ホームランバー
ホームランバーは、協同乳業が製造販売するアイスクリームの商品名。九州地区向けには名糖産業が製造販売する。
歴史
[編集]1920年に冨士食料品工業(現・冨士森永乳業)がアメリカ製アイスクリーム製造機を導入し、アイスクリームの生産を開始[1]。続いて極東練乳三島工場(現・明治)や自助園牧場(現・雪印メグミルク)などが続き、日本におけるアイスクリームの製造販売は広まっていった[1]。
1930年代には、雪印からカップ入りのアイスクリームが販売され、多数のメーカーが後に続き、カップ入りアイスクリームも日本に普及することになる[1]。
1955年、協同乳業はデンマークより、バータイプのアイスクリームの製造装置を日本で初めて輸入した[1]。この製造装置によってアイスクリームに棒を挿す作業や包装作業が機械化されたことで、1日に20万本の製造が可能となった[1]。
上述のようにカップ入りバニラアイスクリームなどはすでにあったり、駄菓子屋でも販売されていたわけだが「子供が保護者に買ってもらう」ような価格帯であり、「子供が小銭で買う」ような身近な商品とは言えなかった[2]。協同乳業から発売された「アイスクリームバー」は、ちょっと高めの菓子であるアイスクリームが棒付きになったことを示す直截的なネーミングであっただけではなく、子供が小銭で買えるという唯一無二の商品のバニラアイス、かき氷系の氷菓と同価格帯の商品ということもあって、人気を集めた[2]。協同乳業の日本橋工場は当時、ガラス張りで製造工程が外から見えることもあり、近隣の子供たち間で人気スポットとなった[2][3]。
1960年代になると名称を「ホームランバー」と名を換え[4][2][3]、アイスクリームとしては日本で初めてとなる当たりくじを付け、長嶋茂雄を広告に起用し、1本10円という低価格と相まって空前の大ヒットとなる[1]。協同乳業に倣い、他メーカーも製造機械を導入したことで、日本の棒アイスの工場生産は急伸することになる[1]。
「ホームランバー」は防水性が高いこと、普通の紙よりも角がシャープに折れること、アイス本体にくっつきづらいという理由から銀紙で包装された[4]。当たりくじは、白樺の棒に焼き印が施されており、焼き印が「ホームラン」だともう1本もらえて、「ヒット」の焼き印は3本集めるともう1本と交換できた[4]。
長嶋茂雄を起用した店頭ポスターは盗難被害も相次いだ[3]。
1960年代中盤からは、小売店に冷凍ショーケースが普及し始めたこともあり、各メーカーからも様々な棒アイスが発売されてゆくことになる[4]。
1970年代中の短期間だけ、棒が木製ではなくプラスチック製だったことがある[2]。
1990年には、内容をグレードアップした「ツーランホームランバー」[5](後の「プレミアムホームランバー」)に切り替えられた。また、同年、協同乳業が販売するホームランバーも名糖産業が製造する事となった。
当たりくじとキャンペーン
[編集]上述のように「ホームラン」だと同じ商品がもう1本もらえ、「ヒット」3本でももう1本もらえるほかに「満塁ホームラン」だと野球盤がもらえるといったものもあった[3]。
1980年代にはスピードガンやラジコンカーが抽選で当たるキャンペーンも実施された[3]。このようなキャンペーンが開催される直前にはテレビコマーシャルも放映されていた[2]。
パッケージとキャラクター
[編集]パッケージそのものは発売以来、何度もリニューアルされているが、野球少年を描いたデザインは共通である[3]。描かれている野球少年は協同乳業、名糖産業の社内外から「ホームラン坊や」と通称されていたが、2005年より正式なブランディング施策を行うことになり「あたるくん」が正式名称となった[3]。
あたるくん
[編集]2005年の12代目より商品キャラクターとして公式に定められた[3]。以下のような設定がある[3]。
- 性別
- 男の子
- 年齢
- 9歳
- 誕生日
- 5月10日(メイトーの日)
- 性格
- わんぱく坊や、目立ちたがり屋、おっちょこちょい
- 好きな食べ物
- ホームランバーのバニラ味、エビフライ、「なめらかプリン」(メイトー)
商品ラインナップ
[編集]- 協同乳業
- ホームランバー - バニラ&チョコ(10本入り)、プチパリチョコ(10本入り)、ソーダフロート(季節限定、10本入り)、袋詰め(10本入り)、シャキッとバニラ(広島東洋カープver、阪神タイガースver)、
- プレミアムホームランバー - 濃厚バニラ、大きくなった濃厚バニラin、クッキー&クリーム、バニラ&チョコ(6本入り)
- ホームランバーNEO - 濃厚バニラ、甘熟メロンミルク
- ファミリーマートコレクション - バニラ、いちご
- ホームランモナカ - バニラ&チョコ(5個入り)
- 名糖産業
- ホームランバー - バニラ、チョコ、チョコチップいちご、袋詰め(10本入り)
- ビッグホームラン - 一回り大きいホームランバーで、販売価格も2倍。スティックは木製ではなくプラスチック製[2]。
出典
[編集]- ^ a b c d e f g アイスマン福留 (2022年9月6日). “バニラにかき氷、棒アイスにコーン系! 名作揃いの“昭和アイス”が生まれた日”. 日本自動車連盟. 2024年10月27日閲覧。
- ^ a b c d e f g 初見健一「ホームランバー」『まだある。大百科お菓子編 :今でも買える昭和のロングセラー図鑑』大空出版、2008年、111-117頁。ISBN 978-4903175195。
- ^ a b c d e f g h i j 『日本カンパニーキャラ&シンボル大全』辰巳出版、2021年、106-109頁。ISBN 978-4777828326。
- ^ a b c d 串間努. “第2回「名糖ホームランバー」の巻”. まぼろしチャンネル. 2024年10月27日閲覧。
- ^ 綱島理友『お菓子帖』マガジンハウス、1991年、111頁。ISBN 4-8387-0256-6。
外部リンク
[編集]- ホームランバー(協同乳業) 音量注意
- 商品情報(名糖産業)