ボルチモア
ボルチモア市 City of Baltimore | |||||
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愛称 : Monument City Charm City Mob Town | |||||
標語 : "The Greatest City In America" | |||||
位置 | |||||
ボルチモア市の位置(メリーランド州) | |||||
座標 : 北緯39度17分0秒 西経76度37分0秒 / 北緯39.28333度 西経76.61667度 | |||||
歴史 | |||||
成立日 | 1729年7月30日 | ||||
行政 | |||||
国 | アメリカ合衆国 | ||||
州 | メリーランド州 | ||||
郡 | 独立市 | ||||
市 | ボルチモア市 | ||||
市長 | ブランドン・スコット (民主党) | ||||
地理 | |||||
面積 | |||||
市域 | 238.5 km2 (92.1 mi2) | ||||
陸上 | 209.3 km2 (80.8 mi2) | ||||
水面 | 29.2 km2 (11.3 mi2) | ||||
標高 | 10 m (33 ft) | ||||
人口 | |||||
人口 | (2020年現在) | ||||
市域 | 585,708人 | ||||
人口密度 | 2,794人/km2 | ||||
都市圏 | 2,844,510人 | ||||
その他 | |||||
等時帯 | 東部標準時 (UTC-5) | ||||
夏時間 | 東部夏時間 (UTC-4) | ||||
公式ウェブサイト : www.baltimorecity.gov |
ボルチモア(英語: Baltimore)は、アメリカ合衆国のメリーランド州にある同州最大の都市。どの郡にも属さない独立都市である。ボルティモアとも表記する。古くから天然の良港として知られ、1729年に南部産タバコの輸出港として開かれて発展した。首都であるワシントンD.C.の外港としての機能を有する大西洋で極めて重要な港湾都市であり、2020年にイギリスが発表した「グローバリゼーションと世界都市研究ネットワーク」(GaWC)ではガンマ+の都市に評価されるなど、東海岸の世界都市に数えられる。
名称
[編集]ボルチモアの名前はメリーランド植民地の建設の立役者であるアイルランド貴族院議員の第2代ボルティモア男爵のシラス・カルバートに由来する。爵位の名の由来のなった「ボルティモア」はアイルランドの南部にあるコーク県ボルティモアに由来し、これはアイルランド語で「大きな家の町」を意味する「バイレ・アン・ティー・モーイル(Baile an Tí Mhóir)」が英語風に変わったものである。
歴史
[編集]アメリカで最も古い都市の1つであり、1729年に誕生した。南北戦争の舞台にもなり、国歌や星条旗もこの地で生まれた。1830年に全米で初めてボルチモア・オハイオ鉄道(B&O)が開通した。魚種の豊富な優れた漁港として知られたが、ペンシルベニア炭田の開発により工業が発展し、後に造船・鉄鋼などで財政を潤し、また貿易港として発展し、ピークには人口100万人に迫る勢いを見せた。1904年2月7日10時23分頃、市街地で火災が発生し、36時間にわたって延焼、1,500棟以上の家屋が焼失した[1]。
治安
[編集]1960年代から施設の老朽化と主産業の構造不況によって中心地から人口が流出し、スラム街が発展し、治安の悪化が進んだ。そこで市は30年にもわたる再開発計画を実施、これはウォーターフロント開発の先駆ともいわれている。とりわけインナーハーバーの一新を図り、工業、貿易とともに多数のレジャー施設を建設した。インナーハーバーには大型ショッピングセンターや全米屈指のボルチモア国立水族館、海洋博物館などがあり、活況を呈している。一方、肝心の中心地の空洞化は依然として深刻で、治安改善はさほど進んでいない。
2015年には合計344件の殺人事件が記録されており、この数字は最も多かった1993年の記録に次ぐ数字となっている他、2016年から2022年までの6年の間にはそれぞれ318件、342件、309件、348件、335件、338件、335件の殺人事件が発生した。
2019年7月にドナルド・トランプ大統領は、「(ボルチモアは)全米一危険で、どんな人間も住みたがらない」と批判した。これはボルチモアを地盤とするトランプ批判の急先鋒であるイライジャ・カミングス下院議員を罵倒する中の発言であったが、市の黒人の人口比率が50パーセントを超え、犯罪率も全米3位の高さを見せていた背景もあり、人種差別であるとして物議を醸すこととなった[2][3]。
