルギーは次のようになる:
ここでイオン半径r0結晶イオン半径riを用いたものをボルン式と呼び、実際の溶媒和エネルギーに近づけるために溶媒のさやの厚みrsを加えた溶媒和イオン半径(ri+rs)を用いたものを改良ボルン式と呼ぶ。
アルカリ金属イオンに対する溶媒和イオン半径を表1に示す。この値は溶媒のルイス酸・塩基性(ドナー数)に依存し、ドナー数の大きいものがカチオンに対するrsが大きくなる。ドナー数は溶媒和における共有結合性に関連しており、溶媒和の連続体とみなせない部分の一部を補正する値とみなせる[3]。
溶媒 | ドナー数 | rs / Å | εr |
---|---|---|---|
ベンゾニトリル | 11.9 | 0.83 | 25.2 |
アセトニトリル | 14.1 | 0.82 | 38.0 |
スルホラン | 14.8 | 0.80 | 43.0 |
プロピレンカーボネート | 15.1 | 0.82 | 65.1 |
プロピオニトリル | 16.1 | 0.80 | 26.1 |
エチレンカーボネート | 16.4 | 0.86 | 89.6 (40℃) |
アセトン | 17.0 | 0.74 | 20.7 |
水 | 18.0 | 0.72 | 78.5 |
ジメチルホルムアミド | 26.6 | 0.69 | 36.7 |
ジメチルスルホキシド | 29.8 | 0.68 | 46.4 |
脚注
[編集]- ^ Born, M. (1920-02-01). “Volumen und Hydratationswärme der Ionen” (ドイツ語). Zeitschrift für Physik 1 (1): 45–48. doi:10.1007/BF01881023. ISSN 0044-3328 .
- ^ Atkins; De Paula (2006). Physical Chemistry (8th ed.). Oxford university press. p. 102. ISBN 0-7167-8759-8
- ^ 松浦二郎, 佐々木幸夫「非水溶媒中の電気化学」『電気化学および工業物理化学』第44巻第1号、電気化学会、1976年、9-16頁、doi:10.5796/kogyobutsurikagaku.44.9、ISSN 0366-9297、NAID 130007727166。