ボルナ病
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ボルナ病(英: Borna disease)とはモノネガウイルス目(en)ボルナウイルス科オルトボルナウイルス属に属するボルナ病ウイルス感染を原因とするウマやヒツジの感染症。ボルナ病ウイルスはウマやヒツジのほかにウシ、ネコ、イヌなどに感染する。
概要
[編集]ウマの場合、急性型では数週間の潜伏期間の後に、微熱、知覚過敏、行動異常などを示し、痙攣、麻痺などに発展し、約80%が死亡する。病理学的には非化膿性脳炎を示し、小動脈周囲性に高度なリンパ球、マクロファージ、形質細胞浸潤が認められる。また、海馬における神経細胞の核内、まれに細胞質内に好塩基性封入体(Joest-Degen小体)が認められる。慢性型では特徴的な症状は示さず、病理学的所見は認められない。ワクチンおよび特異的な治療法はない[1]。
野生動物や飼育動物では不顕感染している動物が存在していると報告されているが、感染している動物がどの様にして発症するのかは解明されていない[2]。
疫学
[編集]ドイツなどでウマの病気として250年以上前から知られており[3]、病名は騎兵隊のウマが度々発症したドイツの地名に由来する。20世紀に入り、ウイルスが原因と判明。ボルナ病ウイルスがドイツなど中欧以外の動物からも検出された[4]。日本国内でもウマ、ウシ、イヌ、ネコで年に数例見つかる[5][1]。
ヒトの精神分裂病とボルナ病ウイルスの関連を示唆する研究がある[6][1][7][8]。
関連項目
[編集]脚注・出典
[編集]- ^ a b c 生田和良「臨床ウイルス学,最近の進歩 ボルナ病ウイルスの人への関与の可能性」『ウイルス』第47巻第1号、日本ウイルス学会、1997年、37-47頁、doi:10.2222/jsv.47.37、ISSN 0042-6857、NAID 130003854694。
- ^ 西野佳以, 齋藤敏之「ストレス性脳機能障害におけるウイルス持続感染の影響」『京都産業大学先端科学技術研究所所報』第13号、京都産業大学先端科学技術研究所、2014年7月、69-80頁、ISSN 1347-3980、NAID 110009810976。
- ^ 西野佳以村上賢舟場正幸「ボルナ病ウイルスの病原性発現メカニズム解明の研究動向:TGF‐βファミリー経路の関与」『日本獣医師会雑誌』第69巻第9号、日本獸医師会、2016年、517-523頁、doi:10.12935/jvma.69.517、ISSN 0446-6454、NAID 130005431648。
- ^ 第23回 ボルナ病の最近の進展予防衛生協会(2015/04/14)2019年2月13日閲覧。
- ^ 【科学の扉】人の中にウイルス遺伝子■祖先が感染 DNAに混入/発病防ぐことも『朝日新聞』朝刊2019年1月14日(25面)2019年2月13日閲覧。
- ^ Bechter, K. & Herzog, S. (1992). "Borna disease virus: Possible causal agent in psychiatric and neurological disorders in two families." Psy. Res. 42, 291-294.
- ^ 本田知之「ボルナ病ウイルスの神経病原性に関する研究」『ウイルス』第65巻第1号、日本ウイルス学会、2015年、145-154頁、doi:10.2222/jsv.65.145、ISSN 0042-6857、NAID 130005128454。
- ^ 堀本泰介, 田代眞人「ボルナ病ウイルスと精神・神経性疾患」『臨床と微生物』第23巻第4号、1996年7月、439-445頁、ISSN 09107029、NAID 10016087448。
参考文献
[編集]- 日本獣医病理学会 編集『動物病理学各論』 文永堂出版 2001年 ISBN 483003162X
- 清水悠紀臣ほか『動物の感染症』 近代出版 2002年 ISBN 4874020747
関連文献
[編集]- 朝長啓造「ボルナウイルス」『ウイルス』第62巻第2号、日本ウィルス学会、2012年12月、209-218頁、ISSN 00426857、NAID 10031140220。