コンテンツにスキップ

英文维基 | 中文维基 | 日文维基 | 草榴社区

ボリビア国鉄DE95形ディーゼル機関車

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ボリビア国鉄
DE95形・DE100形
ディーゼル機関車
DE100形ディーゼル機関車 1021号機
DE100形ディーゼル機関車
1021号機
基本情報
運用者 ボリビアの旗ボリビア国鉄
製造所 日立製作所
三菱重工業(三原製作所)
車両番号 DE95形 : DE951 - DE970
DE100形 : DE1008 - DE1023
製造年 DE95形 - 1968年
DE100形 - 1978年
製造数 DE95形 - 20両
DE100形 - 16両
運用開始 DE95形 - 1968年
DE100形 - 1978年
愛称 Japonesa
投入先 ボリビア国鉄
ボリビア東部鉄道
ボリビア西部鉄道
主要諸元
軸配置 B-B-B
軌間 1,000 mm
全長 16,400 mm
全幅 2,922 mm
全高 4,020 mm
運転整備重量 81.6 t
固定軸距 2,300 mm
軸重 13.6 t
機関 MAN V6V 22/30 ATL
機関出力 934 kw(1,270 PS)/ 925 rpm
発電機 HI-504Br
主電動機 HS-225-Ar
主電動機出力 118 kw
制御装置 自動弱界磁切換
(重連総括制御可能)
制動装置 空気ブレーキ
発電ブレーキ
ネジ式手ブレーキ
設計最高速度 70 km/h
定格速度 18.5 km/h
備考 数値は[1][2]に基づく。
テンプレートを表示

ボリビア国鉄DE95形ディーゼル機関車[2]は、1968年に日本の日立製作所三菱重工業がそれぞれ10両、計20両製造した電気式ディーゼル機関車

日本の機関車を基に、急激な高低差や温度差、急カーブなどボリビアの鉄道の厳しい条件に対応すべく、製造当時の最新技術が多数採用された形式である。この項目では、DE95形の増備車で1978年に製造されたDE100形についても解説する

導入までの経緯

[編集]

1950年代以降、ボリビア国鉄には蒸気機関車や気動車[注釈 1][3]、貨車など日本製の鉄道車両が多数輸出され、1966年からは液体式ディーゼル機関車・DH52形[4][注釈 2]の輸出も実施された。

それらに続き、ボリビア国鉄の西部路線(ボリビア西部鉄道)向けに導入された本線用のディーゼル機関車がこのDE95形・DE100形である。

DE95形

[編集]

メーカー形式はBF-18で、運営企業における形式は900形[5]。日立製作所の水戸工場と三菱重工業の三原製作所においてそれぞれ10両が製造され、1968年6月に日本から船舶によって輸出された[6][2]

日立製作所や三菱重工業[注釈 3]も製造を手掛けた日本国有鉄道の電気式ディーゼル機関車であるDF50形を基にしており、軸配置も曲線が多い路線において有利なB-B-B型としている。ただし前面形状や採光窓、エアフィルターの配置については、日本国有鉄道が同時期に導入していたEF65形EF81形などの電気機関車に類似したものとなっている[7]

ディーゼル機関はDF50形、DF91形など日立製作所が製造した電気式ディーゼル機関車に多く採用されているV6V22/30mA機関を基に、燃焼方法を予燃焼室式から直接噴射式に改めたV6V22/30ATLが1基搭載されている。約2,800 mに及ぶ高低差や最大50℃以上の温度差に対応するため、高度と大気圧を測定し、高地での定格出力を抑える事で経済性にも配慮している[8]。また総括制御が可能な仕様となっている制御機器についても空気密度が希薄な高地での常時使用を想定し、温度上昇への配慮がなされている[9]

主発電機や主電動機に関しては、導入当時回転機の保守実績がなかったボリビア側の事情に対応し、保守の容易さと信頼性の向上を重視した設計が取り入れられている。30 ‰勾配が連続する路線条件下でも最大280 tの貨物列車が牽引可能な牽引力を有しており、定格速度は18.5 km/h[10]

重連運転に便利な総括制御機能も有し、同形式同士のほか、後述のようにチリ国内においてはチリ国鉄のディーゼル機関車とも連結して運用された経歴も持つ[11]

車体の塗装は、登場時は上半分がクリーム色、下半分が薄い緑色のツートンカラーであったが、1990年代のボリビア国鉄民営化 以下に番号と製造企業の対照表を示す。

DE95形(メーカー形式 : BF-18)
車両番号 製造企業
製造工場
備考
DE951 - DE960 日立製作所
水戸工場
製造番号
1968 63 - 72(水戸)
DE961 - DE970 三菱重工業
三原製作所

DE100形

[編集]

メーカー形式はBFA-32Mで、運営企業における形式は1000形。前述のDE95形の増備車として、日立製作所と三菱重工業によりそれぞれ計16両が1978年に製造された[5]。エンジンがMTU製のものに変更され、出力も1,470 kw(2.000 PS)に向上しているほか、DE95形に存在していた車体側面の採光窓が廃されている[12][13]

DE100形(メーカー形式 : BFA-32M)
車両番号 製造企業
製造工場
備考
DE1008 - DE1010 三菱重工業
三原製作所
DE1011 - DE1012 日立製作所
水戸工場
製造番号
1978 A20790.1 - A20800.1
DE1013 - DE1017 三菱重工業
三原製作所
DE1018 - DE1023 日立製作所
水戸工場
製造番号
1978 A20800.2 - A20800.7