2023年2月6日まで、男女2人が共謀罪で訴追された。容疑は変電所を襲撃して送電線網を麻痺させ、ボルチモア市を「完全破壊」する計画を企てていたもの。男はネオナチ団体のリーダーだったと見られている[4]。
2023年7月2日、地域住民らが野外パーティーを開いていたところに何者かが銃撃を加え、2人が死亡、28人が負傷した[5]。
地理
[編集]ボルチモアはアメリカ東海岸のチェサピーク湾から遠くないパタプスコ川沿いに位置し、メリーランド州の北部中央部の一部である。
アメリカ合衆国統計局によると、この都市は総面積238.5km2(92.1mi2)である。このうち209.3km2(80.8mi2)が陸地で29.2km2(11.3mi2)が水地域である。総面積の12.240%が水地域となっている。
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ボルチモア港に架かっていたフランシス・スコット・キー橋。2024年3月26日に崩落した。
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ワシントン・モニュメント
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チェサピーク号が展示されているボルチモア国立水族館。同館は全米でも屈指の規模を誇る水族館である。
人口動勢
[編集]ボルチモア市 年代別人口 [1] |
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1790年 - 13,503人 |
1830年代・1840年代・1850年代のアメリカ合衆国国勢調査において、ボルチモアは市域人口で2番目に大きな都市であった。しかし1950年代をピークに人口は減少傾向になった[6]。半世紀近くにも渡って人口減少が続いていたが、2012年は人口が1430人増加、2013年は313人の微減となっており、下げ止まりは近いと市当局は見ている[6]。
2000年の国勢調査[7]では、この都市は人口651,154人、257,996世帯及び147,057家族が暮らしている。人口密度は3,111.5/km2 (8,058.4/mi2) である。1,435.8/km2 (3,718.6/mi2) の平均的な密度に300,477軒の住宅が建っている。この都市の人種的な構成は白人31.63%、アフリカン・アメリカン64.34%、先住民0.32%、アジア1.53%、太平洋諸島系0.03%、その他の人種0.67%および混血1.47%である。人口の1.70%はヒスパニックまたはラテン系である。
この都市内の住民は24.8%が18歳未満の未成年、18歳以上24歳以下が10.9%、25歳以上44歳以下が29.9%、45歳以上64歳以下が21.2%および65歳以上が13.2%にわたっている。中央値年齢は35歳である。女性100人ごとに対して男性は87.4人である。18歳以上の女性100人ごとに対して男性は82.9人である。
この都市の世帯ごとの平均的な収入は30,078米ドルであり、家族ごとの平均的な収入は35,438米ドルである。男性は31,767米ドルに対して女性は26,832米ドルの平均的な収入がある。この都市の一人当たりの収入は16,978米ドルである。人口の22.9%および家族の18.8%は貧困線以下である。全人口のうち18歳未満の30.6%および65歳以上の18.0%は貧困線以下の生活を送っている。
教育
[編集]単科及び総合大学
[編集]ボルチモアには公立および私立の両方で複数の高等教育機関が設置されている。
私立
[編集]- Baltimore Hebrew University
- Baltimore International College (BIC)
- College of Notre Dame of Maryland (NDM)
- ジョンズ・ホプキンズ大学 (JHU)
- ロヨラ大学メリーランド校 (LUM)
- Maryland Institute College of Art (MICA)
- Peabody Institute
- Sojourner-Douglass College
公立
[編集]- Baltimore City Community College (BCCC)
- コッピン州立大学 (CSU)
- モーガン州立大学 (MSU)
