ホンダマルチマチック
ホンダマルチマチック(Honda Multi Matic、略称: HMM)は、本田技研工業(ホンダ)内製のファン・ドールネ式金属プッシュベルト式無段変速機(CVT)に対してかつて使われていた商標である。
概要
[編集]1995年にホンダ初のCVTとして、ホンダ・シビックおよびシビックフェリオに搭載された[1][2]。当時は1.5リットルクラスのエンジンに対応した世界初のCVTとして登場した。[注釈 1] 当初は、一般的なトランスミッションの入力側ではなく、出力側にスタートクラッチ(湿式多板発進クラッチ)を配置していた[3]。トルクコンバータのすべりを排除することで燃費効率が高められている、とされた。弱いクリープが設定されていたものの、坂道発進時にはサイドブレーキの併用が必要であった[4]。
ミッションオイル(作動油)には専用の「ホンダマルチマチックフルード(HMMF)」を使用するとしており、汎用のCVTフルードは使用できない場合がある[注釈 2]。ただしアフターマーケットでは既存製品との互換表を掲載して販売がなされている例[5]の他、カストロールはHMMFの互換品としてホンダ車専用の「TRANSMAX ATF TYPE H」を販売している[6]。
次第にミッションオイルの劣化やスタートクラッチの劣化によるジャダー現象が発生するなどの問題が明らかになり多数の報告が上がった[注釈 3]ため、フィット・モビリオ(スパイク)・フィットアリア・エアウェイブの5車種に限り2010年3月に2年間または6万kmのトランスミッション保証期間延長(発進時のジャダーがみられる場合ミッションオイルまたはクラッチ一式の無償交換)の処置がなされた[7][注釈 4]。その後湿式多板クラッチを使用する方式を改め入力側にトルクコンバータを配置する一般的な構成に変更された。
1998年に、登降坂シフト制御「プロスマテック」を適用した「ホンダマルチマチックS(HMM-S)」が導入された[8]。
ホンダの軽自動車初のCVT車は2011年のN-BOXであった。
2018年以降は「ホンダマルチマチック」という名称は使われていない[9]。カタログ等には「無段変速オートマチック」または単に「CVT」と記載されている。
脚注
[編集]注釈
[編集]- ^ 先行して発売された富士重工製ECVTは660ccから1.3リットルクラスであったため。
- ^ アイシンの適合表には注釈に「マルチマチック、マルチマチックSは発進クラッチに湿式多板クラッチを採用しており、AISIN CVTFを使用した場合、車体振動が発生する可能性がありますので使用不可です。(他のCVTは発進クラッチがトルクコンバータのため、AISIN CVTF使用可能です)」との記述がある。“AISIN ATF/CVTF 油種対応早見表:国産車編”. アイシン. 2022年9月23日閲覧。
- ^ ガルフのフルード適合表のページには「ホンダは問題の多かったスタートクラッチを持つCVT車から、一般的なトルコン併用式のCVT車に移行しつつあります。」という記述がある。“車両メーカー純正油との適合リスト”. ガルフ. 2022年9月23日閲覧。
- ^ 2010年当時にはインサイトやCR-Zなど他の販売中および生産終了済み車種にも搭載されていたが、上記5車種以外は保証対象に含まれず以降も対応はなされていない。
出典
[編集]- ^ “開発者の想い CVT編”. 本田技研工業. 2022年9月6日閲覧。
- ^ 『初の高出力対応型 次世代無段変速オートマチック・トランスミッション、ホンダマルチマチック。』(プレスリリース)本田技研工業、1995年9月4日 。2022年9月6日閲覧。
- ^ 『独自の機構を取り入れ、信頼性、耐久性にすぐれた無段変速機構を実現。』(プレスリリース)本田技研工業、1995年9月4日 。2022年9月6日閲覧。
- ^ “HondaマルチマチックとATとの違いはどんな点ですか?”. 本田技研工業. 2022年9月6日閲覧。
- ^ “車両メーカー純正油との適合リスト”. ガルフ. 2022年9月23日閲覧。
- ^ “オートマチックトランスミッションフルード”. カストロール. 2022年9月23日閲覧。
- ^ “フィット、エアウェイブ、モビリオなど 5車種のトランスミッションの保証期間延長”. 本田技研工業 (2010年3月25日). 2022年9月23日閲覧。
- ^ 『HR-V 1998.9』(プレスリリース)本田技研工業、1998年9月21日 。2022年9月6日閲覧。
- ^ “CR-Z 性能 スペック・大きさ”. 本田技研工業. 2022年9月6日閲覧。