運用

[編集]

ボリビア西部鉄道における運用

[編集]

DE95形、DE100形ともにボリビア国鉄の西部鉄道路線(ボリビア西部鉄道)へ配属され、標高4,000 mを超える区間においてその性能を十分に発揮する運用に就き、同鉄道のほか、線路が繋がっている隣国チリチリ国鉄アリカ=ラパス鉄道スペイン語版およびイギリス資本のアントファガスタ=ボリビア鉄道スペイン語版にも乗り入れを開始[11][5]。前者でチリの港町アリカ、後者ではボリビアとチリの国境に位置するオジャグエスペイン語版を発着する列車の牽引も行い、前述の通り前者においてはチリ国鉄が保有する、アメリカ合衆国のゼネラル・エレクトリック製の電気式ディーゼル機関車・13100形(現地形式・メーカー形式はGE U20C形ディーゼル機関車英語版)と連結した運用を行った[11]

ボリビア東部鉄道における運用

[編集]

長い間ボリビア西部鉄道で活躍していたこれらの機関車だが、ボリビア国鉄が運営するもう一つの鉄道路線網であるボリビア東部鉄道で機関車が不足していたことから、5両のDE100形が転属することとなった。

なお、転属元のボリビア西部鉄道と転属先の同東部鉄道はボリビア国内において接続しておらず、転属は隣国アルゼンチンフフイ州およびサルタ州内のベルグラーノ将軍鉄道スペイン語版を介して行われた。

運用開始当初は転属前の姿のままであったが、のちにボリビア東部鉄道のオリジナル塗装へ変更された車両が現れたほか、DE1019号機は前面のパノラミックウインドウが平面ガラスへ交換され、前照灯が一つ増設された[5]

これらの5両は2000年代にボリビア西部鉄道へ復帰し、塗装も同鉄道オリジナルのものへ変更されているほか、2015年にはDE95形がトレーラーによる陸送でボリビア東部鉄道へ送られた[5]。これはボリビア東部鉄道において車両不足が発生したことによるものであったが、同鉄道と接続するブラジルリオデジャネイロの鉄道会社・SuperViaより中古のディーゼル機関車を購入したことから、再びボリビア西部鉄道へ復帰している。

現況

[編集]

これらの機関車は2020年時点でもDE95形が5両、DE100形が12両の計17両が現役を続けている[12][14]。ただし、スイスシュタッドラー製新型機の投入が進められいることから今後の動向が注目されている。

脚注

[編集]

注釈

[編集]
  1. ^ 数両で1ユニット編成を構成する車両。1960年代後半に日立製作所と日本車輌で数編成が製造され、編成内には一等車や食堂車など様々な車両が連結されていたが、後に機関を外し客車に改造された。運転席付きと無しの種類がある先頭車の前面はは二枚のパノラミックウインドウ、車体側面の窓は上段下降・下段上昇式の二段サッシ、台車はコイルバネ式。一両あたりの乗降扉は食堂車が1枚、それ以外の車両が2枚で、客室とデッキの間には扉付きの仕切りが設置されている。
  2. ^ 運転整備重量45 t、出力550 PS、車体はセンターキャブ式凸型。主な用途は入れ替え用で、製造は日立製作所笠戸工場と日本車輌製造。塗装は日本国有鉄道のDD13形などとほぼ同様であった。
  3. ^ 当時は新三菱重工業であった。

出典

[編集]
  1. ^ 日立製作所 1969, p. 2-5.
  2. ^ a b c 朝日新聞社 1969, p. 127.
  3. ^ BOLIVIA - STATE RAILWAYS (ENFE) - 1021 - a Bo-Bo-Bo built by Hitachi-Mistusbishi in 1977, seen here near La Paz in 1981 - note first vehicle behind loco is a railcar.”. CENTRAL AND SOUTH AMERICA. 2020年9月27日閲覧。
  4. ^ ENFE, Viacha, Bolivia, 1992”. Center for Railroad Photography and Art. 2020年9月27日閲覧。
  5. ^ a b c d e A Day Trip To Bolivia September 2002”. DerbySulzers (2002年11月). 2020年7月14日閲覧。
  6. ^ 日立製作所 1969, p. 6.
  7. ^ 日立製作所 1969, p. 2-3.
  8. ^ 日立製作所 1969, p. 3.
  9. ^ 日立製作所 1969, p. 4-5.
  10. ^ 日立製作所 1969, p. 3-4.
  11. ^ a b c Trenes del Recuerdo ZONA NORTE”. viasuur (2009年10月21日). 2020年7月13日閲覧。
  12. ^ a b 石田周二、笠井健次郎 2015, p. 95.
  13. ^ 日立製作所 (1969年2月). “日立評論1979年1月号:交通” (PDF). pp. 2. 2019年1月6日閲覧。
  14. ^ MAESTRANZA DE VIACHA - 1997”. - Bolivian Railways - Historia en Imágenes (2020年1月4日). 2020年9月27日閲覧。

参考資料

[編集]
  • 朝日新聞社『世界の鉄道 1970年版』朝日新聞社、1969年9月。 
  • 石田周二、笠井健次郎『交通ブックス 124 電気機関車とディーゼル機関車』戎光祥出版、2015年6月。ISBN 978-4-425-76231-6