- ボルチモア大学 (UB)
- メリーランド大学ボルチモア校 (UMB)
- タウソン大学
文化
[編集]スポーツ
[編集]- ボルチモア・オリオールズ(MLB)
- ボルチモア・レイブンズ(NFL)
- ボルチモア・ベイホークス(MLL)
- Baltimore Blast(Major Indoor Soccer League)
- Baltimore Pearls(ABA)
1930年代からファースト・マリナー・アリーナ(ボルティモア・アリーナ)、シビック・センターなどでNWA、ジム・クロケット・プロモーションズ、WWEなどがプロレスリング興行を開催している[8]。競馬のアメリカクラシック三冠競走の1つであるプリークネスステークスが市内にあるピムリコ競馬場で開催される。
交通
[編集]アムトラック
[編集]ペンシルバニア駅はアムトラックの北東回廊路線上にあり、ワシントンD.C.、ニュージャージー州、ニューヨーク方面からの列車が発着する。
ライトレール バルチモア・ワシントン国際空港からライトレールが発着しており、市内まで走っている。
地下鉄 市内及び郊外を結ぶ地下鉄が走っている。路線は1路線。ライトレールやMARCに接続している。なお、ライトレールも地下鉄もMTAにより運行している。
空港
[編集]ボルチモア・ワシントン国際空港(BWI空港)が最寄りの空港である。空港まではライトレールでおよそ30分である。また、アムトラックのBWI空港駅もあるが、空港からは1マイルほど離れており、ターミナルにはシャトルバスを使う必要があるため、市内からはライトレールの方が便利である。
姉妹都市
[編集]ボルチモア観光局のサイト"Visit Baltimore"によれば、10の姉妹都市を有している[9]。
- アシュケロン(イスラエル)[9][10]
- バルンガ(リベリア)[9][10]
- ジェノヴァ(イタリア)[9][10]
- 川崎市(日本)[9][10] - 1979年6月14日姉妹都市締結[11]
- ルクソール(エジプト)[9][10]
- オデッサ(ウクライナ)[9][10]
- ピレウス(ギリシャ)[9][10]
- ロッテルダム(オランダ)[9][10]
- アモイ (中華人民共和国)[9][10]
- ブレーマーハーフェン(ドイツ)[9] - 2007年提携開始[9]
また、全米国際姉妹都市協会(Sister Cities International)のデータでは、 アレクサンドリア(エジプト)と Ely O'Carroll(アイルランド)を挙げている[10]。
ボルチモアが舞台となった作品
[編集]- クライ・ベイビー - ジョン・ウォーターズ監督の1990年の映画。ジョニー・デップの初主演作。
- わが心のボルチモア - 当地へ移住した東欧移民のある一家の人間模様を描いた1990年の映画。監督のバリー・レヴィンソンはボルチモア出身であり、他にも「ダイナー」(1982年)などボルチモアを舞台にした作品がある。下記の「ホミサイド/殺人捜査課」では製作総指揮を務めている。
- ホミサイド/殺人捜査課 - ボルチモア市警殺人捜査課が舞台のアメリカのテレビドラマ。
- THE WIRE/ザ・ワイヤー - 麻薬密売組織と麻薬捜査班との攻防を描いたテレビドラマ。
- ヘアスプレー (1988年の映画) - ジョン・ウォーターズ監督の1998年の映画。
- ヘアスプレー (2007年の映画) - アダム・シャンクマン監督による2007年の映画。上記映画のリメイク。ジョン・トラボルタが特殊メイクで巨体の女性を演じた。
- Kiss Me Kate - Cole Porterのミュージカルの舞台 ボーティモーと発音
- Girl Crazy - G & I, Gershwinのミュージカルの背景地 中途半端に発展した田舎都市という設定
- イレイザー
関係者
[編集]- 出身者
- ベーブ・ルース - ボルチモア出身の野球選手で、生家は現在博物館となっている。また、彼が初めてプロ契約を交わした球団はボルチモア・オリオールズ (マイナーリーグ) であった。ただし、これはMLBのそれではなく、1903年から1914年まで活動したマイナーリーグの球団である。
- ジャーボンテイ・デービス - ボルチモア出身のプロボクサーで、元WBAスーパー・IBF世界スーパーフェザー級王者、現WBA世界ライト級王者、元WBA世界スーパーライト級王者、1994年生まれ
- ジョン・ウォーターズ - ボルチモア出身の映画監督で、『ピンク・フラミンゴ』『ヘアスプレー』『I love ペッカー』など、一貫してボルチモアを舞台にした作品を監督している。
- フィリップ・グラス - 現代音楽(ミニマル・ミュージック)の作曲家、1937年生まれ
- ナンシー・ペロシ - 政治家、第60・63代下院議長、1940年生まれ
- ジョン・ボルトン - 政治家・外交官、元国家安全保障問題担当大統領補佐官、元国連大使、1948年生まれ
- クリストファー・ローズ - 現代音楽の作曲家、1949年生まれで2019年没。
- トム・クランシー - ボルチモア出身の小説家(1947年 - 2013年)。代表作『ジャック・ライアン』シリーズにおいて、アナランデル郡やジョンズ・ホプキンス大学が描かれている。
- ヒラリー・ハーン - ボルチモア出身のヴァイオリニスト、1979年生まれ
- 居住その他ゆかりある人物
- エドガー・アラン・ポー - 小説家。ボストン出身だが、ボルチモアで作家活動を開始し死去するまで生活した。
- 浜田彦蔵(ジョセフ・ヒコ)- 通訳。現在の兵庫県出身だが、漂流したことをきっかけにアメリカに滞在し、1858年にボルモチアでアメリカの市民権を獲得したことで、日本人として初めてアメリカの市民権を獲得した事例となった。
- ウォリス・シンプソン - ペンシルベニア州フランクリン郡出身だが、ボルチモアの一族で、ボルチモアの社交界にデビュタントした。後のウィンザー公爵夫人。
- ローラ・リップマン - ボルチモア在住のミステリ作家で、ボルチモアを舞台にした小説を執筆している。
脚注
[編集]出典
[編集]- ^ “アメリカ・ボルチモア大火(1904年2月7日)”. Yahoo!天気・災害. 災害カレンダー. 2022年8月9日閲覧。
- ^ “反対派選挙区「ネズミだらけ」=トランプ氏、有力黒人議員中傷”. 時事通信 (2019年7月28日). 2019年7月27日閲覧。
- ^ “黒人下院委員長を攻撃 米大統領、人種問題再燃”. 日本経済新聞 (2019年7月29日). 2019年10月17日閲覧。
- ^ “ボルティモアの「完全破壊」計画、変電所襲撃の共謀罪で男女を訴追 米司法省”. CNN (2023年2月7日). 2023年2月6日閲覧。
- ^ “野外パーティーで銃撃 2人死亡、28人負傷 米東部”. CNN (2023年7月3日). 2023年7月3日閲覧。
- ^ a b 加藤出 (2014年8月12日). “地区連銀候補だったボルティモア 米東海岸の港町に見る栄枯盛衰”. ダイヤモンド社 2014年10月4日閲覧。
- ^ American FactFinder, United States Census Bureau 2008年1月31日閲覧。
- ^ https://www.baltimoresun.com/bs-mtblog-2010-04-top_20_moments_in_baltimore_wrestling_history_nos_110-story.html
- ^ a b c d e f g h i j k l “Sister Cities” (英語). Visit Baltimore. 2011年10月11日時点のオリジナルよりアーカイブ。2012年2月6日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j “Sister City Directory” (英語). Sister Cities International. 2012年2月20日時点のオリジナルよりアーカイブ。2012年2月6日閲覧。
- ^ “姉妹都市・友好都市のプロフィール”. 川崎市. 2012年1月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2012年2月6日閲覧。
“姉妹都市・友好都市のプロフィール”. 川崎市. 2017年9月27日閲覧。
関連項目
[編集]- ワシントン・ボルチモア・北バージニア広域都市圏
- クリッパー (船) - ボルチモアで建造されたのが最初とされる。
- オール・タイム・ロウ - ボルチモア出身のポップパンクバンド。
- ボルチモア市庁舎
- ボルチモアの大火災 - 1904年2月7日から翌日8日まで燃え続け、1,500棟以上の建物が全焼、約1,000棟に深刻な被害が出た。応援に駆け付けた近隣都市の消防車とホースのジョイント規格が合わず(特許などの関係で600近くのバリエーションがあった)被害に拍車をかけた。20世紀以前のアメリカでの火事では3番目に大きなもので、ホースの標準化や耐火基準などの見直しが行われた。
外部リンク
[編集]- 公式
- 観光